ホラーランドセル
第四回なろうラジオ大賞参加作品第十四弾!
俺の名は翔。
さっそくだが俺の話を聞いてくれ。
何を言ってるのか俺でさえ分からんが、妹の光のランドセルが危険だ。
「兄ちゃん早く行こ?」
「あ、ああ。行こうか」
光は一切気付いてないようだが、最近の俺には見える。
光の誕生日プレゼントにと、ひい爺ちゃんが買ったランドセルの中から……人間とはとても思えない何か……まるで枯れ枝のような印象を受ける何者かの長い手が伸びてるように見えるのだ。
まさかこれが悪霊の類なのかと思い俺は恐怖した。
だが血の繋がりのある光にも、他の人にもそれは見えてない。
まさか俺だけ霊視能力が覚醒したのか。
もしくは俺だけに見える幻覚なのだろうか。
ちなみに今まで光にも他の人にも被害が出てないようだが……基本的には無害な存在なのか。でも時々そのランドセルの隙間から血走った目らしきモノが見えたりするんだよな。アレ絶対悪霊の類だよ幻覚じゃなければ。
まぁどっちにしろ、アレを日々見続ける俺の精神がこのままでは持たないので、俺は恥を承知で身近な大人に相談した。
「……集中して視ると、確かに変な気配があのランドセルからしますね」
俺達の現在の保護者であるシスター・ヘレナが神妙な顔つきをする。
よかった。俺以外にも光のランドセルの異常を察知できる大人がいた。
「このままでは、この世界に喚び出してしまったあなた方どころか、周りの方々にも、何か良からぬ事が起きるかもしれません。今の内に私の聖魔法でランドセルを浄化しておきましょう」
※
俺と光はある日の登校中、なんと異世界召喚された。
ちなみに喚ばれたのは光だけで、しかも光は異世界を救う聖女として召喚されたらしいが、その召喚魔法に俺まで巻き込まれた結果……なんと聖女の力が俺と二分したらしく、それ以降俺も召喚者たるこの世界の聖職者達にお世話になっている。
ちなみに、聖女としての力は勉強中でまだマトモに使えない。
光のランドセルに取り憑いた何かを祓うのは、さすがに大人にしか、現時点ではできない。悔しいけど……霊視能力が目覚めたのは幸運かもな。
※
「悪しきモノに今こそ導きの光を。ホーリーライト!」
ヘレナさんが聖魔法を使う。
するとその直後、光から預かったランドセルから変な気配が消えた。
ああ、よかった。
これで誰かに変な事が起きたりはしないだろう。
※
『こちらイグ星系第三諜報部隊第三席ヴェレグ。現地人が聖魔法をかけてきたため急遽離脱。聖女の監視につきましては遠くから――』
「よし、作戦を続行せよ。ただちにその星にあるg3r8O9Ez0epqを持ち帰るのだ」