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第91話 忠誠の騎士

「で、いつになったら解放してくれるんですか?」


「決まっている。あなたがレイファ殿下の作るパーティーに入ると約束するまで」


 現在、俺はというとレイファと話していた部屋の隣の部屋に移されていた。



どうやら王女様はこのホテルの一フロアごと貸し切っているらしい。

 腕と胴にはしっかりと拘束が施されている。見張っているのはソフィーのみだが、俺が何か行動を起こさないようにしっかりと目を凝らしていた。


「それじゃあ、一生解放されないってことですね」


 幸いにも、すぐには俺に危害を加えるつもりはないようだ。

 拷問でもされたらどうしようかとビビッていたが、パーティーに入れるという目的のため、そう手荒な手段を用いるのは得策でないと考えたのだろう。


 少なくとも、自主的にパーティーに入るという言質を取りたいらしい。拘束をしている時点で自主的かどうかは怪しいところだけど。


「このまま縄で縛られたまま死にたくないようなら、殿下に従うこと。いい?」


 レイファに言いつけられた通り、ソフィーは俺を監視して、こちらが折れるまで見守り続けるつもりらしい。

 大した忠誠心だ。どうしてそこまであの王女に従う気になるのか、不思議なものだ。


「変な動きを見せないで。抜け出そうとするなら容赦なく刺すから」


 身体のポジションを調整しただけなのに咎められる。


 先ほどソフィーに刺された太ももは神官兵士の男に治療してもらえたが、あの時の痛みは覚えている。

 殺すつもりはないとわかっていてもひるんでしまうのが、人間の性質ってやつだ。


「身体の位置を変えただけですよ。抜け出したりしないですから」


「信じられない。あなたが《罠解除》を使うのは知っている。この拘束だって解くことはそう難しいことじゃないはず」


 ソフィーは目を光らせながら、こちらに切っ先を向けてくる。

 彼女は【高位鑑定】のスキルを持っているらしい。それによって、こちらのスキルや使えるアーツを見破れると言っていた。


 もしそれが本当なら厄介なことこの上ない。こちらの手の内はすべてバレて、拘束されているという不利な状況にいる。


 ソフィー自体もダンジョン攻略パーティーの一軍レベルの実力は持っているんだろう。

 虚を突かれたとはいえ、俺を一瞬で制圧したのだ。


 まさに八方塞がり、現実的に考えて脱出は不可能だ。

まさか人生最大の窮地がダンジョンではなく、街の一室で繰り広げられるなんて想像もしなかった。


「反抗したりしませんって。手痛い目には遭いたくないですし」


「だったら、さっさと殿下に従って」


「それも無理って言っているじゃないですか。なんと言われても折れませんよ」


 刃を向けてくるソフィーを見上げながら吐き捨てる。

 いくら武力で脅そうとも無駄だ。それだけは譲ることができない。


 俺を信じてついて来てくれた仲間。それを見捨てるような真似ができるものか。


「こちらの提案じゃ駄目なんですか? 現在、『到達する者アライバーズ』には一枠分冒険者が足りません。王女様に相応しい力があるとわかればそこに入れることだったら、可能ですよ」


「何度も言っている。こちらも譲るつもりはないと」


 ソフィーのレイピアが窓から差し込む光を反射していた。


「レイファ殿下は自力でダンジョン攻略をすることを必要としている。殿下が『到達する者アライバーズ』に入ってダンジョン制覇したとしても、周囲の人間はダンジョン攻略パーティーに連れられてダンジョン制覇しただけの王女として扱う。その程度の功績では、王の座を与えられないかもしれない。殿下が確実に王の座に就くためには、殿下自身が作ったパーティーでダンジョン攻略をすることが大事なの」


