目的地到達RTA、多分世界記録
グラビティゼロ、なのかゼログラビティ、なのか書いてる本人が一番混同してるってアホすぎるのでは……?
グラビティゼロ、です。デュエマの能力名の方、で覚えましょう(自己確認)
ヴォーパルバニーもそうだが、このゲーム同一の名前を持つモンスターでも普通にバリエーション豊かなんだよなぁ。
真横から俺の頭を吹っ飛ばしに来た巨大モーニングスターの鉄球を盾の表面を転がすようにしてパリィ、見てください奥さん棘だらけの鉄球を転がしても傷一つついてませんよ! と見せつけるように肉薄し、モーニングスター持ちの騎士の喉元へと
グシャリとその身を支えた力を失ったかのように潰れたコントゥアル・ナイトを一瞥し、モーニングスター持ちと槍持ち二体同時襲撃で立派に囮の役割を果たしたエムルと合流する。
「魔法……ダメみたいっすね」
「魔法を受けたら強くなるとか聞いてないですわぁーっ!」
純魔お断り、の理由が分かった気がする。幽霊タイプのモンスターが物理無効のようにこいつらは魔法を吸収するんだ。
多分魔法を帯びた物理攻撃だったりは効くんだろうが、魔法火力一本で成立する純魔は相手側を回復させる裏切りヒーラーになりかねない。
「さてエムル、上と下……どっちが怪しいと思う?」
「下ですわっ!」
「同意見だ」
ファンタジーなら城の一番上がボスエリア、というのは割と定石ではあるがこの古城は設定が二つ重なっている。
つまりここを一番最後に使ったファンタジー設定ではなくここを作ったSF設定に基づいた考察が要求される。
神代の人間は例のΩを始めとする巨大生物と戦っていた、それはこの城に突き刺さった巨大腕が示している。
であれば中枢を上に置くことはあるまい、恐らく俺たちが探し求めているものも同様に。
「と、な、れ、ば、どこかに下に降りる道があるはずだが……」
これ見よがしに上へと続く階段はあるが、下に向かう階段は無いな……いや、思いっきりSFしてるんならワープシステムという可能性もあるのか?
「うーん……神代がどこまでSFしてるのか、って話なんだが……」
俺が知る限りの神代人たる「遠き日のセツナ」や「墓守のウェザエモン」が魔法っぽいものを使っていた事実、遺機装及び甦機装がメカニカルとはいえモンスターの素材を用いてモンスターの特性を増幅させたようなアクションを可能としている事実、そしてこれらを組み合わせると見えてくる事実。
「神代文明は科学一辺倒じゃなくて、普通に魔法も使ってた臭いんだよなぁ」
だとすれば文明レベル中世の現NPCが使える転移魔法を神代文明が使えない、とは考えにくい……曖昧に「ほのおをだすまほう!」とかじゃなくてもっと画一的な歯車の一つレベルにまで制御していた、とも予想できる。
「じゃあやっぱり転送装置の類か? いや、中枢に直通で行けるわけねぇしここがある種のダンジョンならルルイアスみたいにギミックか……」
「むむむ……下に続く道は見つからないですわ!」
ひょこひょことコントゥアル・ナイトが消えたことで安全が確保されたエントランス内を走り回っていたエムルが戻ってきた。
どうやら下に続く道を探していたようだが、やはり見つからなかったようだ。
「だよなぁ……これは一回上にいくのは確定か……」
「あっ、あとサンラクサンそっちは気をつけるですわ!壁の向こうに穴が空いてて、もしかしたら落ちちゃうかもですわ!」
「でかしたエムル!」
「ふぇ?」
道あるじゃーん! 道、あるっじゃーん!
成る程、普通にエレベーターか。壁と一体化してて分かりづらい上に破損していて初見じゃ気づけねーわ。
かろうじてエムルなら通れそうなくらいの小さな穴が扉に穿たれているが、どう考えても人は通れそうにない。
「これ多分、帰り道専用とかそういうパターンだな」
「どういうことですわ?」
「恐らくこの城の一番最下層にエレベーター……あーなんだ、人を上へと運んでくれる乗り物がある、と思う」
普通に照明が点灯する状況だけエレベーターだけ死んでいる、とは考えづらい。
帰り道専用か、それともギミックで再稼働させて下に降りるのか……どちらにせよこれを使用できるのは上でギミックを解放してからか、全てが終わってから…………
とでも、言うと思ったか?
馬鹿め、デバッガーの目は節穴だったようだなぁ!!
