裏の裏の裏の裏をかく
唐揚げが古戦場でインディちゃんに清き一票をお願いするウルムンに備えてヌル厳選で僕はシヴァもセスランスもザオシェンも持ってるのにアグニスが無いので悲しみの鰹編成でシルヴァ砲はレモンをかけないので多分明日は更新できないです、申し訳ありません。
通信交換されれば腕が四本になったりしませんかね……
「はー流石はプロゲーマー様だねぇ、困った困った」
クロックファイアの「お人形」は任意起爆のためには視界内、厳密には「左眼の義眼の視界内」に爆弾が存在していなければならない。1ラウンド目のようにヘリという最高クラスの
簡単な話だ、移動すらままならない始まってすぐの状況であるならば爆発するということは近くにいるということなのだ。であればクロックファイアの対策は実に簡単であり、爆弾を無視して本体を捕捉する、ただそれだけだ。
「はっはぁー! 見つけたぜ
「あら、がっつく男は嫌われるわよ?」
「ワイルドな男の方がモテるんだぜ」
もはや
「私はごめん……だね!」
Dr.サンダルフォンの背後、逃げ惑うNPCの何人かが爆ぜる。それを合図に、対峙は衝突へと移行した。
(ちょっ、速すぎ……っ)
「さっきのラウンドの礼代わりだ、チップと一緒に受け取ってくれよな!」
「結構だ、よ!」
設置可能数八、既設置数十二。
任意起爆は使えない、であれば己の体力を担保に距離を取る。
Dr.サンダルフォンは超能力を操る近接格闘タイプ、その代名詞たる技は拳に念動力を纏わせることでパンチの威力を上げるサイコフィストだ。具体的には連打力は若干かけるが二段ヒットする。
クロックファイアの左眼に埋め込まれた義眼の力で犬の人形を生み出し、ペンシルゴンは拳と自身の間にそれを
犬人形がペンシルゴンとルーカスの拳で挟まれ、サイコフィストの衝撃がファンシーな犬の身体をたわませ潰し、そして爆ぜる。
「うっぷ……お腹に電気マッサージのアレつけてるみたい……っ」
起爆、起爆、起爆。かろうじて視界に映るNPC達を見つめ、さらに三つ起爆する。
「誘爆! ラッキー!」
設置可能数十三、既設置数七。
(マズいなぁ……NPCが
「オイオイ、デートの最中に他のやつのことなんて考えるもんじゃあないぜ! 俺だけを見な!」
「プロポーズなら医師免許取ってから言ってよねヤブ医者!」
爆ぜる、吹き飛ぶ、起き上がる。
想定していた迎撃ポイントからの距離は遠く、逃げ惑うNPC達を逃せば爆弾の数に制限が付いてしまう。
(どうせこのラウンドは負けるつもりだったとはいえ、負け方ってもんがあるわけでぇ……)
このゲームではラウンド移行の際にフィールドの変化も引き継がれる。それはつまり、爆弾が貼り付けられたNPCもそのまま引き継がれるということだ。
(七人、か……体力は六割ちょい、ここらのマップ的にスケコマシを抜かないとあっちには戻れない……)
一瞬視界に映り込んだNPCを見逃さず起爆、幸いにも起爆順の最前列であったらしい。だがこれで視界内に他のNPCは映っていない、ビルとビルの隙間に追い込まれた現状を早急に解決する必要がある。
(サンラク君やカッツォ君なら当身とかガード投げ? とかで解決するのかもしれないけど、私じゃプロゲーマー相手には無理だよなぁ……よし)
交渉で最も重要な道具は笑顔だ、柔らかな笑みは余裕を演出する。もしや何か策を隠し持っているのでは、そんな疑問は毒となって動きを鈍らせる。それこそがペンシルゴンの、鉛筆戦士の真のメインウェポンなのだ。相手に考えさせること、疑わせること。
