今明かされる衝撃のクソザコストロング「ゼロ」
作者をも騙す衝撃の能力に腹筋ねじ切れるくらい笑ったので明日の分を今公開します
勝てない、全くもって勝てない。そもそも付け焼き刃の対策で勝てるとは思っていないが、それにしたって勝てない。
夢の中にまであのクソ強AI出てきたからな……ちょっとした暇つぶしのつもりがリアルにまで侵食されてきたぞ。
「踏み込みを二段階で入れて攻撃……いや、白刃取り……」
「おっ、おひゃようございます!」
「あ、斎賀さんおはよう。頭、胴、手をメインに狙って来るんだから攻撃を誘発して……」
斎賀さんとのエンカ率高いなぁ、と思わなくもないがそんな考えはAI範士・極を如何にして打倒するかという思考に流されていく。
相変わらず斎賀さんは顔が赤いが暑がりなんだろうか? 相手に対処させない速攻……いや、対処に対処を重ねてパンクさせる……あ、そうだ。
「そういえば斎賀さんって武術? とかやってるんだっけ」
「は、はいっ! 瓦割れます!」
「かわら……まぁいいや、聞きたいことがあるんだけどめちゃくちゃ強い人と戦う時に勝つ為にどんな努力をしたりするの?」
「へ? ええと……私の場合はあくまでも護身の一環なので詳しくは知らないですけど、例えば相手の動きを自分で真似してみたり、とかでしょうか」
相手の動きを? いや待て護身術なのに何故瓦を割る? 不埒者の顎を瓦のように叩き割りますってこと? 怖っ!
俺の顔に疑問符(恐怖混じり)が浮かんでいるのに気づいたのか、斎賀さんは俺でも分かるように説明を続けてくれる。
「相手の動きを自分のものにする、というわけではないですが……例えば「この動きをしている時にこれをされたら嫌だ」って動作を探したりできますし、やっぱり見て覚えるよりも実際にやってみたほうが覚えられますから」
成る程、相手の気持ちになることで弱点を見出す。同じ動きをするならば弱点もまた共通する、と。
「成る程……ありがとう、為になったよ」
「い、いえいえいえ! ええと……な、何故そんな事を?」
「え? あー……ほら、ロックロールで俺が買ったやつあったじゃん? アレの裏ボスが滅茶苦茶強くてさ、龍宮院 富嶽? って人のトレースAIなんだけど」
「富嶽お爺様の……ですか」
「富嶽
赤の他人の呼び方にしては妙に馴れ馴れしいが……え、もしや
「あ、その、えと……その、ですね? 斎賀家と龍宮院家は……その、遠縁の親戚なんです」
「え、マジで?」
「はい、私の姉……あと、えと、姉が二人いるんですけど二番目の姉の方が龍宮院流を修めています」
斎賀家の戦闘力高すぎない? というかトレースAIとはいえ斎賀さんの遠縁の方に「死ねええええ!」とか叫びながら殴りかかってるんだけど大丈夫か俺、クリアと同時に一門の刺客に闇討ちとかされないよね?
「私と同年代の従姉妹の子とか凄いんですよ? 剣道をやってるんですけど、関西では敵無しで…………ぇあぅ」
楽しげに話していた斎賀さんだったが、突如人の喉から出るとは思えない奇妙な音を立てて動きが止まる。
「?」
「あ、あのっ! のののっ! すいませっ、すいませんっ! こ、こんな、身内の事ばかりペラペラと……!!」
「へ? いや別に……(話の流れ的に)俺とも関係のある話だし」
「わたっ……関係……っ!? それは、籍……!?」
「咳?」
「なんれもないれす!」
お、おう……何というかつい最近まで住む世界が違う芸能人的なイメージだったけど、話してみると中々テンションが愉快な人だな斎賀さん。
「そろそろ学校着くね」
「そ、そですね……あ、の!」
「何か?」
「えと、そのあの、えと……その、あの……」
「えと」「その」「あの」がループしてる? そんなどうでもいいことを考えていると意を決したかのように斎賀さんが顔を上げ口を開く。
「ほ、放課後! お時間ありますでしょうか!」
「え? あぁ、まぁ特に用事はないけど……」
「その、あの、大事なお話があるので、その……ロックロールに! 行きませう……か?」
大事なお話? 何だろう……ロックロールを選んだということはゲーム関連の話か。
「オッケー、じゃあ放課後」
「はひゃあい!」
愉快な人だなぁ。
「……で、俺は何故教室の隅で取り調べを受ける容疑者みたいな状態にさせられてるんすかね」
あれ、なんかすごいデジャヴを感じる。最近はアレなのか捕まるのがトレンドなのか? プリズンブレイクすりゅ?
