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傲岸不遜のチャレンジャー:イグニッション

色違いメタング出ました! うっかりやでした!

ちくしょう! (毎日投稿を)だいなしにしやがった! お前はいつもそうだ。

このCDS3Vとかいう需要が意味不明な色違いメタングはお前の人生そのものだ。お前はいつも失敗ばかりだ。

お前はいろんなことに手を付けるが、ひとつだってやり遂げられない。

誰もお前を愛さない。


大変申し訳ないです……

『さぁエキシビションマッチ、シルヴィア選手の出番となったことで爆薬分隊は厳しい状況になったのではないでしょうか?』


『そうですね、現状顔隠し(ノーフェイス)選手の実力が未知数ですのでシルヴィア選手に対抗できるのは魚臣選手だけでしょうが……』


「ちょっとお腹の中の戦場で衛生兵が撃たれたそうなので苦戦するそうでーす!」


何故この場にいない人物の腹の具合を正確に把握できるのか、そんな疑問などシルヴィア・ゴールドバーグの戦いが始まると言う事実より優先されることはない。


『あ、そうですか……兎も角、ここに来て謎の仮面選手もう一人の実力が明らかになるわけですね』


『さぁ互いにキャラクター選択です。シルヴィア選手は当然と言うか、やはりミーティアスですね!』


『ミーティアスは先ほどの試合でも分かると思いますが、機動力がズバ抜けて優れたヒーローキャラです。その分耐久に少々難がありますが、「当たらなければどうと言うことはない」を実践するシルヴィア選手の技量が組み合わさる事で最強の称号を欲しいままにしていますね』


『格ゲーのプロゲーマーはシルヴィミーティアスに一撃当てられたら初めて一人前、なんて言葉が生まれるくらいですからねー』


そう、鮮烈なデビューを遂げてから無敗記録を今尚刻み続けるシルヴィア・ゴールドバーグの対策は現在進行形で研究が続いている。

匿名の掲示板に、時折明らかにプロゲーマーしか知り得ないような情報を持つ者が現れたりする程に、シルヴィア打倒を目指す者達はあらゆる情報を集めている。


そして弾き出された結論は「カウンター」であった。

ミーティアスを捉えることは不可能だ。壁も地面も天井もない、全ては流星が走る「道」でしかない以上、それを追い、追いつくことは出来ない。であれば向こうからの攻撃に対して迎撃をするしかないのだ。

シルヴィミーティアスに一撃当てられたら一人前、という言葉は「超速超軌道で叩き込まれる攻撃に対処できるようになれば一人前」ともいう意味なのだ。


話を戻すが、ミーティアスに対して最も有利なキャラクターは「アムドラヴァ」であると言われている。

それはかつてシルヴィア・ゴールドバーグを追い詰めた二人のプレイヤーが使用したキャラクターであった為だ。

それは近距離、厳密に言えば徒手空拳をメインとするキャラクターに対し、高い防御性能とスリップダメージで有利対面を強いることができるからだ。


そしてそれは言い換えれば「近距離型に弱く」「ミーティアスの速さに追いつけない」キャラクターはミーティアスに、シルヴィア・ゴールドバーグに対して対面時点で不利を背負うことになる。


そして顔隠し(ノーフェイス)がゆっくりと、しかし迷いなく選んだキャラクターは上述の理由から、ミーティアスとのダイアグラム不利七割という、仮にもミーティアスの宿敵(・・)でありながら、あまりに情けない相性のヴィランであった。


『さぁ顔隠し(ノーフェイス)選手のキャラクターは……え、嘘っ、カースドプリズン!?』


地面に手袋を叩きつける、果たし状を送る、相手の首がどこに飾られるべきかを告げる……古今東西において弱者も強者も関係なく、全力を望む戦いがある。そして絶対王者に対して、正体不明のチャレンジャーは最大の挑戦状を叩きつけた。


『カースドプリズン! カースドプリズンです! ヒーロー「ミーティアス」の宿敵、呪われた監獄(カースドプリズン)だーっ!!』


かつてシルヴィア・ゴールドバーグに挑んだプレイヤーの中に、カースドプリズン使いがいなかったわけではない。

だがそういった挑戦者達は、全て苛烈なまでの全力によって叩き潰されて来た。いつしかシルヴィア・ゴールドバーグに対してカースドプリズンを使用することは一種のタブーであるとされ、もしそれでもカースドプリズンを選択したということはそれ即ち……



