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第33話 お救いくださいにゃあ

こちらはカクヨムに掲載された修正版です。

原文ともによろしくおねがいします(*^^*)

「はぁぁぁぁぁぁぁ……食った食ったごちそうさまぁ~~~~」


 ポンポコリンに腹を膨らませてご満悦な弥生。

 虎縞鹿トラジマジカは見ため虎模様で性格も凶暴な肉食魔獣だが、味はあっさりと上品な鹿肉のそれ。

 だから尚更なおさら炭火との相性がよく、純粋な肉の味をたっぷりと堪能できた。


 ハンバーグも、焼き鳥も、焼きタコも、みんなジューシーにふっくらと、普段より数段美味しく感じた。(いままでもすごく美味しかったんだけども)

 特に鰻は炭焼きじゃないとダメだ。皮のパリパリ感が全然違う。


 あらためて弥生は炭の偉大さを知り、作ってくれた彭侯ほうこうに感謝した。





「……おやぁ、なんだか猫や犬たち……活発に活動しているようだねぇ~~」


 酒と料理ですっかり火照った体を冷やそうと、洞穴から外を眺めていた弥生。

 すると地上の村から、いくつもの煙が上がっているのを目に止めた。


「ああ、亜人たちですね。最近は元気になったようで。これも弥生様が食料をわけてあげたおかげでしょう。彼らもきっと感謝していますよ」


 洞穴の天井に木の根を這わせ、そこに肉を吊るしている彭侯。

 魚も同じく吊るして凍らせる。

 これで冬の間はルイベが楽しめそうである。


「そうかな? ……ま、べつに余り物だったからいいんだけどね、感謝なんて」

「いまごろは神様みたいに思われているんじゃないですか?」

「ちょっと~~。勘弁してよ。……そういうのは窮屈きゅうくつだって言ったじゃない」

「それだけの力がおありですから……」


 地球の自然を司る五龍。

 その中においても中心的位置にある黄龍やよいは、正しく神たる存在。

 本人もその自覚はあるはずだが、しかしおごれることなく、自然のごく一部として静かに過ごそうという謙虚さには敬服するしかない。

 弥生にしてみれば格好をつけているわけではなく、こういう性格なだけなのだが。


 しかし力を持たない者にとって、そういう存在こそ神と言うのだ。





 で、やっぱりというか、当然の流れで――――、


「あの~~~~……ここは龍神様の神殿ですかにゃん……?」

「――――ぶっ!??」


 今日も日課の朝風呂、朝酒を堪能していたダメ人間もとい神様、いや、弥生。

 遠慮がちな声に振り向いてみると、そこには一匹のドデカイ錆び猫が。


「な、なにあんた!?? え、魔獣っ!???」


 猫は見た目日本猫ぽかったが、大きさは虎ぐらい。

 口に袋を咥えて耳を伏せて座っていた。

 敵意は無いようだったが、大きい猫科動物というだけで物騒。

 弥生は丸裸で立ち上がり、とっさにウルトラマンの戦闘ポーズをとった。


「へやぁあっっ!!!!」

「あ、いや違うにゃん。ウチは怪しいものじゃないにゃぁ~~!! 猫村の『ルル』というものだにゃんっ!! りゅ、龍神様にお会いしたくてやってきたにゃん!!」

「ルル~~?? 龍神様~~~~????」

「同じく『レレ』ワフ」

「そして『ロロ』ございみゃす!!」

「うぉっ!??」


 ルルに続いて森の影から現れたのは、これまた大きな犬とカワウソ(?)。

 二匹ともルルと同じくらいの大きさをしている。


「な、なんだなんだアンタたち!? 猫村?? ――てことはまさか??」

「はい。五湖近くの亜人たちですね」

「彭侯!?」


 バスローブ片手に、いつのまにやら現れた彭侯。

 真っ裸の弥生を隠すように亜人たちの間に入ると、


「まずはお召し物を……。下々の者よ、控えなさい。このお方こそ世界の摂理を司る大五龍だいごりゅう、その中心であられる黄龍様であらせられます」

「「「ヒッ!???」」」


 聞いた三人の亜人たちは飛び上がらんほどにびっくりし、そして土に埋まりそうなほどに平服した。






「……申し訳ございませんにゃ。龍のお姿じゃなかったので、てっきりお付きの美人巫女様かと思ってしまったにゃあ……」


 バスローブを着せられ、彭侯が急ごしらえしたとうの玉座に座らされている弥生。

 その前には三人の亜人たちが、それぞれガッチガチに緊張しながら頭を地に付けていた。


「……ほう。それはまた随分と無礼千万な…………」


 殺気のこもったオーラを滲ませ、亜人たちを睨みつける彭侯。

 森の木々がざわめき、無数のツタが三匹ににじり寄ってきた。

 ガクガクブルブル身を寄せ合う亜人たち。


「ちょ、ちょっと彭侯くん? 私はべつに気にしていないから!? 人の姿でいた私が悪いんだし〝美人〟って付けてくれてるし、まんざらでもないから!!」

「………………あなたたち、黄龍様の寛大なお心に感謝いたしなさい」

「ははぁ~~~~だにゃんっ!! だワッフ。 みゃぁーーっ!!!!」


 整列するツタ(竹槍装備)

 怯えに怯えまくって涙目な三匹。

 さすがに見てられなくなって彭侯の袖を引っぱる弥生。 


(ちょっとあんた何でいきなりそんな威圧的なのよ、可哀想でしょっ!?)

(……この者たちはおそらく弥生様を神と崇め、助けを求めにきております)

(えぇ~~~~……)

(なのでそれ相応の態度は必要かと。……弥生様はそのままで、嫌われ役は私が務めさせていただきます)

(……あ、そういうことね。……でも……神様とか面倒くさいんですけど……?)

(そこはもう、お諦めください。今の時代……彼らにも弥生様が必要なのです)

お読み頂きありがとう御座いました。(*^^*)

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