「容疑者陽務 楽郎、最後に何か言い残すことは?」
「とりあえず何で取り調べされてんの?」
「宜しい、では処刑する」
拘束から処刑までの過程全部飛ばすのやめーや、中世だってもう少し時間かけて処刑に持ち込むぞ。
「何でちょくちょく斎賀さんと登校してるんだよ!」
「何でって……学区が同じだからじゃねーの?」
「斎賀さんは車登校だろ、何でお前に合わせてるんだよ?」
「本人に聞け」
「まさかとは思うけどお前、斎賀さんと付き合ってたりとか……」
(「私は神だ」と主張するハムスターを見るような目)
嘘を浮く理由も隠し立てするような事情もないので聞かれたことに対して普通に答えていく。さて、
「さて、言いたいことはそれだけか? 者共、奴を捕らえろ」
「え!? なんでこの流れで俺が捕まえられるの?」
「よろしい、それではピアス穴拡張の刑を実行する」
「おい非人道的処刑じゃねーか! あーっ、やめろっ! ピアス穴を引っ張るのはやめろぉぉっ! なんでお前らは俺のピアス穴を広げようとするんだぁ!」
雑福ピ(雑菌福耳ピアスの略)に非人道的制裁を与えつつ、それでもやはり俺の脳内はゲームの事で八割埋め尽くされていたのであった。
あ、耳を重点的に攻めるのは君が一番いいリアクションをしてくれるからだよ。
放課後、斎賀さんが何やら大切な話? をするらしいので一足先にロックロールへ。
「うぃーっす」
「はぁい陽務君、青春してるかい?」
「高い壁を超えんと頑張ってるんで多分青春してますね」
「ベッドに横たわる青春かぁ……」
まぁ行動ではなく状態を見ればそうとも言う。俺の場合業務用なので椅子に座って脱力してる形になるが些細な違いだ。
「何か買ってく?」
「いや、なんか知らないけど斎賀さんに呼ばれたんですよね」
「……ねぇ陽務君、なんで呼ばれたと思う?」
なんで? わざわざロックロールを場所に選んだ理由、そしてこれまでの会話から導き出される答えは………!
「………危険因子の、抹殺?」
「何故そうなるかなぁー?」
あいにく脳内がAI龍宮院富嶽に埋め尽くされているので、直近の会話から導き出された答えは「龍宮院流を超える者をあらかじめ抹殺する」というものだった。
斎賀さん物理攻撃力高いし首トンって意識刈り取ってきそう。
「朴念仁というか、ドラッグカーを公道走らせられるように改造するところからスタートかぁ……」
「ドラッグカー曲がれないじゃないですか」
「そうだね、人生ドラッグカーだね」
会話が噛み合わないな、一体岩巻さんは何の話をしているんだろうか。
「時にだけどさ陽務君」
「はい」
「数字の
「
「じゃあその逆に
「そっすね」
「じゃあさ、君が最近出会った
「………?」
最近出会ったゼロをレイに……?
ていうか最近ってどこまで遡ればいいんだ? あぁ、そう言えばレイ氏とか名前に
つまりサイガ-
サイガ-0、サイガ-レイ、さいが れい………
いやまさかそんな、いやいやまさか、そんな安直過ぎる……ユニーク自発できないマンですらもう少し捻った名前にしてるし……ははははは
「あ、あの……来ま」
「レイ氏?」
「しぁえふぁえんいおぁ!?」
シャンフロにその名を轟かす最強プレイヤーの正体は、リアルでもストロングな高嶺の花であった……
えっ、ゲームもリアルもヒエラルキー上位とか最強じゃん。この人リセマラ不可の誕生ガチャで怒涛の最高レア叩き出してやがる……怖っ
プロット的なものを書いた段階では「サイガ-0=斎賀 玲」であることは狼争前に明かされるはずだったのに作者が素で忘れていたというミラクルクソザコパワー
そういえばこの章でヒロインちゃんに本気出させるって自分で言ったんだった……