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竜騰虎闘のクロスファイア:デッドヒート

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「潰れろオラァァァア!」


「遅い遅い! もう引っかからないよ……あぶなっ!」


チッ、ここまで温存していた本気速度の叩きつけすらかわされたか。カッツォならほぼ初見で引っかかってくれるんだが。クソ、さっきのラウンドは意表を突けたがもう対応してきやがった、頭の中にTASでも仕込んでるのかこんちくしょう。

ダメだ、高機動カースドプリズンは馬力こそあるがどうしても動きが大振りになる。超信地旋回とドリフトを駆使してなんとか小刻みな動きで誤魔化しているがこりゃこのラウンド中には完全に対応されてしまう。打開策は二つ、一つはあと少しで溜まりきるカースドプリズンの超必殺……短期決戦になるが確実なアドバンテージを得ることができる。

そしてもう一つが……そろそろ、そろそろ来るはずなんだ。破壊工作が足りなかったか?


「いいねいいね、すごくいいよカースドプリズン! 強い弱いじゃない、君との戦いはワクワクする(・・・・・・)!」


「そりゃどうも!」


「でもそれはよくない、カースドプリズンならもっと傲慢じゃなきゃね!」


原作準拠にしろってか? カースドプリズンのことなんか概要程度しか知らねーよ……左!

地面を滑るように移動し、ごく自然な風に空中を踏んで反転。右から左へと一瞬でステップしたミーティアスに対し、咄嗟に左腕を折り畳むように固めてガードの姿勢をとる。次の瞬間左腕に二度の衝撃が走り、崩れかける姿勢をなんとか維持する。


「その動きにも慣れてきた、攻めてくよー!!」


「自己申告とはお優しいなオイ!」


どうする、超必殺で攻めるか? それとも…………………来た。


「来た来た来た来たぁぁぁあっ!!」


「わっ!」


多少のダメージは許容する、行動方針変更! 急ぎこの場を離脱する!!

舞踊のような優美さと苛烈さを同居させた猛攻をガードしつつ、大振りな回し蹴りが放たれた瞬間にこちらから肉薄する。

ああそうとも、所詮は根本的な実力差はほぼ横一列な格ゲーのキャラクター。あいつ(・・・)のように絶対的上下関係を強制することはできない。そして人の脳では成しえない「電脳」の力があるからこそあいつ(・・・)の技は驚異的な殺傷力を発揮していた。


見様見真似(なんちゃって)……」


側頭部に回し蹴りが命中する。決して軽くはないダメージを負うが重量級キャラクターであるカースドプリズンは回し蹴り一発程度では吹き飛ばない。マフラーから炎を吐きつつ伸ばした手でミーティアスの首を掴む。


使わ(パクら)せてもらうぜ、ウェザエモン!


大時化(オオシケ)!!」


接近と、持ち上げと、体全体を使った投げ。本家であるウェザエモンはそういった諸々を全てパワーで解決していたが、そこまで吹っ飛んだ力のない今の俺はテクニックを使って擬似的にユニークモンスターの投げ技を模倣する。

大時化(オオシケ)最大の特徴は掴んでから投げられ、地面に叩きつけられるまでの恐ろしいほどの速さだ。掴まれたと気付いた時にはすでに地面に叩きつけられ死んでいる、刀を奪って安心した瞬間を狙った酷い初見殺しであったがあの技は非常に厄介で、非常に魅力的だ。


自ら接近することで掴んでから投げに入るまでのフレーム短縮、さらにタイヤを動かすことで投げとばしに必要な身体の捻りをアシスト。ミーティアスからすれば掴まれた手を弾こうとした頃には既に叩きつけられているように感じるはずだ。

そして投げとばし、ミーティアスの首から手を離したあとも回転を続け、地面に叩きつけられたミーティアスに背を向けた時点で左右のタイヤを同じ方向に全力で回す。即ち俺はその場から急速離脱を行ったのだ。後ろから逃げるなと声が聞こえた気がするが、まぁ黙って待ってろって。


お色直しだ。













良い(Good)すごく良い(Very Good)素晴らしい(Amazing)

掴まれ、気付いた時には地面に叩きつけられていた。ギミックは理解できる、だがそれをあの状況で一瞬の隙からやってくれるとは。

これまで何人ものカースドプリズン使いと戦ってきた。アメリアは強いがあと一歩足りない、アレックスはメインではないがそこそこ強い、あいつも、あいつも。確かに強かった、ロールプレイに忠実な者もいた。だがシルヴィアの、ミーティアスの敵ではなかった。その点で言えば今戦っているカースドプリズンはそこまで突出した技量があるわけではない。

