スクラップアンドビルド
ミスじゃないよ、筆が進んだので連続投稿だよ
明日休んでも許して(予防線)
「惨いねぇ、見てる分には最高のエンターテイメントだけど」
「白虎の能力って「圧縮」と「解放」だっけか、土を圧縮して拳から土砂崩れ発射したりさっきみたいに空気吸い込んでブーストしたり……あんまり俺には向いてないなぁ」
「そう? サンラク君向けかなーって思ったんだけど」
「空気圧縮の加速はいい感じだけど、攻撃が割とシビアだろあれ。あいつ普通に攻撃してるけど急ブレーキと加速刻みまくってるだろうし」
基本的に俺は始点から終点までノンストップで動くタイプだが、あれ始点からごく短い終点までを何度も繰り返し続ける挙動だ。
反復横跳びみたいなものだ、加速と停止を繰り返して複雑な挙動を遂行するあの動きは出来ないわけではないが相性はあまり良くない。
「あれだよ、直線で円を描いてる感じ。より球体に近くするには一度ずつ角度をずらして線をつなげていくしかないっていうか」
その点で言えば俺と青龍の相性はやばかったな、空中に道を作ってその上を滑走する訳だから自由度が半端ない。グラビティゼロを組み合わせれば三半規管が保つ限りバグみたいな挙動も余裕だったしな。
「何あれ」
「あぁ、京極ちゃんは知らないんだっけ? アレは規格外戦術機獣の一体「白虎」とその端末である「蛮武」。後三体含めてユニークモンスター「墓守のウェザエモン」の撃破報酬ってやつだよ」
「いや……あ、うんそっちも気になるけどそうじゃなくて……彼、凄い強いと言うか……」
「そりゃあアレで飯食ってる訳だしな」
黒狼側の二人目は刀を携えたロングコートのプレイヤー。なにやら抜刀術を使おうとしたようだが、加速して一気に肉薄したオイカッツォによって柄頭を押さえつけられた事で刀を引き抜くことが出来ずにいた。
「抜刀術(抜けない)」
「パスタのないペペロンチーノみたいな」
「それは……その、ただのオリーブオイル、では?」
「いやいやゼロちゃん、ニンニクと鷹の爪もあるでしょー?」
「パスタというアイデンティティを失った時点でもうダメじゃないかなと僕は思うよ」
麺なしパスタ君が宙を舞う、なんというか全員軽装なせいで面白いくらい吹っ飛んでくなぁ。
まぁ、こっちもこっちで軽装ばかりだから相手のことを言えないのだが……あ? なんだよ、半裸だって軽装だろうがよ!
「サンラク君時々自分の思考に喧嘩売ってるっぽいのクソ面白いよね、ウロボロスか何か?」
「地産地消ならぬ
明らかに本来の跳躍以上の加速で叩き込まれたサマーソルトで麺なしパスタ君がカチ上げられる。そのまま上空で砕け散る様はなんだか花火のようだった。
「さぁ次はいよいよリベリエス君だねぇ」
「リベリアスだろ間違えてやるなよ」
「君も間違えてるよ、彼はリベリウスだ」
「あの……えと、リベリ
別に覚えづらい名前って訳じゃないのにこの絶妙に誤字られるネーミング、ある意味才能なんじゃないだろうか。
とはいえ奴も運がいい、戦術機獣はファンタジーにSFを持ち込むという中々の禁じ手ではあるが、バッテリー……もといリアクターの制限時間という
特に特殊装甲と機獣が合体している時の燃費はクソオブクソ、突っ立ってるだけでもエネルギーがバリバリ消費されるのでそろそろ時間切れになるだろう。
「中身がアレでもトッププレイヤー、タコ殴りでもタフネスだったな」
はてさてオイカッツォはどう動くのか。あいつ確か……
『エネルギーがBADだゼ……』
「まぁあんなバカスカ動いてればねぇ……」
やけにノリのいい白虎からの
「厄介なユニークですね……だが、恐らくそれには時間制限がある、そうでしょう?」
「まぁそうだね、流石に無制限だと壊れ案件だし」
オイカッツォの現在のレベルは86、低いわけではないがレベルダウンビルドを繰り返しているであろうリベリオスを相手にするにはあまりに心もとないステータス。
だがオイカッツォとて何もただ惰性で外道の策略でレベル20近辺にまで下げられたレベルをここまで上げてきたわけではない。
「とりあえず……リアクターのエネルギーを使い切るまでは働いてもらうよ白虎!」
『Oh, Yeaaaaaaah!』
深呼吸、
「くっ……「スリックランペイジ」!」
側から見た二戦と、実際に相対する一戦では体感が異なったのか、眉をひそめながらもスキルを発動するリベリオス。その手に持った両手剣にスキルのエフェクトが宿り、白虎の加速鉄拳が刃の上を
(スリックランペイジ……確か弾かれ無効の攻撃スキルだったか……なるほど、パリィにも使えるんだ)
弾かれない、ということと絶対に切断できる、ということは必ずしも両立されない。スキルとて万能ではなく、スキルの補正に対抗できるだけの強度を持つ白虎の拳は剣の上を滑るようにして受け流され、直撃を受ければ前の二人のように十割コンボを喰らいかねない一撃を透かしたリベリオスが攻撃に転じる。
「凍て付き迸れ……「コキュートス」!」
「っ!
