第18話 『到達する者』の聖騎士
金銀、魔道具、叡智。
地上では手に入れられない宝の数々を秘めている閉鎖空間。ダンジョン。
誰も最奥まで到達したことのないその未開の地は、人々を興味という見えない力で引き寄せる。
夢や希望、はたまた欲望や打算など、大小、公私を問わない様々な理由で冒険者達はダ
ンジョンに挑まんとする。
そのような無数のダンジョン攻略を目論む冒険者達の中で、最も偉業に近いとされているパーティーの一つが俺の所属する『到達する者』だ。
しかし、当のパーティーは現在深刻な問題を抱えていた。
パーティーメンバーの意見が二分して、対立が起きてしまっているのだ。
ある一人の女性を巡って。
その一人の女性というのは、現在俺の真横に立ち、腕に手を回して麗しげな表情を浮かべているロズリア・ミンクゴットであった。
「ねえ、わたくしがパーティーに加わっても構わないですよね? ノートくん?」
密着する彼女の濃い藍色の髪は俺の頰を撫でてくすぐったいし、それに何より肘を包み込む胸の感触に口元を緩めそうになる。
――いや、騙されるな、俺。
意識をしっかり保とうと首を振る。
「とりあえず離れよっか。じゃないと話が進まないし」
このロズリアという女性をパーティーに入れるかどうかで、『到達する者』は揉めている最中なのだ。
彼女の色香に惑わされて鼻の下を伸ばしている場合じゃない。
一応断っておくが、彼女の実力が足りないから、パーティーに入れるかどうかを揉めているわけではない。
【聖剣の導き手】という最強クラスのスキルを保有する彼女の力量は、間近で目撃した俺を震え上がらせるほど信用に足るものだ。
では、何がいけないのかというと、彼女の性格というか性質による。
「嫌ですよ。ノートくんがOKしてくれるまで離れません」
「俺がOKしないんじゃなくて、ロズリアがそういう態度取っているから他のやつらが反対しているの!」
なんというか……ぶりっ子?
違うな。男タラシっていうの?
男を誘惑して破滅に導く、小悪魔的な性質なのだ。
関わったパーティーを男女関係のもつれによって必ず壊すといういわくつきの要注意人物。
それがかわいらしい見た目をした彼女の本性である。
さらに不幸なことに、俺は彼女の現在のターゲットに選ばれてしまったようだ。
以前、彼女を騙したり、山賊達と無理やり戦わせたりと散々恨みを買う行為をしたからなのだろう。
俺はロズリアに謎の猛アピールをされている最中だった。
彼女は自分がいるからパーティーに入ると言って聞かない状態にある。
別に俺としてはロズリアの加入に反対していない。
もちろん、彼女の豊満な胸の感触に気持ちがなびいているからではない。
ロズリアが本当に自分のことを好いているとは微塵も思っていないし、おそらく、俺になんらかの復讐を企てているのだと踏んでいる。
だけど、それを差し引いても、彼女の実力には目を見張るものがあるし、このパーティーに加えた場合のメリットが多いと判断していた。
パーティーには俺と同じような考えを持つ人ばかりがいるわけではない。
ロズリア加入反対派筆頭、銀髪ツインテール女魔導士のエリンが勢いよく手を上げる。
「こんなトラブルメーカー入れるなんて有り得ない! 絶対になしよ!」
彼女は思ったことをあけすけに言うタイプの女の子である。
口調がキツイので、度々諍いが起こることもあるが、根は良い少女だ。
「ノートも何だらっと情けない顔でにやついちゃってるのよ」
前言撤回。ただ性格がキツイだけのムカつく少女である。
「ネ、ネメも反対です……」
おずおずとか細い声をあげてきたのは、うちのパーティーの神官、ネメ・パージンである。
身長が俺の鳩尾ほどしかない彼女はとても幼く見えるが、これでも22歳。立派な年上のお姉さんだ。
以上が反対派の二名。うちのパーティーの女性陣であった。
対して賛成派筆頭はこの男。
「いや、ロズリアちゃんは絶対に入るべきだ! 普通、こんなかわいい女の子入れないわけないだろ⁉」
欲望に忠実という言葉がぴったりな男、フォース・グランズ。
『到達する者』のリーダーである。
こう威勢のいい発言をしてはいるが、彼はロズリアに騙されたことのある被害者でもある。
この前振られたばっかりのはずなのに、怖気づかない彼の態度に呆れを通り越して尊敬まで覚えている最中だ。
「実力は確かだと思うし、入れていいかと……」
