共通点はセオリーにとらわれない自由な発想(遠回しな表現)
結果から言えば、ストレートは防いだが2ラウンド取られて敗北した。
まさかバグにバグを重ねて来るとは思わなかった。
「いやぁー最近はNPC相手に技の練習ばっかしてたから満足だわ。」
「まさか飛び散った拳のテクスチャ全部に当たり判定あるとは思わなかった。」
「あれ失敗するとそこら中に当たり判定が飛び散る諸刃の剣だから……そうなると拳の欠片の上でタップダンスされるだけで死ぬ。」
「笑うわ。」
ショットガンパンチでまさか本当に拳が砕けて散弾になるとは予想できないって、精々拳が分裂するくらいだと思っていた。
このゲームの独特なマナーとして観戦していたプレイヤー達から今のバトルのスクリーンショットが送られてくるのを眺めながら俺とモドルカッツォは雑談に興じる。
「しかし大会でもないのになんで戻ってきたのさサンラク。次のクソゲーまでの暇潰し?」
「いやぁ……実は最近シャンフロを始めたんだけど……」
「リアリィ?ハッ。」
俺だから許したが、一般的に人を調理済みの七面鳥が命乞いを始めたのを見るかのような顔で笑うのは失礼なことだと分かっているのだろうか。
「いやいやサンラクお前「むしろバグらないゲームの方がクソゲーなのでは?」とか最高に
「フェアカスを殴ってたらなんか燃え尽き症候群みたいになってなー……偶には大衆が評価するゲームをやってみようかな、と。」
「明日は「便秘」が神ゲー扱いされるかも。」
俺がクソゲーじゃないゲームをやるのは槍の雨が降るよりありえない事態ってか。
俺ほど無節操にクソゲーに手を出す悪食ではないが、大抵のクソゲーはクリアしているモドルカッツォがツチノコをペットにしたエイリアンでも見るかのように俺を見るが、いちいち気にするだけアホらしいので話を進める。
「いやこれが中々によく出来ててさ、舐めプとは言えバグもクソ要素も無しで予想外の攻撃受けて死にかけてさぁ。」
「あー、つまり初見殺しとセオリー外しの塊たる便秘で勘を戻そう、ってことね。」
「そういうこと。」
流石に瞬間移動と分身の術を同時にやらかすこのゲームより予想外なアクションがシャンフロで起こるとも思えない。
結構長い間フェアクソ攻略をしていたのでバカなAIを介護するプレイは上達したが、代わりに若干錆びてしまった初見殺しに対する対応の勘を取り戻したかったのだ。
「まさか蛇が糞を飛ばしてくるとは思わないだろ?」
「クソゲー好きには相応しい攻撃じゃない?」
「ははは、ぬかしおる。」
「けどシャンフロかぁ……俺もやってみようかな、リア友にこのゲーム勧められねぇから盛り上がる話題がないんだよ。」
そりゃあ肉体改造ミュータントになれるゲームを大衆に広めてもなぁ。
最悪「バーチャルとは言え肉体を歪めるようなゲームは健康ガー精神ガー」と喧しい手合いが出ないとも限らないし、便秘はあくまでも細々と続くクソゲーでいいのだ、むしろ今ここにいるプレイヤー達はそれが好きで来ているのだから。
その後も何度かモドルカッツォや他のプレイヤーと対戦した後、俺は飯落ちも兼ねて人外魔境「便秘」からログアウトしたのだった。
水分と食事を補給し、クソゲーから神ゲーへと移動。
セカンディルの宿屋で目を覚ました変態鳥頭サンラクこと俺はデスペナルティが解除されていることを確認してこれからどうしたものかと考える。
「とりあえずなんか防具を買った方がいいかな……」
流石に裸装備はマズイということは理解できた。
貪食の大蛇の毒糞攻撃にダメージ判定がなかったから間に合ったものの、もしあれに命中した時点でダメージ判定があったら辿り着く前に死んでいた。
紙装甲と呼ぶことすら烏滸がましいノーガード装備だ、せめて初期装備でいいから何か着た方がいいだろう。
そして何より回復手段だ、流石に舐めプすぎた。
「地図もそうだし……インベントリも整理しないとな。」
やることが多いのが楽しいのはゲームだけだ、と現役リーマンなプレイヤーが愚痴っていたのを聞いたことがあるが、まさしくその通りだ。
これが家事課題などであったらそっとため息をついて翌日に後回しにしているだろう。
「さて、出るか。」
主人公とモドルカッツォは、会ったことはないがリアルでもメールのやり取りをするくらいには親交のあるクソゲーフレンドその1です。
クソゲーならなんでも美味しくいただく主人公とは違い、彼は「難易度が鬼畜調整されたクソゲー」を好んでおり時々主人公に紹介してもらっています。