そこらに落ちていた剣を適当に穴の中へと落とす。結構な時間差を経てかろうじて聞こえるような小さな音ではあるが、底に金属が叩きつけられた快音が響いて来た。
成る程、確かに深い。普通に降りればミンチは確定だ……普通に落ちたなら、な。
「ようしエムル! 降りるぞ!」
「へ? どうやってですわ?」
「ここから下に直通で降りる」
「……サンラクサン? これは道じゃなくて、穴ですわ?」
まるで幼子の間違いを正すように俺にそう告げるエムルであったが、その笑みは段々と引きつっているぞ。
お前だってわかってるんだろう?今の
「で、でも! 流石のサンラクサンもこーんな小さい穴を潜ることはできないですわ!?」
「そうだな、
どうせ扉も破壊不可オブジェクトとかそんな感じなのだろう。民家の扉ならワンチャン破壊できたかもしれないが、SF施設だし破壊できない可能性の方が高い。
「だがなエムル、お前忘れてないか? 俺は今、魔法使いなんだぜ?」
「………? ………!! ………!?!?」
こいつは何を言っているんだ、いや待てまさか!!いやいやいや無理無理無理!?!?
大体こんな感じの顔芸を披露するエムルを頭の上……いや、一応首後ろにしがみつかせて俺は
「いいかエムル覚えておけ」
「な、なにを……ですわ?」
「仕様は悪用できる」
「ちょ、待っ……ぴぃっ!」
星外套に
この魔法はエムル行きつけの
なにせこれはかつての俺の未熟を救った魔法、発動した瞬間に発動者から半径5メートル以内の座標を指定し、発動地点から指定座標へ瞬間移動する転移魔法の一つ。
「
転移先の座標は視覚に依存している、隙間サイズでも穴が空いてる時点で、扉で隔たれたその先に視線が通るんだよ!!
あの時はエムルが俺を抱えて発動した、今は俺がエムルを抱えて発動する。
一瞬の空転、データ上におけるプレイヤーとNPCの座標が過程を略して移動する。暗闇は深く、少なくともそのまま落ちれば俺もエムルもミンチエンドは免れない。
「落ち……ひぃ……っ!?」
「大丈夫だエムル! 合言葉は
「と、とらすとみー!!」
物理演算が俺とエムルに絡みつく。下へ下へ、距離に比例した加速が死に際の衝撃を高めんと俺たちを力強く引っ張る。
「はっはははは! スキル万歳!!」
フリットフロートで体勢を立て直し、トライアルトラバース! 遮那王憑き! メロスティックフット! そしてぇ……
空中ジャンプでエレベーターが通る縦の通路の壁を足で踏みしめる。
登攀補正、アクション補正、継続走行補正、重力干渉……天井だって走れるのならば、上から下へ駆け落ちる事など容易いものだ。
「こちとらレーザーとデブリが高速で飛翔する無重力宇宙の中でデリバリーやってたんだよオラァ!」
「死ぬ死ぬ死ぬぅぅぅぁぁぁうぢゅうっでなんでずわぁぁぁ!?」
グラビティゼロ発動中は足の裏が触れている場所が地面となる。言い換えれば足が離れた時点で重力の方向が元に戻るわけで、俺とエムルは駆け足で走る足が壁から離れる度にガクンガクンと下に引っ張られる感覚に耐えながら
「宇宙、それはかつての輝きを映すあの空の果てだぁ!!」
「ぽぇぇぇぇえぇえええ!!」
クソ、そろそろグラビティゼロの効果が切れるか……全ステータスを底上げしまくってなお最下層は遠い。
このままでは……いいや、出来る!
「エムル、ちょっとくすぐったいぞ」
「ひぃぃいぃ!?」
ぶっつけ本番、失敗確率の方が高いが……やるしかない、やれる、出来る。
いつだってそうだった、具体的なイメージさえ固まれば俺は大抵のことは思い浮かべた通りに実行できる。
右拳を固く握り締め、親指部分の琥珀を……太古の樹液に封ぜられた
「びゃあっ!?」
「ちょっとだけ我慢してくれよな……!」
認識を行動が上回る。最初に試した時は駄目だった、予想外の加速であったことは事実だがそれを差し引いても対応が遅すぎた。
だが如何に俺でも自転車にジェットエンジンをくっつけた状態でトリックを決めることは出来ない……まぁウィリーして大ジャンプくらいなら出来る。
だから。
「俺がもっと
意識が加速する、
この城の底まであと100メートル、
グラビティゼロの効果時間は残り六秒、
暗闇の中で黒い雷が光る、
五秒フラットあれば十分だ。
一瞬を刻む、俺は俺の身体を捉えた。
地上から地下300メートル急転直下爆走RTA、はいよーいスタート
タイマーストップは最下層で着地した時点、アポートでエレベーターの通路に侵入してスキル発動、あとはひたすら下まで走ります。
ここでオリチャー発動! 封雷の撃鉄・災を使用してグラビティゼロが切れる前に100mを5秒フラットで走タイマーストップ、記録は00:24:21……普通だな!
ちなみに着地はフォーミュラ・ドリフトで強引に加速しながら減速してます(矛盾)
具体的には壁に「し」の字を描くように最下層直前で逆に登ることで落下エネルギーを無理矢理に相殺してます。
どれくらい強引かというと反動で体力1まで削れてる上にエムルも若干ダメージを受けています。
こいついっつも死にかけてんな