かく言う俺も賛成派の立場を採らせてもらっている。
別にフォースみたいに下心とかないからね……本当に……。
そんな心のうちの弁明など届かず、女性陣二人は冷たい視線を送ってくる。
どうやら彼女たちは、俺とフォースがロズリアに絆されていると勘ぐっているらしい。
「ジンはどうなのよ!」
エリンが、残り一人のパーティーメンバーである青年に尋ねる。
彼の名前はジン。
路頭に迷っていた俺を『到達する者』に誘ってくれた張本人であり、冒険者としてのノウハウを教えてくれる頼もしい恩人だ。
「どっちでもいいかな。みんなの意見に任せるよ」
彼は先ほどから中立の立場を採って、賛成派、反対派両方からの追及を避けていた。
こういう時のどっちでもいいってズルいよな……。
「はい! わたくしは賛成なので、三対二でわたくしの加入が決まりましたね! ぱちぱちー」
自分で効果音をつけながら拍手をするロズリア。
フォースもちゃっかり拍手に加わっていた。
というか、俺達のパーティーの決め事に自分の票を入れんなよ……。
まだロズリアは部外者なんだから……。
へらへらとマイペースな振る舞いを見せるロズリアに、エリンの我慢は限界なようであった。
こめかみに青筋を立てて睨んでいる。
流石にこのままではまずいと思ったのか、ジンが割って入っていった。
「まあまあ、落ち着いてみんな。それじゃあ、一日だけロズリアをお試しで加入させてみるってのはどうかな? それでダンジョンに潜って様子を見てみようよ」
ヒートアップしていない彼ならではの意見であったからか、この提案にエリンも渋々乗ることにしたようだ。
ツインテールの少女は怒りの矛を収めて引き下がった。
やっぱ中立派って重要だよな、って改めて感じた瞬間だった。
一瞬、ズルいとか思っちゃってすみませんでした。
「久しぶりのダンジョンですが、悪くない雰囲気ですね!」
両手を開き、深呼吸をしながら吞気な発言をしているロズリアにエリンは少し機嫌を悪くしたようだ。
むっとした顔を浮かべながら悪態をつく。
「あなたがいなかったら雰囲気ももっといいんでしょうけどね」
「どうしたのですか? そんなにカリカリしちゃって。エリンさんももう少し、この綺麗な空気に心を落ち着かせたらどうです?」
「あ、あなたね……」
エリンの嫌味をものともせず、ロズリアは自分のペースを貫き続けていた。
その姿に何を言っても無駄だと悟ったのか、口の悪い魔導士は押し黙ることを選んだようだ。
ロズリアって本当、肝が据わっているよな……。
疎まれているとわかっているはずなのに、このパーティーに入ろうとしているわけだし。
俺達の現在の状況はというと、ピュリフのダンジョンの2階層まで来ているところだ。
どうやらロズリアは街の男冒険者達を引き連れて4階層までは訪れたことがあるらしい。
そうなるとこの六人の中で一番ダンジョンの進度が低いのは俺だ。
パーティー加入初日に、フォースらに連れられて1階層を突破したきりである。
ダンジョンは、訪れたことのある階層には転移結晶によってワープできるが、未踏階層にはワープは行えない。
ということで、パーティーは俺の進度に合わせて進むしかなく、こうして現在2階層に来ているわけだ。
2階層は薄暗い洞窟様の1階層と打って変わって、緑が深い樹海であった。
ロズリアが悪くない雰囲気というのも無理はない。
巨大な木々達が所狭しと佇み、人間のちっぽけさを強調している。
湿っていて、踏んでも足音が立たない腐葉土は俺達を自然に誘うような感慨さえ想起させる。
頰を微かに濡らす生暖かい霧は、俺達を包み込んでいた。
「それにしてもちゃんとした鎧とか持っていたんだ……」
ロズリアの見慣れない鎧姿に感心の言葉を寄せる。
俺が見たことのある服装はデート時の私服姿か最初に出会った時の神官服である。
彼女はこのピュリフの街ではネメと同じ神官として冒険者をやっていたらしく、現在彼女が立候補している聖騎士の戦闘職姿を見るのは初めてのことであった。
彼女が聖騎士をやるという言い分には少しの不安はあったが、その凜々しい姿を見ているとその考えは間違えだったと思ってしまう。
どこからどう見ても、彼女は立派な聖騎士そのものだ。
「お金だけは余裕があったんですよ。この街の冒険者さん達はたくさんプレゼントしてくださりますし」
それ貢がせてるだけじゃん!
