ルール無用の黒狼に、機械のパンチをぶちかませ
「鬼に金棒」という言葉がある。ゲーマー風に言い換えるなら高DPSに火力バフ、タンクに高倍率カウンター。
……断言しよう、「オイカッツォに白虎」はこれらに匹敵するクソタッグだ。
おおよそ全ての組み合わせ要素のあるゲームには理想的な組み合わせ、すなわちベストマッチが存在し、それらはシナジーと呼ばれコンボパーツとして成立する。
制作側の想定したものから想定外のものまで、そういった組み合わせの模索こそがゲームの醍醐味であると断言するゲーマーもいるくらいだ。
では何を以ってしてオイカッツォと戦術機獣「白虎」の相性が最高と断じたのか?
見りゃわかる。
「えーと? これなんて読むの?
「†
数秒程記憶の海に潜った結果、確か数年前に人気を博し、今も流行っているアニメか何かにそんなタイトルがあったことを思い出す。
(あー……思い出した、確か主人公の名前が
ゲームとは現実とは違う自分になるということ。そしてその現実とは違う自分を「憧れの誰か」にする事はそう珍しいことではない。だが名前や姿を同じにしたからといって実力まで理想と同じになるなどという理屈はない。
誰も彼もが下位互換、とは言わないがその名前の元になったモノを好む年齢層次第ではある種の「この名前=実力の伴わない年齢層のプレイヤー」となってしまう事はままあることだ。
「で? そのスラ影さんはどういうキャラなんだ?」
「は? まぁ何も知らないならしゃーないか……スラッシュシャドウは闇夜を駆け抜ける孤高の二刀流使いだよ」
「成る程、じゃあ君のメイン武器も二刀流かな?」
「あっ……」
しまった、という表情を浮かべる†
(うろ覚えだけど確かあのキャラはよくある二刀流キャラだった筈、この前CMで見かけた時は影を操るみたいな攻撃をしてたな。ってことは魔法剣士か? このゲームの場合魔法剣士は魔法と物理を分ける
表情を変えぬまま、オイカッツォの脳内で「劣化サンラク」という結論が弾き出される。
劣化、というよりもどちらかと言えば突き詰め
故にこそ
「言っとくけど、俺はレベルダウンビルド済みだから超強いぞ」
「へーえ」
レベルダウンビルド、意図的にレベルを下げるアイテムを服用する事でスキルを鍛え上げるプレイの一種。
何度レベルダウンを行なったのか、という情報は廃人プレイヤーにとってはある種のステータスである。
人間、しょーもない内容であっても飛び抜けた記録というものは見せびらかしたくなるものだ。
「ま、そこらへんは割とどうでもいいんだけどね……」
オイカッツォにとって、MMOというシステム自体あまり相性の良いものではない。
その性質上、システム的な公平化がない限りは対等な力関係の対戦というものは困難であるためだ。
だからこそオイカッツォが重視するのは相手の分析よりも己の調整、理想的な動作を突き詰める事にのみ力を注ぐ。
己の思うがままに身体を動かせるなら、ついでに相手のおおよその動きも把握できたなら。
「足の生えたダンプだって乗りこなすさ……! さぁ、プロゲ……ごほん! 「旅狼」の力を見せてあげよう、白虎!!」
別に戦術機獣シリーズを共有化する事に文句はない。だがリアクターの所有権は本来自身にあり、だと���うのにしれっと一番乗りをあの半裸が持っていった、というのは釈然としない。そうオイカッツォは常々思っていた。
聞いた話では「朱雀」は起動され、「青龍」は合体まで行ったのだとか。であれば同じ機体を使うのもつまらない……と選んだ「白虎」であったが、オイカッツォは確信を以って言える。
「これ持ってGH:C行けたらシルヴィアにも勝てる」と。
「ロ、ロボォ!?」