「本気でかかってこいクソッタレ」を意味する。















時間稼ぎがしたいのならば、カースドプリズンはむしろ避けるべきではないのか? そう問うたペンシルゴンだったが、俺にはその選択肢は存在しないのだ。

正直言って、俺がシルヴィア・ゴールドバーグに太刀打ちできるとすれば他の扱いやすいキャラでもミーティアス同士のミラーマッチでもない、カースドプリズンでなければならないのだ。


時間稼ぎとは、ともすれば単純に勝つよりも難しい。なにせどれだけバフデバフを繰り出し、プレイヤースキルを高め、乱数を味方につけたところで……時間はどうしようもない。

億、兆、それ以上のダメージを叩き出せるスペックを持っていたとて時計の針を早めることは出来ない、いいから黙って時間稼ぎしろとしかならない。


だが勝ちを諦めるからと言って、勝てない装備で時間稼ぎができるかと言えば答えはノー。時間稼ぎとはつまるところ「勝てるけど勝たない」状況で初めてノルマを達成できるのだ。

老侍、妖精、サイボーグ……俺が扱いやすいと感じたキャラはいくつかあれど、「全米一にワンチャンある」と思えたのは前作ダイアグラム3:7であったカースドプリズンだけだった。

ミーティアスに対して圧倒的不利なカースドプリズンであるが、聞けば歴代のギャラクシア・ヒーローズでもその相性は覆ったことはないらしい。お前宿敵として恥ずかしくないのかよ……いやそれは置いといて、だがいつの作品でもカースドプリズンは三割の勝率だけは逃さなかった。


「その三割が鍵なんだよ……っ!!」


成る程、飛び跳ねるウェザエモンという評価がまさに相応しい。実際に相対して分かる人力TASじみた奇怪な機動力は本当に人間を相手にしているか疑わしくなってくる。

カースドプリズンの初期装備とも言えるガトリングが絶叫を上げて弾丸をばら撒く弾幕の中を、泳ぐように駆け抜ける流星は先のペンシルゴン戦と同様に複雑な立体機動から、俺へと強襲を仕掛ける。だが残念だったな、


「奴は四天王の中でも最弱ゥーッ!」


車輪に機動力を依存するモノが出るゲームと言えばまずレーシングゲームが思い浮かぶ。だが、こと車輪が人の二足で稼働する場合、参考とすべきはレーシングカーではなく、戦車だ。

人力ではない車輪脚の最大のアドバンテージは足腰を動かすことなく身体を百八十度回す事ができる事だと俺は思う。

右脚と左足の車輪をそれぞれ逆方向に回転させる事で、その場で超信地旋回。虚空を叩き据えるように振り回したガトリングが流星を撃墜すべく弾丸を叩き込む。


ああ分かってる、分かっているとも。これじゃ避けさせることは出来ても当てることは出来ない。だから……


「落ちろ青色LED!!」


「わっ!?」


壁を蹴りこちらへと攻撃を仕掛けてくる以上、空中で回避するには空中ジャンプを使用するしかない。そして虚空を踏み、跳躍した瞬間こそが攻撃の隙となる。なにせ行動判定が終わってないからなぁ!

空中で散弾に撃墜されたミーティアスであったが、そんなものは苦でもないとばかりに身を翻し、そして着地する。

星型のゴーグルが光を反射してその目を見ることは難しいが、どうやら俺が思った以上にできる(・・・)事に驚いているらしい。


「中々やるじゃない」


「そりゃどうも……!」


お誉めいただいたのは光栄だが、この程度で満足できる縛りではないのだ。恐らくこちらの残弾数が底を尽きかけていることはバレている。カッツォもそうなのだが、格ゲーガチ勢という人種は気持ち悪い精度で相手の状態を把握して来る。


「とはいえ、私の前にそれで立った、ということは私の全力がご所望なんでしょう?」


「舐めプされるのは嫌いなんでな」


「その喧嘩、チップもつけて買ってあげるわ」


1ラウンド目先取は厳しいかもしれない。

獰猛な笑みを浮かべて放たれる蹴りに視界を塞がれながら、俺はそう思わずにはいられなかった。




……まだ()ない。


前述の理由からちょっとアローラ救ってくるまで更新が……えぇ、まぁ、はい、あっ、はいちゃんと書きます、はい、はい。

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