だが、これまで戦ってきた数多のカースドプリズンの中で……もっともらしさ(・・・)があった。強い弱いではない、シルヴィアが対戦相手と戦っているのではなく、ミーティアスがカースドプリズンと戦っているのだと強く実感できる。


シルヴィア・ゴールドバーグは最強である。その強さ、原作に忠実なミーティアスの戦いはコミック「ミーティアス」の作者をして「彼女こそがリアル・ミーティアスである」と言わしめるほどだった。だからこそ彼女は常にある不満を抱えていた。


ヒーローは、ヒーローだけではヒーローたりえない。敵が、ヴィランがいてこそヒーローは輝く。リアル・ミーティアスが私であるのならば、リアル・カースドプリズンはどこにいるのか、と。


誰よりもミーティアスというキャラが大好きで、ミーティアスを使いこなしているからこそ彼女はずっと探していた。己の宿敵を、誰かを()いと思う執着とは別の、己の不敗を止めんと立ちふさがる強者との高揚とも違う、こいつだけは本気で倒さねばならないというミーティアスとしての叫びを浴びせるに足る存在を。


「やっと見つけたよ、カースドプリズン」


投げ技から復帰した時、既に視界の中にカースドプリズンの姿はない。もしやケイオースキューブを確保しに行ったのかと一瞬眉を顰めるが、恐らく違う(・・)と自分の中の何かが否定する。であれば不意打ちを狙ったか? それも違うと否定する。

奴は中途半端に戦いを捨ててまで勝ちを拾いに行く手合いではないと、直感的な確信を抱くのだ。であれば何のためにこの場を離脱したのか、奴は「来た」と言っていた、それはつまり何かを待っていたということ。

超必殺(ウルト)ではないだろう、来た(・・)と言うならばそれはプレイヤーが能動的にどうこうできるものではなく受動的に待つものであるはずだ。


(何を待っていた? 3ラウンド目になって来るようなもの? ラウンド毎に何かが追加されるなんて聞いた覚えは…………違う)


数えるのはラウンドではない、時間だ。一ラウンド目が始まり、2ラウンドを経てどれだけの時間が経過した? ケイオースシティはリアルタイムで状況が動く。カースドプリズンは何を待っていた、いや違う、何を呼んだ(・・・)


「まさか」


それは車両と違い準備に時間がかかる、それはカースドプリズンにとって有用で自分と戦闘をしながらでは回収しづらく、それは空からやって来る!


「まさか!」


破壊音、それは左右でも前後でもない。見上げた先、そこには───!!



「待ってたぜ、メインウェポォォォォン!!」


「……はは、あははははは! 最高だ、最高だよカースドプリズン!!」


どうやったのかビルの最上階まで登り切り、より近くから映像を拾おうとビルに触れそうなほどに高度を落としたマスコミの報道ヘリコプターにダンクを決めるカースドプリズンの姿があった。


ビルから飛び移るように大質量がしがみついたことで、バランスを崩したヘリコプターが地面へと墜ちる。

地面に金属塊が激突した瞬間、大爆発を起こし爆炎がヘリとカースドプリズンの姿を包み隠す。

カースドプリズンは無機物を破壊し、取り込む能力を持っている。であれば爆発の炎はお色直しを隠すカーテン、そして幕をかき分けそれは現れる。


「悪いな、お色直しだ」


白バイを取り込んだ姿が徒手空拳の白騎士であるならばこれはジャパニーズ武士(サムライ)だ。

ヘリコプターのプロペラウィングを刀のように腰に二振り、両手に一振りずつ握り、ヘリの装甲を甲冑のように纏う姿はまさしく東洋の騎士そのもの。


「高機動型も悪くはないが……全力を出すならこっちの方がよく馴染む」


全力(・・)? ノンノン、違うよカースドプリズン」


シルヴィア・ゴールドバーグはそう望まれた場合を除いて、常に全力で戦ってきた。だがこの戦いにおいて全ての(テクニック)程度では足りない、満足しない。



本気(・・)でやるんだよ」


正義(ヒーロー)は必ず勝つ、そして正義は邪悪(ヴィラン)と戦ってこそ最高に輝くのだ。














銃では足りない、徒手空拳では届かない、であれば武装してようやくイーブンだ。

特殊オブジェクト「報道ヘリコプター」は一定以上の被害と一定時間の経過で出現する。始まりは何故あのヘリはやたら低い位置を飛んでいるのかという疑問だった、試しに撃墜してカースドプリズンの能力で鎧として纏ってみて、初めて特殊オブジェクトが特殊たる所以が判明したのだ。