 どうやら向こう側にも譲れない理由があるらしい。


 相当厄介な状況だ。自身の作ったパーティーでダンジョン制覇を成し遂げなければならないレイファと、何としてでも『到達する者アライバーズ』でダンジョン攻略をしたい俺。


 相容れない二人。どちらかが折れない限りこの問題は解決しない。

 そして、そのどちらもが折れる気はないときた。


「はあ……」


 大きく息を吐く。要は俺とレイファの根比べだ。

今から張り詰めていても精神的に持たない。それだったら、体力を温存して来たるべきチャンスに備えていた方がいい。


「それにしても、どうしてソフィーさんはあの王女に付き従っているんですか? いくら貰ったんですか? それとも何か弱みでも?」


 気分転換がてら、ソフィーに雑談を持ちかけることにした。


「違う。わたしが殿下に忠誠を尽くすと決めただけ」


「忠誠を尽くすほどの人格のようには思えないんですけど……」


「それは殿下を愚弄しているの?」


 一歩近づいて、レイピアを構え直すソフィー。

 どうにも融通の利かない人間だ。このくらいの軽口くらい許してくれよ。


「違いますよ。いいから剣を下ろしてください」


「だったら、無駄口を叩かないで。殿下に従うと決めた時だけ口を開いて」


「そう言わずに。ソフィーさんがどうしてあの王女様に従うようになったか教えてくれませんか? そうすれば俺の見る目も変わって、パーティーに入るようになるかもしれませんよ」


「それもそう……?」


 ソフィーは顎に手を当て、考える素振りを見せながら言った。


「わかった。特別に話してあげる」


 そう口にすると、彼女は近くにあった椅子に腰掛けた。

 レイピアを手放していないところを見るに、未だ警戒は続けているようだ。


「わたしは昔、貴族だったの」


 ソフィーはそう言って話し始めた。


「でも、お父さまとお母さまが死んで、わたし一人だけになってしまった。お父さまは生前に悪いことをやっていたみたい。そのせいで貴族の爵位を剥奪されて、わたしまでもが後ろ指を指されるようになった。そこに手を差し伸べてくれたのが、殿下だったというわけ」


「あの王女様にも意外と優しいところがあるんですね」


「別にそういうわけではないと思う。レイファ殿下は自分の得になることしかしない人間だから。近くにいたわたしが一番わかってる。多分、殿下はわたしに利用価値を求めて、恩を売った。それだけのこと」


 確かにそっちの方が理解できる。

 レイファと話した時間はそう多くないので正確なことは言えないが、彼女に善性というものが備わっているようには思えなかった。


「それでもわたしは充分だった。周りの人がみんな非難してくるなか、レイファ殿下だけが味方をしてくれた。たとえ、わたしという駒を手に入れたいだけだったとしても、その期待に応えたかった。受けた恩はしっかり返すと決めた」


 ソフィーは真っ直ぐにこちらを見据えると言った。


「だから、わたしは世間がどう言おうとレイファ殿下に付き従うの。殿下が非道な手段を選ぶ人間だとしても、わたしだけは殿下の味方。そう誓うことにした」


 ソフィーはレイピアのグリップを握り直すと言った。


「わたしはレイファ殿下のためだったら、なんでもできる。たとえ拷問であろうとも、必要ならやる。早めに降伏して、殿下のパーティーに入った方がいい。どうせ入ることになるなら、痛みはない方がいいでしょ?」