一瞬でも感心しちゃった自分が馬鹿みたいだったわ!
よくよく見てみると鎧には傷一つついていなかった。新品なのだろう。
彼女はこのパーティーに入るためにわざわざ高価な鎧を新調したようだった。
「ロズリアちゃん! オレもプレゼントしたよね? 覚えてる? あの高い杖? 大事にしてる?」
フォースが思い立ったように口を挟んでくる。
確かにそんな話もあったな……。
懐かしんでいる俺を余所にロズリアはフォースを一蹴した。
「えっ、売っちゃいましたよ。この鎧買うために……」
「噓だろ……あれ高かったんだよ……」
「噓じゃないですよ。ノートくんと冒険するために売っちゃいました!」
こればかりはフォースが気の毒なようにも思える。
自業自得な感じもあるけど……。
っていうか、全部俺のせいみたいな言い方をしないでくれ、ロズリア。
フォースが憎しみに満ちた目でこっちを睨んできているから……。
「ほら、ふざけてないで。モンスターが来ましたよ。三体ですかね? まだ遠くで見えないですが、正面から飛んできています」
都合の良いタイミングでモンスターが《索敵》に引っかかってくれた。
これでフォースの意識が逸れてくれるだろう。
「ロズリア、私達のパーティーに入りたいんだったら、それくらい一人で倒せて当然でしょ? 手伝わないから一人でやりなさい」
辛辣な言葉を投げかけたのはエリンであった。
彼女の言うことにも一理ある。
今回の探索はロズリアの実力を測りに来たのだ。
エリン達に彼女の強さを見せつけなくては意味がない。
だけど、命があってこそのものなのでジンもフォローを入れる。
「難しそうなら、もちろん手を貸すからね」
だけど、その優しい提案にロズリアは首を横に振る。
「大丈夫です。エリンさんは普段通り、ぽけーっと眺めているだけで構いませんよ!」
「なんで私が普段ぽけーっと眺めている前提なのよ……」
エリンの文句はどこへやら。
言葉を聞き終えずして、ロズリアはモンスターが来るであろう方向へ向き直った。
「普段の私ってそんなにぽけーっとしている……?」
えーと、エリン。
わざわざ小声で確認してこなくても大丈夫だから……。
何かエリンをフォローしようかと思ったが、モンスターが交戦寸前まで迫ってきていたのでやめにした。
前を向くと同時に、木々の隙間からモンスターが現れる。
見たことのない種類のモンスターだ。形は蜘蛛に似ているのだろうか?
