剣狼相対すは雷火の獣 其の七
「設定が止め処なく作られていくのが実感できる!」(画像省略)
ぶっちゃけるとさっきの更新割と操作ミスだったんですけど、今作者の精神状態がちょっと暴走しておりまして
別に精神的に追い詰められてるとかじゃなくて「面白い作品読んで創作意欲が爆発した」というだけなんですが
諸々含めて面倒くさくなったので連続投稿祭りに踏み切りました。明日更新しなくてもゆるして
シャンフロに存在する武器の中には全く別々の武器でありながら一つの武器へ合体する「対刃剣」のように「分類上は別々の武器だが同じ場所で使用されることで共通の効果を発揮する」武器が存在する。
例えばサイガ-100が
「インペリアル」の名を共有するこの五本は戦闘処理時に同じ場所かつ同じ対象と敵対している際に効果を発揮する。
「それぞれの武器が対応したステータスを向上させる、だが私はそれら全てを一人で使っている。つまりは……」
「特典独り占めって事だろうが!」
STR、DEX、AGI、TEC、VIT。
スパーダを持つ者はより力強く
カトラスを持つ者はより軽く
レイピアを持つ者はより速く
マンゴーシュを持つ者はより巧く
ファルシオンを持つ者はより硬く
ではその全てを持ち、使い熟す剣の
「はぁあっ!」
「くぉっ……なくそぉ!」
ダメージはない、だがあまりの膂力に拳が弾き飛ばされる。ギリギリの所で追撃の回避に成功したが、距離を取らざるを得ない。そして距離を離せば従剣の乱舞が俺へと牙を剥く。
「なめんなっ! こなくそっ! とぁああ! はいぃぃい!」
「呆れるほどに動くな君は……リアルで曲芸師でもやってるのか?」
ジャンプで一本目を回避、フリットフロートを利用した空中トリプルアクセルで二本目を避け、振り回される拳をぶつけて三本目を迎撃、そして着地刈り狙いの四本目を無理やり身体を曲げてダメコン。体勢を崩すが迅速に起き上がって再び警戒態勢。
従剣を己の周囲に戻しつつも、呆れたようにそう問いかけるサイガ-100に対して俺は努めて余裕そうに振る舞いつつも頭の中ではここからどう巻き返すかを考える。
「おいおい、リュカオーン相手にするならこれくらいは必須技能だろう? お宅の避けタンクを参加させるならこれくらいやらないと」
「いや……流石にそこまでの技量を要求するのは……」
うるせぇ、巨大生物と三時間鬼ごっこ繰り広げたり四方八方から天誅されたり恒星間兵器の不意打ちに対応したりしてりゃこんくらい誰でもできるようになんだよ。幕末のランカートップ勢とか見てみろ、あいつら極まりすぎて数式と心理学組み合わせて確殺天誅する戦術とか作り出し始めてるからな? 晴れ時々脳天狙いの斬馬刀、とか頭のおかしい天気予報が成立する修羅の時代やぞ。
とはいえトークスキル(自前)で時間を稼ぎつつ脳内では高速で装備と使用戦術戦術の取捨選択が繰り広げられる。
長期戦は無理だ、リュカオーンや金晶独蠍相手に一晩戦ったこともあるがあれは結局のところ奴らはAI操作の「倒されること」を前提としたモンスターだったからこそ、その行動パターンにはある程度の上限があったからこそ遅延のループを構築できた。
だが三十五本で何パターンの戦法を作れるか分からない眼前のサイガ-100相手ではそれができない。時間をかけるほど向こうの手数に圧倒されてしまう、であれば短期決戦……だがこれも難しい。
逆境覚醒以外にも手札がある、と確定した以上不用意な突撃は悪手オブ悪手だ。不用意に突っ込んで何が飛んでくるか分からないとか常時透明状態のリュカオーンに無策で突っ込む方がまだ難易度軽めだ。じゃあどうすればいいのか? 実を言えばそれに関しての結論は既に出ている。
「全く、実は俺が持ってるユニークを白日のもとに晒すのが本命の目的じゃないだろうな……」
「ほう、何か見せてくれるのかね?」
「そうだな……時にサイガ-100氏、俺の身体に刻まれたこれが「リュカオーンの呪い」とは別のものであることは理解しているかい?」