どこぞのテンション馬鹿のように自身の在りようを高めてバフをかけるのではなく、どこぞのユニーク自発できないマンのように研究と経験を突き詰めてバフをかけるのでもない……相手に対して話術と状況を用いてデバフを仕掛ける戦法。
「私は後ろを気にする必要がなく、貴方は��直線にしか行動できない……もし作戦通りって言ったらどうする?」
「まっすぐ進むだけさ」
「そりゃ結構!」
必要な情報は聞き出せた、あとは実行あるのみ。にまりと笑みを浮かべ、躊躇いなく前へ飛び出したペンシルゴンにDr.サンダルフォンの身体警戒に強張ってしまう。
口ではどうとだって言える、だからこそ実行された突撃にルーカスは存在しない打開策を警戒する。だからこそ、敵へ突っ込んでそのまま脇をすり抜けて行ったクロックファイアに対戦相手のみならず、観客すらもが数秒フリーズする。
「あっはっはバーーーーカ! 女の子を路地裏に連れ込もうなんて三光年速いんだよっ……バーーーーカ!!」
「そりゃ距離じゃねぇか!!」
天音 永遠二十四歳、小学生並みの煽りの後全力疾走である。
このワンシーンだけを切り取れば、これが全世界に放送されている大舞台での出来事とは思えないだろう。だがペンシルゴンとて試合放棄で逃走しているわけではない、元よりか細い勝利へ続く蜘蛛の糸をかろうじて維持しながらよじ登っているのだ。
(まだ二分……あと五分は稼いでおきたいところだけど……っ!)
「待ぁぁてぇぇぇぇ!!」
「私は鬼ごっこより隠れんぼがしたいかなぁ!?」
「させるわけねぇだろうが!!」
(だよねぇ……おっ、二個回収)
設置された爆弾はあと五つ、回収と逃走と時間稼ぎの三つを一つ足りとも漏らさぬためにはどうすれば良いか。
とりあえず無辜の一般人を爆破して人形を回収し、フィナーレの下準備を整えるべくクロックファイアは全力のダッシュを始めた。
「ぶふっ、くく……中指立てなかったことは褒めてもいいんじゃね……?」
「それを差し引いてもこんな大々的な場所であんな子供みたいな……頭痛くなってきた」
「まぁ、夏目氏のヒールプレイが霞むどころか消し飛んでるから結果オーライってことで」
「…………もしかして、そのためにあんな振る舞いを?」
「いやいや、素だよアレ」
夏目氏が頭を抱えて動かなくなったのを尻目に、俺はヘルメットの下で眉を顰め口をへの字に曲げる。
夏目氏が稼いだ実質三十分にペンシルゴンが今現在稼いだ時間を足して大体四十五分程度。仮にペンシルゴンが今と
とはいえ何もかも上手くいく世の中ならそもそもこんな状況になっているはずがない、こう言っちゃアレだがペンシルゴンが三試合連続で持ちこたえられるなんてハナから思っちゃいない、そもそもペンシルゴン本人が一番分かっているだろう。
「良くて四十分稼げればいい方か……?」
予想外に、いやある意味では予想の内であるのだがやはりプロゲーマーの対応力は、高い。
本来であればペンシルゴンは徹頭徹尾会敵を回避し続けることが前提なのだ。それに開始してすぐとはいえ三十秒の先行時間があったペンシルゴンはそれなりに準備していたというのに、あっという間に見つけられてしまった。
何故格ゲーで鬼ごっこしてるんだと言いたくもなるがクロックファイアは設置ボムが極悪な分、全体的なフィジカルのスペックは低めに設定されている。いつかは追いつかれる以上、この均衡もそう長くは保つまい。
「結局のところペ……
「ここで祈ること?」
「奴の醜態を笑うこと」
フレーメン反応起こした猫みたいな顔で俺を見てくる夏目氏は無視。
さてさてペンシルゴンよ、せいぜい暇を持て余している俺達を興じさせるがよいぞ、ふははははは!!
あっ、カメラさんこっちにレンズ向けないで! 緊張するから!
夏目ちゃんが顔芸要員になりつつある……