だけどあれは蜘蛛じゃない。
蜘蛛はあんな風に薄い翅を羽ばたかせて飛ぶことはないだろう。
飛行する昆虫達にもう一つ特徴的な点があるとすれば、彼らが抱えている黒い球体だ。
彼らは八本の腕で大事そうにそれを抱えながら飛んでいる。
そのまま襲いかかってくるのかと身構えていたが、昆虫達はそのまま俺達の頭上を通り過ぎようとする。
しかし、気を抜く俺を咎めるかのように彼らは球体を落としてきた。
「《不落城壁》ッ!」
ロズリアが叫ぶと、六人を取り囲むように光の城壁が現れる。おそらく彼女が唱えたスペルだ。
その直後、俺達を襲ったのは爆風――いや、爆風が広がる光景であった。
その段階でようやく、昆虫達が落下させた球体からの爆発をロズリアが防いだのだと理解した。
爆発によって辺りの樹木はなぎ倒され、光り輝く城壁の周辺は更地になっている場所もある。
なんという威力だ。これがダンジョンのモンスター……。
並の冒険者なら一撃で屠れるほどの攻撃である。
地上のモンスターとはレベルが違う。
更に驚くべきはそれを防いだロズリアだ。
すぐさま攻撃の態勢に移っている彼女もまた並の冒険者ではない証拠だ。
「《光剣――」
ロズリアの周囲に昆虫達と同じ数だけの剣が現れる。
聖剣とはまた違う――ただのスペルで象られた光の剣。
「――射出》!」
その掛け声とともに、昆虫達に三本の線が伸びた。
それは既に通り去った光の剣の軌跡。
昆虫達は貫かれると同時に、生命としての機能を失い、地へ落ちていった。
張り巡らした《索敵》によっても、目に映る光景からも、もう死んでいるのは明らかだった。
「どうでしたか? わたくしの戦いぶり? これで加入できますか?」
「俺に訊いても意味ないでしょ……。ロズリアが強いのは知ってるし……。それより反対しているエリンとかに訊いたら?」
エリンに目を向けると、彼女は気まずそうに目を逸らした。
「ぽけーっとしていたせいで何もわからなかったわ」
なんだよ、その負け惜しみ……。
ぽけーっとしてる設定ここで使うんだ……。
「それじゃあ、わたくしの『到達する者』加入は決定ということでいいですよね!」
2階層の攻略を経て、結局反対派の面々も渋々ロズリアの加入を認める運びとなった。
そもそも、『到達する者』にとって新メンバーを見つけることは必須だった。
前衛が足りていない現状ではダンジョン攻略を進めるのは難しい。
誰かの加入は必須であり、実力的にもポジション的にもロズリアが欲しい人材像に合致していた。
しかし、彼女にまつわる議論の中心はトラブルを呼び起こしそうな性格についてである。
最後まで反対していたエリンが悔しそうに口を開いた。
「いくら私達があなたの加入を認めたからって、問題を起こすようなら即脱退させるわよ」
「問題ってなんでしょう……?」
不思議そうに首を傾げながら、俺の手を摑んでくる。
「それ! そういうところよ!」
「それとは……?」
「あなた絶対わかっててやってるでしょ! 男を誑 たぶら かして、とっかえひっかえするところよ!」
「大丈夫です! わたくしはノートくん一筋ですから」
「またまたー、冗談言っちゃってー」
ロズリアの言葉に反応してきたのはフォースだ。
彼は笑いながら彼女の肩に手を置こうとするも――。
「すみません。お触りは禁止です。フォースくんに近づくことは約束に違反しますし、そもそも恋愛対象ではないです。ごめんなさい」
ロズリアに手を弾かれて、フォースは驚きを隠せないようだった。
愕然とした表情を見せている。
肩を落とした彼の姿に思わず、爽快感と優越感を覚える。
ざまあみろって言ってやりたい気分だ。
フォースには散々迷惑をかけられた。
パーティーを抜ける云々はもちろんのこと、自分にいい感じの女ができたとわかった途端、手のひら返しで嘲笑われたりもした。
これくらいの報いは受けるべきだろう。
ロズリアがなんの意図があって俺に近づこうとしているのかは未だに不明だが、この気持ち良さの前ではそのような懸念はどうでもよく感じてしまう。
俺の漏れ出たドヤ顔に辟易したのか、エリンは頭痛でも襲ってきたかのように頭に手を当てていた。
「もう……勝手にしてなさい……」
