前へ次へ
51/138

エピローグ&プロローグ

 きっとあそこで終わらせていればよかったのだ。

 20階層を攻略して、首切りと戦って、平穏なパーティーハウスでの生活が返ってきた時点で。

到達する者(アライバーズ)』も、ダンジョン探索も、冒険者も、全部終わらせておけばよかった。

 そうすれば、俺達は幸せな日常の中で生きられた。


 それなのに、俺達は間違った選択をしてしまった。

 悔やんでも悔やみきれない、人生最大の後悔だ。


 俺達は気づかないうちに、調子に乗っていたのだろう。

 自分達の実力を過信していて、決して失敗しないものだと。

 壁にぶち当たっても、いつかは乗り越えられると。


 しかし、人生というものは誰に対しても平等に残酷だ。

 残酷なまでに平等なのだ。

 永遠に幸せが続くことなどなく、誰に対しても無慈悲に不幸が降り注ぐ。


 そして、俺達にもその番がやってきたのだ。

 分不相応な夢を抱いて、その夢に近づきすぎた罰を与えられる瞬間が。


 もし、時間を巻き戻せるならば。

 何度も何度も何度も考えた。

 でも、そんな横暴な願い、叶うはずもない。


 この世界に本当に神がいるのなら、時間さえ巻き戻してくれるのだろうか。

 それとも、神ですら不可能な願いなのだろうか。

 わからない。そんなこと知らない。知るわけがない。


 だけど、一つだけ。一回だけ人生をやり直せるなら。

 過去の自分に、俺はこう伝えよう。


 ――絶対に21階層に潜るなと。


前へ次へ目次