 その淡々とした話しぶりから、彼女の覚悟が窺えた。


 ソフィーはやれと言われれば、本当に実行するタイプの人間だ。

 レイファがあのような異常者なら、その部下もまたまともではないということだ。

 厄介だ。拷問なんかで屈するつもりはさらさらないが、命あってのダンジョン攻略だ。


 彼女達を逆上させて、殺されてしまえば、フォース達にどう顔向けすればいいのかわからない。

 とりあえず時間稼ぎをして、ソフィーに隙ができるのを待つことにしよう。それくらいしか、今の俺にできることはなかった。






 俺が縛られてから、既に三時間以上経っただろうか。

 しびれかけている手足にどうにか血液を流そうと身体を動かしていると、ソフィーがそれを見咎める。


「動くなと言っている」


「そうは言われましても、キツいんですもん。もう少し緩く縛ってくださいよ」


「そんなことをしたら、逃げ出す」


 だいぶ時間は経ったものの、依然警戒を緩めないソフィー。

 なんとか雑談で気を逸らせないかと試みているものの、なかなか話にも付き合ってくれない。

 忠誠心は本物のようだ。彼女を崩すのは不可能なようだ。


「そろそろ一発痛い目見ないとわからない?」


 それにソフィーはこの膠着した状況にいら立ってきている。

 なかなか折れようとしない俺に対して、攻撃的な手段で解決しようという思惑が透けてきていた。


「でも、王女様にはなるべく手荒な真似はしないように言われているんでしょ?」


 ソフィーに攻撃されては堪ったもんじゃないので止めに入る。

 だけど、彼女はこちらの意にそぐわない姿勢を見せてくる。


「なるべくだから。別に手荒な手段を取らないように言われたわけじゃない。わたしの優先するべき役割はあなたをパーティーに入れること。そこをはき違えてはいけない」


「でも、このまま縛り続けてたら、もしかしたらですけど仲間になるかもですよ。そう切羽詰まって、暴力に訴えかけないでも」


「あなたは仲間になる気はないと言っていた。このまま放置しても、折れない。だったら、ダメ元でいたぶるのも悪くない」


 どうやら限界のようだ。これ以上引き伸ばすのは難しそうだ。

 これから訪れる痛みに耐える覚悟をし始めていると、部屋のチャイムが鳴った。


「鳴ってますよ」


「知っている。レイファ殿下かも」


 ソフィーはこちらを見張ったまま、ドアに近づいていく。

 一秒も視界から外さないところがまた油断ない。


「殿下ですか?」


 そう言ってドアを開けると、そこには意外な人物がいた。


「ノート先輩いますかー?ってあれ? 女の人? もしかしてお取込み中だったですか?」


 場違いなほどに能天気な声。忘れるわけもない。

『迷宮騎士団』のマッピング担当であり、神童と謳われた魔導士、クーリ・ルイソンである。


「女の子とホテルで二人っきりって、やっぱ先輩もやることやってるんじゃないですか! しかも、縄で縛られているってSMプレイですか? 随分マニアックな趣味ですね。僕もそんなのやったことないですよ」


 しかもなんか盛大に勘違いされているし。

 SMプレイじゃないから。完全に監禁されているだけだから。


「ノートくんがSMプレイ⁉ それ本当なんですか⁉」

 物凄い剣幕でドアから顔を覗かせてきた人物がもう一人。

 我がパーティーの聖騎士ロズリアだ。


「まさかそんな性癖があったとは……。だから、わたくしは今まで落とせなかったんですね!」


 納得した表情をするな。違うから! そんな性癖全くないんですけど!

 というか、一体どういう組み合わせなんだろう。ロズリアとクーリって。


 それにどうやって、ここに来るはめになったのかも気になるところだ。

 とりあえず誤解を解くことから始めよう。


「違うから! 連れ去られて監禁されたの! レイファとこの女に」


「やっぱりそうでしたかぁー」


 クーリは朗らかな笑みを浮かべながら言った。


「先輩がうちのパーティーとの約束の時間に来ないからおかしいと思ってたんですよー。寝坊でもしているのかなと『到達する者アライバーズ』のパーティーハウスに呼び出しに行ったんですけど、そこにいるロズリアさんも先輩の行方を知らないときて。何かあったのではと《探知》使ってみたんですよ。そしたら、この部屋にいるときたじゃないですか」


 ナイス、クーリ。さすが俺に出来ることは大体出来てしまう、天才【地図化マッピング】魔導士だけはある。

 こちらの居場所の特定もお手の物ってわけか。


 それにソフィーが『迷宮騎士団』への言伝を許してくれなかったのも、いい方向に働いた。

 言伝が出来ていたら、クーリ達は俺を探そうとしなかったはずだ。


「ノートくんがSMプレイヤーじゃなくてよかったです。いや、別にノートくんにそういう趣味があっても全然受け入れるんですけどね。色々と勉強しますよ。SでもMでもバッチリこなしてみせます!」