一閃。白虎の脛から放たれた大気の噴射がデタラメな方向へとオイカッツォを吹き飛ばす。そして瞬き程の直後、まるで宝石を掴み損ねた手がそれを名残り惜しむかのように白虎の腕に霜が降りる。
「それが噂の「
「えぇ、ユニークウェポンでありウチの団長が持つ「エクスカリバー」にも匹敵する魔剣……黒狼の副団長として、タテり返してやりますよ」
「生憎だけど、ウチの外道からのオーダーは3タテでね……
『Oh,Empty……』
燃料切れの白虎が消える、バタリングラムが消える、蛮武が消える。
地に降り立つは一人の拳闘士、レベル86というディスアドバンテージを感じさせないその立ち振る舞いは彼の素性を知らずともその実力を察知させるには十分で。
「俺はあそこの馬鹿みたいにユニーク乱立したり、あそこの外道みたいにNPC恐喝して色々悪巧みしたり、最近入った辻斬りみたいにレベル上限を突破してるわけでもないけど……」
ハック&スラッシュ、切り刻み叩き斬る。その本質は戦闘と強化のループ、ゲームの電源を切るその日まで強くなり続けるシステムにとってユニークだのなんだのは所詮使われる画材の色の違いでしかない。
「積み上げれば強くなる、掛け算が出来なくても足し算ができれば百に到達することだって出来るのさ」
であればユニークの有無は強さとは関係ない。自分のフルパワーを出せる環境が整うのなら市販の武器防具であってもオンリーワンの武器に匹敵する。
それこそが「得られるもの全てを使ってより強く」を根幹とするサンラクや「自分自身すら歯車の一つに過ぎない」ペンシルゴンとは異なるオイカッツォの根本理念。
「
とはいえ、とオイカッツォは苦笑いを浮かべる。
そんな自身の理念とはかけ離れた今の
「これは皆伝の手甲……
バキャ、と職人の技が光る手甲が砕け散る。戦闘による破損ではない、元より耐久が限界であったわけでもない。
オイカッツォが自らの意思で
格闘武器、自壊、
それは剣士の上位職業たるリベリオスの「剣豪」と同様に、修行僧や拳闘士から派生する格闘系上位職業。
装備無しの素手であることを前提とする修行僧と、装備が傷つく程に火力を増す拳闘士の特性が混ざり合った結果誕生したハイリスクハイリターンの権化。
自ら武器を破壊し、破壊した武器に応じたバフを付与する「資産食いジョブ」と揶揄されつつもその火力の高さから取得者の多いそのジョブの名は。
「
「足りない火力は
凍てつく魔剣に抗うべく、破砕を伴う光が吼える。
リベリオスが持つ魔剣、魔力を消費する事で刃を中心とした凍結効果を付与する。
無効化手段が限られる事が特徴であり、生身で食らった場合状態異常回復を使用しない限り解除されることはなく、継続的に凍傷ダメージを受ける。
何より厄介な点は手がかじかむのでプレイヤースキルが思い切り阻害されるという事。
ジョブ関連の設定はあまり触れないようにしています。何故かって? 延々と設定練れるからね、本編に戻れなくなるからね
剣聖への転職条件は明らかになっているものの条件が厳し過ぎてあまり数が多くないという。
基本的に攻略最前線に立つだけなら上位職業でも問題はありませんが
「最上位職業」
「ユニーク職業」
「隠し職業」
のどれかを持っているプレイヤーは当然他プレイヤーよりも一歩先んずる事ができます。
おまけ
半裸:メイン「傭兵(ギルド未登録)」サブ「神秘【愚者】」
鉛筆:メイン「魔槍使い」サブ「勇者」
鰹:メイン「破壊者」サブ「色々」
サイガ0:メイン「聖騎士」サブ「暗黒騎士」
京極:メイン「剣豪」サブ「九尾の六刃」
サイガ100:メイン「剣聖」サブ「勇者」
アージェンアウル:メイン「
結構ストーリー進んでるのに実質無職の主人公がいるらしい、いい加減就職させてやりたい