「…………ああ、非常に
「これはリュカオーンの「
それ以外にも
「実はあるユニークを進めている最中にこの「呪い」を消すんじゃなくて相殺する手段を得てな」
「相殺、それは興味深い」
「お返しだ、こっちも実演してやるよ」
取り出しますは奇妙な武器。それを形容するなら「刃部分を取り除いた短剣」とでも言うべきか。刃を飛ばした後のスペツナズナイフのような、短剣としての存在意義の九割が存在しない武器とすら呼べないただの
だがよくよく観察すれば、鍔の中心、本来なら刃の根元があるべき場所に奇妙な水晶が取り付けられていることが分かるだろう。言うまでもなく、これは地下トンネルの死闘で手に入れた自称ゴルドゥニーネ……ユニークモンスター「無尽のゴルドゥニーネ」に由来する「呪い」の成分結晶に他ならない。
「銘を「
俺の言葉が示す事実は単純明快、既に俺が「四体目のユニークモンスターと戦闘している」という事実にレイ氏を除くこの場にいる全員が驚愕の気配を発する。
「そしてこれをぉ……!」
強く握れば、刃の存在しない短剣に非物質の刃……普通に振るうだけでも軽度の呪いを付与する鬼畜武器足り得る呪いの短剣が形成される。そして俺は刃の向ける先をくるりと裏返して
「さらにこっちにも!」
胴体に突き立てた灼骨砕身を引き抜き、右腿に叩きつけるように突き立てる。どうでもいいが右腿に刺した時点で左側にも効果が及ぶので三カ所刺す必要はないらしい、ささやかすぎる心遣いに涙が出るね。ペッ!
「これは予定変更せざるを得ないかもしれないな……」
「と、言うと?」
「
「………ヘッ」
別にサイガ-100を笑ったわけではない。冷静に考えたらチュートリアルすらスルーし、速攻でユニークモンスターの居城に居候してそっからここまでどれだけユニークな経験をしたのか、自分で考えて笑ってしまっただけだ。
「全力で立ち向かえよ剣聖殿、こっからは三段階くらいギアを上げていくぞ」
「……その、姿は」
ビシリ、と明らかに人の身体から発せられるには異質な亀裂の音。灼骨砕身を突き立てた傷口を起点に、俺の胴体と足がひび割れていく。転移先を読み取らせないために魚面を着けていたが、ここからは視界が僅かでも塞がれるのも鬱陶しい。ラケダイモン・ヘルムに装備を変更した所で、顔と腰に届く直前で辛うじて留まった崩壊の傷口、亀裂から
「
焼いた骨を叩き割り、その割れ方で吉兆凶兆を占う原始的な運試し。呪いを呪いで相殺し、我が身を砕いて行く末を占う。誰が吉兆で誰が凶兆か、はたまた俺が
やったぜ冥輝君、今日この瞬間が君のデビュー戦だ。
「やっぱ俺的には川を舗装するより心を燃やす戦い方の方が好みだな、どっちが先に燃え尽きるかチキンレースと洒落込もうぜぇっ!!!」
大量の手札を持つサイガ-100の対処法は結局のところシンプルな結論に至る。
百枚の手札を持っていようが、使う前にぶっ飛ばせば手札はないに等しい。仮に俺への対処を持っていたとしてもそれしか使えないくらいの突き詰めた切り札で真正面から捩伏せる!
ボスキャラみたいな性能したプレイヤー相手にするならこっちもボスキャラみたいな性能になるしかねぇんだよ!
まだまだギアは上がるぞ覚悟しやがれ!!
・灼骨砕身
物質化した「呪い」をあえて肉体に付与することで既に定着した「呪い」を一時的に無効化する相殺の短剣。
自身に対して刺突使用することで発動し、五分間自身に付与された「呪い」を無効化する。
代償として装備品による追加数値を除いた肉体のVITが半分になる。
それは憎悪であり、憤怒であり、呪いすらをも噛み潰す蛇の牙、その毒である。肉体は罅割れる、呪い同士が喰い合う。その意思が呪いに屈した時、その身は砕け散るであろう。
普通に厳しいデメリットなのにデメリットとしてほぼ機能していないという
まさかゴルドゥニーネさんも「自分の悪意が完全スルーされるくらい貧弱VIT」とは思うまいて