 何の宣言だよ。性癖の話はどうでもいいから、早く助けてほしいんですけど。


「先輩も罪な男ですねー」


 クーリまで加わってきているし。ちょっとソフィーも面食らっているからね。


「賑やかしはいいから、助けてくれない?」


「わかりました! この女の子を倒せばいいんですね」


 ロズリアは聖剣フラクタスを召喚する。ソフィーの額には冷や汗が浮かんでいた。


「【聖剣の導き手】っ⁉ どうしてそんな特級スキル持ちがこんなところに⁉ 聞いていた話と全然違う! 『到達する者アライバーズ』の聖騎士は大した功績もない神官上がりの冒険者だと聞いていたのに……とんだ化け物っ!」


【高位鑑定】によって明らかになったロズリアのスキル構成に、ソフィーは臆しているようだった。

 ロズリアも好機と見たのか、光り輝く切っ先を向けながら言う。


「ノートくんを解放してくれるなら、今回はただで見逃してあげます。引くなら今のうちですよ」


「引くわけにはいかないっ。殿下の命令だから」


 ソフィーもここで矛を収めるほど、物分かりのいい人間ではない。

 彼女には彼女なりの引けない理由があった。


「ロズリア、油断しないで。その子、かなり強いから」


「わかっていますよ。ノートくんを捕らえるくらいの実力はあるってことですもんね」


 油断をしていないようで安心した。

 一瞬の隙をついて縄を解くと立ち上がった。


「これで三対一だ。今回は大人しく見逃してくれない?」


 出来ることなら、ソフィーとの戦闘は避けたかった。

 隣の部屋にはレイファやギルベルトが控えている。騒ぎを聞きつければ、彼らもやってくるはず。


 二人が参戦するとなれば、状況は三対三になってしまう。

 そうなると戦闘スキルを持っていない人間が二人いるこちらが不利になってしまう。


 それにいくらロズリアとはいえ、最強の異端審問官であるギルベルト相手には分が悪いように思えた。


「ここで騒ぎを起こせば、王女様にも迷惑がかかるんじゃないですか?」


「そうだけど……」


 ソフィーは判断に迷っている様子だ。視線が俺とロズリアを行ったり来たりしている。


「どうします? 先輩。この距離なら《魔弾(マジックミサイル)》を使ったサインで、僕らのパーティーの人呼べちゃいますけど。念のため救援に来てもらいますか?」


 クーリのこの言葉で、ソフィーは勝算がないことを悟ったようだ。

 構えていたレイピアを下げ、こちらを睨みながら呟いた。


「……わかった。今回だけは見逃してやる」


 今回だけは、か。出来れば、ずっと見逃して欲しいんだけど。

 そう文句を言いたかったが、ここで軽口を言ってもソフィーを刺激するだけだ。

 彼女をむやみに刺激して、戦闘にでもなったら面倒この上ない。


「わかりました。とりあえず、今日は遅いですし、帰りますからね。もうこんな荒っぽいことしないでくださいよ」


 代わりに無難な一言を告げる。

 しかし、当のソフィーはというと。


「保証はできない。レイファ殿下はなんとしてでも、あなたを手に入れようとするはずだから」


 といった口ぶり。全然諦める気はなさそうだ。

 俺はというと、その返答に無言で答えることしかできなかった。






「あの人はどうしてノートくんを捕らえていたんですか?」


 ロズリアとクーリのおかげでレイファの監禁から抜け出すことができた俺は、二人とともにホテルを後にした。


 もちろん、二人はレイファと顔を合わせていないため、どうして俺が捕らわれていたかを知らない。

 理由は説明しておいた方がいいだろう。


「王女のレイファがダンジョン攻略に乗り出したって話は前にロズリアがしていたじゃん。そのレイファに今日、急に呼び出されたんだよ」


「えっ、あの暴虐王女にですか?」


「うん。それでホテルに着いたら、いきなり私の作るパーティーに入りなさいって言われて。断ったら拘束されたんだよ。『到達する者アライバーズ』を抜けて、私の作るパーティーに入ることを了承するまで逃がさないって」