「ヘリの馬力に四本の武器、下手な銃より火力が出るからな」


カースドプリズンはどういう不思議パワーかはよく知らないが、取り込んだものの耐久力をある程度強めることができるらしい。

だが銃弾の威力はそこまで上がらない、ショットガンを一発当てるよりも蹴りをクリーンヒットさせた方が良いダメージが出る。そして鎧のパーツとして強化されたプロペラソードはそのダメージ判定はカースドプリズン本体の膂力から弾き出される、つまりダメージは素手以上という事だ。


「最近メインでやってるのが二刀流だからなぁ、よぉく馴染むとも」


欲を言えばSTR偏重ではなくAGI偏重であれば完全にシャンフロでのアバターの感覚で動けたが、そこまで欲張りはしない。


「三枚おろしにしてやるよ」


「上等!」


背中のヘリエンジンが唸りを上げ、全身に力を漲らせる。振り下ろした左のソードは容易くかわされ、避けた先からミーティアスが急襲する。

だが先程までの速いが小回りの効かない高機動型とは違う、今の俺はこんな芸当も出来るんだぜ。


見様見真似(なんちゃって)……断風タチカゼ!!」


左のソードを放棄、右のソードすらも放り捨てて左腰に佩いた予備ソードを掴み、居合の姿勢から速攻でソードを「抜刀」する。

驚くべきことにミーティアスはこれすらも避けてみせた、マジかよ完全に捉えてたろ今の。


「だが隙有りだぁ!」


「ぐぅう……まだまだぁ!」


腰に据えていた左手で拳を握り、抜刀居合を身を屈めることで回避したミーティアスへ叩き込む。浅い。

振り抜いた右手のソードを両手で握りなおし、一気に距離を詰める。振り下ろし、振り払い、突き出すもそれら全てを回避されて攻撃を叩き込まれる。

ええい必要経費(コラテラルダメージ)だ、カースドプリズンは体力は無駄にあるのだから確実にミーティアスに攻撃を当てる。怯みにつながりそうな攻撃はガードし、隙を晒した瞬間にソードで奴の腹を打ち据えた。一般的な人類としてみれば長身であるミーティアスも、巨漢と言って差し支えないカースドプリズンと比較すれば小柄だ。思い切り吹き飛んで行ったミーティアスを追いつつ最初に投げ捨てたソード二本を回収、再度二刀流となって追撃を仕掛ける。


「この程度じゃ、私はぁ……流星(ミーティアス)は止まらなぁい!!」


「止めるのは息の根だ馬鹿野郎がぁ!!」


右ソードで振り下ろし、数フレームのディレイを入れて左ソードで横薙ぎの十字切り。最小の動きで回避された、そしてその場で逆立ちをするように膝と肘を曲げた倒立の姿勢となったミーティアスの全身が(たわ)む。次の瞬間、バネが伸びるように全身を伸ばして放たれた蹴りが俺の顎を打ち抜く。


「ぐ、お………!?」


痛みはない、ただ一瞬強制切断されたかのようなブラックアウトで視界が潰れ、全身から力が抜けかける。まずいぞ気絶モーションか!


「貰ったぁ!!」


「こなくそぁ!」


このままサンドバッグにされるのはマズい、攻撃を喰らえば気絶は解除されるがコンボを食らうのはマズい。差し込めるか……!?

腹に衝撃、気絶拘束が解け、視界と(りき)みが回復する。態勢を立て直すよりも先にミーティアスの姿を……来る、腹に一発当ててから肘打ちでつなげるコンボだ。喰らったら詰み(・・)にリーチがかかる。


「嘘、差し込めるの!?」


「イアイフィスト流差し込み術だ」


逆手に持った左ソードを盾代わりに構えて肘打ちを受け止める、一秒遅かったら死んでたな。現在残り体力は俺が五割と少し、ミーティアスが六割。若干押されている……が、ここからひっくり返させてもらう。

この後にクターニッド戦が控えているという事実、そしてなによりそろそろ200話なのに未だに作中は夏休みが終わっていないという事実

うわっ……私の小説、テンポ悪すぎ……?




ガチアサリ……ギア追加……新エリア……(唾を飲む音)

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