「カッコいいでしょ、ウェザエモンを倒した時の報酬なんだよねコレ……っと!」
クラン共有処理が行われ、インベントリアを介してサンラクからオイカッツォへと戻った規格外エーテルリアクターが白虎の背に装填される。
試運転で若干稼働時間が減っているものの、深淵の都市で消費された分を充電したリアクターからエネルギーが迸り、白亜の鋼虎に光が宿る。
「生憎俺はどっかの馬鹿みたいに本人に時間制限がある訳じゃない、最初から出し惜しみなしで
虎をイメージした
規格外特殊強化装甲【
だがこれもシャングリラ・フロンティアなのだ、誰も知らないだけでこの世界にはロボがあり、パワードスーツがあり、SFがある。
「合体だ白虎!」
『Yeah!』
随分とノリの良い声がオイカッツォに呼応し、動き出す。
布団を被せるかのようにオイカッツォへと覆い被さった白虎の体躯が分解される。
ある機構が搭載された四肢をより強化し、それらと比べると細く貧弱だった胴体が補強される。
そして機械でありながらまるで生物のように
「な、なん……!?」
「トップクランでも初見なのかな? なら好都合、存分に初見殺されていってね」
『
轟、と大気が動く。
逆巻く台風、中心部たる白い拳闘士へと集う大気はその四肢に備えられた吸気口から二腕二脚へと取り込まれ、圧縮処理が施される。それはさながら唸りを上げる虎のような低音を響かせ、ただならぬ雰囲気を放っていた。。
†
どれだけステータスで勝ろうと、気圧されてしまえば勝利は遠く離れていく。そして離れた勝利は相手の手の中へと飛び込むのだ。
「呼吸ってのは息を吸ったら当然吐くわけで……一応歯を食いしばった方がいいよ?」
『
吸えば、吐く。
圧縮された大気に指向性を持たせて吐き出す事で推進力を得た白虎が疾る。
本来ロボゲーが苦手であるオイカッツォであっても、パワードスーツならば身体の延長としてその欠点を補うことができる。
そして白虎の排気加速はマニュアルとオートが半々で成立したシステムであり、装着者の思考を戦術機虎【白虎】側が実行する事でオイカッツォ……否、魚臣 慧がシルヴィア・ゴールドバーグや
「速………っぶぇ!?」
「いいなぁこれ……これがあればシルヴィアにも楽に勝てそう……いや、普通に対応してきそうだな……」
例えるならばそれはかつてどこぞの覆面マニアが大舞台で見せたバイク五台による大質量加速のような、されどそれよりも軽量化された白虎が放つ拳は人一人を紙屑のように吹っ飛ばす事などあまりに容易い。
吠え猛り、大気を震わす一撃が†
その瞬間、拳武器として装備された規格外武装:穿拳型【バタリングラム】……蛮武の腕部を軸に回転する四枚の板状パーツが稼働、明らかに対人用ではない衝撃が†
例えばそれが強化を重ねた人の拳であるなら、†
だが彼にとっての不幸は規格外戦術機虎【白虎】、規格外特殊強化装甲【
結論から言えば、だ。
「ぢょっ、俺の頭どうなっでる……?」
「直角?」
「折れでんじゃん……」
「ゲームだから大丈夫!」
「うぺぶ」
ゴリュ、と嫌な音を立てて元に戻された首。しかし初撃で六割、今ので三割の体力を削られ、そして完全に拳撃の射程に捉えられた†
「あ! この場所でならキルしてもペナルティつかないよーっ!」
「やったぜ」
「とどぺっ!?」
†
「次。」
イキリの代名詞みたいになっちゃった某ネームを彷彿とさせますが他意はありません
・ブレイブ・シャドウソード
どっちかというとバットマンにコブラ混ぜた感じの作品、闇夜を駆け抜ける二刀流の主人公が巨悪と戦いながら強くなっていく系
コブラ……バット……イキリ……ホテルおじさん……うっ、頭に注入されたネビュラガスが……