第34話 ちゃんと最後まで
こちらはカクヨムに掲載された修正版です。
原文ともによろしくおねがいします(*^^*)
「……というわけで我々、猫、犬、カワウソ、迷える亜人三種を龍神様の配下に加えていただきたく、お願いしに参ったしだいですにゃぁ~~」「ワフ」「みゃあ」
平に平伏し、お願いを請う亜人たち。
彼らは彭侯の言う通り、弥生に助けを求めにやってきたようだ。
彼らは数十年前、祖国の迫害から逃げるようにこの地に移り住んできたという。
しかし魔獣はびこるこの土地で、文明を捨てた流人の彼らが生きていくのは辛く、何世代にもわたり飢えに苦しめられてきた。
とくに今年は魔獣の動きが活発で、僅かな実りもみんな食べ尽くされてしまい絶滅の危機に陥っていたという。
そんなとき突如現れ、恵みを与えてくれた神様がいた。
「それが龍神様ですにゃぁ~~~~」「ワフ」「みゃあ」
「いや……にゃあ、ワフ、みゃあと言われてもね……。ていうか……な、なに? 亜人ってヒトじゃないの!? あんたたちどう見ても人間には見えないんだけど??」
大きさはともかく彼らのシルエットは完全に動物。
人たる要素は微塵もなかった。
それについては彭侯が説明してくれた。
「亜人の種類は様々で、中には彼らのように動物の遺伝子を濃く残した者も多いです。それらはみな下級亜人と蔑まれ、差別の対象となっているようですね」
「う……そ、そうなんだ……。で、でもなんでこんなに大きいのさ?」
「おそらく……脳味噌を基準に体が最進化したのでしょう。亜人のほとんどが人間サイズで言葉も喋り、手先も器用になっております」
「ぬぅぅぅぅぅぅ……。頭も良くて器用で……しかも体も大きいんだったらそれなりに強いんじゃないの? そこの猫なんてほぼ虎じゃん!? 私マジでちびりそうになったからね」
「……そ、それは申し訳なかったにゃぁ~~驚かせてしまったにゃぁ~~」
「並の動物相手にはそうでしょう。しかし魔獣相手ではとても通用しません。彼らは知能が低いぶん、戦闘に特化した種族ですから」
彭侯の説明に身を寄せ合い、うんうんとうなずく三匹。
まぁたしかに体は大きいが愛嬌のほうが勝っていてそんなに強そうには見えない。
犬のレレに至っては大きさもただの犬とそんなに変わらない。
犬種はコモンドール?? 白いモフモフ毛の塊で、目が見えない。
カワウソのロロはアザラシにしか見えないし……。
これであの象豚や針ヒグマたちと食料争奪戦をするのは……たしかに難しいかもしれない。
「でも、頭が良いんだったら道具を使うなり罠を張るなり色々できるでしょ?」
「……くるしい生活の中で、そういった知識や教養は失ったようです」
「祖父の代から食べていくので精一杯だったにゃぁ~~……」
「武器はおろか……田畑を耕すことだって……ままならずだワフ……」
「魔獣の襲撃に怯え、穴を掘って隠れ住み、その日の食いぶちを探し求めるので精一杯……。かつて多くいた一族も、もう十分の一ほどに数を減らしておりみゃする。このままでは拙者たち、全滅するのを座して待つほかありみゃせん。なので、どうか、どうか、殿のお力にお縋りさせていただくわけにはいきみゃせぬか!?」
ははぁ~~~~~!!
また地面に頭を擦りつけてお願いしてくる三匹たち。
「大王ホタテダコ美味しゅうございみゃした。メスたちも乳が出るようになりみゃした。子供たちも元気になり、海に魚も戻ってきみゃした。これもすべて龍神様のお導きと我らカワウソ族みな感謝しておりみゃする」
なんだか侍めいた口調のロロ。
礼儀正しく真面目な印象。
「そうですワフ。龍神様が恵んでくださったお肉と魚、とても美味しかったんだワフ。おかげで我々はお腹いっぱいになったんだワフ。龍神様の気配を恐れ魔獣たちもこっちにこなくなったワフ。おかげで草も根もまた食べられるようになったワフ。小動物も捕まえられるようになったワフ~~ン」
レレは呑気な感じ。
人懐っこそうでモフりたい。
「我々三人は村の代表として馳せ参じましたにゃん。どうか我々を下僕として、村を守ってほしいにゃん。どうかお願いいたしますにゃん」
猫のルルは持っていた袋を彭侯の前に差し出した。
さしずめ貢物といった感じだが……。
開けて中を確認する彭侯。
「殿とか……。下僕っていわれてもなぁ……」
ほとほと困る弥生。
守ってあげるぶんにはまぁ……この際べつに構わないのだが、神様や殿様扱いはちょっと……。
隣で彭侯の目がキラリと光った。
「……あなたたち、下僕になるというのは本当ですか?」
「も、もちろんですにゃ。龍神さまのためならばウチらはなんでもするにゃ。ううん、ウチらだけじゃないにゃ、村の衆みんな龍神様の命令に従うにゃ!!」
彭侯は薄く笑うと弥生に向き直った。
そして仰々しく跪く。
「では弥生様。亜人たちを貴方様の民、そしてこの者たちを私の部下として仕えさせてはいただけませんか?」
「ええ~~~~っ!?(マスオ)」
「わずらわしいことは全て私が引き受けます。弥生様はただ主として君臨していただけさえすればそれでばいいのです。どうかお願いいたします」
「いや……まぁ…………うん。あんたがちゃんと面倒見るっていうなら……」
その言葉を聞き抱き合って喜ぶ亜人たち。
すぐに彭侯にならい、頭を下げてきた。
彭侯に頼まれてしまったら断れない弥生。
まるでペットをねだられる母親のような気持ちになってしまった。
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