「ノートくん! 勝手にしていい許可もらえましたよ! お言葉に甘えて勝手にしましょう! 疲れたのでマッサージでもしてくれませんか? できればノートくんの部屋で……」
「待って! やっぱり勝手にするのはなし! そんないかがわしいこと、この家でさせるわけないでしょ!」
「はて……マッサージのどこがいかがわしいのでしょう……」
首を傾げ、純情そうな瞳をエリンに向けるロズリア。
この表情、確信犯だ。
わざと目の前の怒りに染まる少女をからかっている。
「やかましいわよ! このビッチ! 何、私が真のエロ女みたいに思われるよう誘導してるのよ!」
「えっと……わたくし……処女ですけど……。男の人とエッチもキスもしたことないですし……ビッチではないかと……」
「は⁉」
思わず声が出てしまった。
この状況で、誰にでもわかるような超ド級の噓を放ってくるとは……。
驚きの声をあげちゃったことが恥ずかしくなって辺りを見回したが、俺以外の人も同じように声を出してしまったようだ。
皆、口を開けたり押さえたりしていた。
「わたくしは敬虔なセシナ教徒ですよ。そのような自分が結婚する気もない男の人とそういう行為をするわけがないでしょう。ネメさんならわかりますよね?」
同じセシナ教徒であるというネメは気の進まなそうに頷いた。
「もしかしたらロズリアの言っていることは本当かもしれないです……」
「えっと……ネメ……。セシナ教って結婚する相手と以外だったらそういうことしちゃいけないの?」
エリンの問いに、ネメは「そうです!」と大きく頷いた。
しかし、問いかけた本人は訝しむような目をネメに向けていた。
「ということは『ネメは大人な女性なので恋愛経験豊富なのです! 例えば――』って昔語ってきた、あやふやで辻褄があってないエピソードはやっぱり捏造だったのね」
「うぐっ」
汗を噴き出しながら、目を泳がせるネメ。
これは恥ずかしいな……。
聞いてるこっちまで辛くなってくるパターンのやつだ。
「何が、『ネメがエリンくらいの歳の時はモテモテだったです。たくさんワンナイトラブもしましたし、エリンもそういう経験をした方がいいです!』よ! あんなに上からの目線で語ってきたのに、噓だったら承知しないわよ!」
やめてあげて!
もうオーバーキルだから!
ネメの心は既に折れているようだ。
恥とかそういう感情の概念を捨てた、無の境地の瞳で応える。
「全部作り話です。ごめんなさいです」
誰もがいたたまれなくなって目を逸らす。
彼女もまたロズリアの被害者の一人なのかもしれない。
って違うか。完全に自分で蒔いた種だわ、これ……。
「ネメさんの件はともかくですね、これでわたくしが処女だと証明されたわけですね」
この空気はまずいと思ったのか、ロズリアが助け舟を出してくれた。
「まあ……」
この状況だし、エリンも認めるしかなかったようだ。
「ビッチとか言ってごめんなさい」
「いいですよ、別に。あっ、でも、ノートくんにならわたくしの初めてを……」
えっ……本当に⁉
ロズリアの口車に乗りそうなところをエリンに見咎められる。
「何、騙されそうになっているのよ……」
「だ、騙されそうになってないし……」
完全な噓である。
はい、正直に言うと騙されそうになりました。
「ほら、こいつを入れるとろくなことにならないわよ。もう、あれね。これから『到達する者』ではパーティー内恋愛とか禁止ね。もちろん、この女とのエッチも禁止だから」
明らかに俺へと強調するように、言ってくるエリンであった。
どれだけ俺への信用がないんだよ……。
流されそうになった俺も悪いけどさ。
「おい、待ってくれ!」
今度はフォースの番だった。
彼は空に手のひらを突き出し、待ったをかける。
「パーティー内恋愛禁止はないだろ! そうしたら、オレと、ロズリアちゃんは付き合えないだろ!」
「そもそもその可能性自体がないですね」
さらっと残酷な宣言をするロズリア。
容赦ない言葉にフォースは崩れ落ちた。
なんなんだ、この状況……。
ジンに事態の収拾を目線で求めるも、首を振って断られた。
俺はロズリアをパーティーに入れたことに関して、少しだけ後悔していた。