「それはまた、荒っぽいやり方ですね……」


「本当だよ。今日の一件で反省して、諦めてくれるといいんだけど……」


 そうはならないだろうなという予感を胸に秘めながら口にする。

 ソフィーが去り際に言っていた通り、レイファは一度失敗しただけで諦めるようなタマじゃないだろう。


 レイファが諦めないとあれば、その配下であるソフィーも動いてくることは確実だ。

 もう一度、彼女らと矛を交える可能性も出てくる。その時のために何か予防策を立てておかないといけないかもしれない。


 俺がそんなことを考えていると、クーリが意外なことを口にした。


「僕、そのレイファって人と会ったことありますよ」


「えっ、そうなの⁉」


「はい。その人がこの街に来たばっかりの時でしたかね? 一度呼び出されて会いました」


「一体、何を話したんですか?」


 ロズリアの問いかけにクーリは答える。


「【地図化マッピング】のことを中心に聞かれましたね。スキルの特徴とか、どう活かしているかとか。僕にはあんまり興味はなさそうでしたね。その頃から先輩を狙っていたんでしょうか?」


 既に情報収集は済ませていたということか。用意周到なことだ。

 やはりレイファは侮れない相手なようだ。


「いやぁー、あのレイファさんって王女も見る目ありますね。ノート先輩に目をつけるなんて。さすがって感じです」


「いや、どこに感心しているんだよ……」


 もしかしてあのレイファ相手でも、こんな調子で話していたんじゃないよな?

 能天気な後輩のことが少し心配になってきた。


「それでノートくん、一体どうするんです? あの王女さんがまた襲ってきたら」


「どうしようか……」


「もう一度捕らわれても困りますし、もしよかったらわたくしが警護しましょうか? 朝から晩まで、いや寝る時も一緒に。ずっとノートくんと居られますし、一石二鳥のいい案じゃないですか、これ?」


「一度あの二人の気配は覚えたから近くにいたらすぐにわかると思うし、襲撃さえ察せれば逃げることも出来そうだから、一人でも大丈夫だよ。気持ちだけ受け取っておくから」


「残念です。せっかく名案を思いついたと思いましたのに……」


 しょぼんとするロズリア。

 まあ、四六時中一緒に行動するってのは現実的じゃないしね。


 俺は『迷宮騎士団』の二軍パーティーとともにダンジョン探索をしなくてはいけないし、ロズリアにもエリンと一緒にダンジョンに潜って金を稼がないといけないっていう役目がある。


 レイファが次も同じ手で来るとは限らないし、彼女の襲撃を配慮してパーティー活動が疎かになるのも避けたかった。


「一応、他の仲間にも言っておくか。レイファから襲撃があったこと」


「そうですね。エリンさんなんか、聞いたら怒って飛び出していきそうですけど」


「そうならないようにロズリアは止めてね」


「なんでわたくしの役目なんですか。飼い主のノートくんがちゃんと見守ってくださいよ」


「エリン先輩ってパーティーでどんな扱い受けているんですか……」


 ちょっと引いた目で見てくるクーリ。

 これは違うからね。冗談みたいなもので、ちゃんと仲間として扱っているからね。

 狂犬みたいなところがあって、制御が効かない時があるだけで……。


「とりあえず今は注意だけして、何か来たら対処するって感じですかね」


「そうだね。なんか対策を思いついたら、俺の方でもなんとかしておくけど」


 一応はそう言っておくが、何も起こらないのが一番いい。

 これから面倒なことが起こらなければいいのにと願いながら、帰り道を歩いていくのであった。





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