巨大恐竜の猛威
一行は恐竜を見上げて思った。
クラビは言った。
「確かにこれまでの敵と比べてあまりにも巨大だ。だが俺達は後一か月でサブラアイムを壊滅させなきゃいけないんだ。どんな相手でも逃げる訳に行かない」
恐竜は上からうまそうに一行を食欲むき出しで狙っている。
「なるべく遠くから狙おう」
ゾゾとミッシェルが先に出た。
「俺が攪乱して様子を見ます!」
「じゃあ俺も行くよ!」
猛スピードで恐竜の足元に近づく二人。
巨大な後ろ足が立ちふさがる。
なるべくゾゾは攪乱する為、予測不能な動きをして見せた。
ならばとミッシェルも
「俺はもっと予測不能に動くぜ」
と更に複雑に動いて見せた。
足元の二人をじろりと、五月蠅そうに見る恐竜。
後ろ足を不意に様子見か短気か上げる恐竜。
「おっと!」
ゾゾは踏まれない様素早く身をかわした。
そしてもう片方の後ろ足を出そうとする瞬間を狙った。
「両足同時には動かせないはずだ!」
ゾゾはジャンプし、動かない右の脛の辺りを切りつけた。
ミッシェルは動かしている踏みつける方の左足を素早く切った。
二人は切るなり大急ぎで戻って来た。
恐竜の足からほんの少し血が出ている。
ゾゾは報告した。
「あいつ、皮膚自体はそんなに硬くないですが、筋肉が相当強固です。だからあまり深く傷つけられなかった」
「それにあの筋肉自体が強化されているようだ。アンドレイ達が何かしたのかも」
苛立ったのか恐竜は今にも噛みつかんとぐわりと雪崩の様に顔を前に素早く降ろして来た。
皆は間一髪当たらなかったが危なかった。
それだけでなくあまりの迫力とスピードに皆動揺した。
「でか物だけど瞬発力が凄い、獲物の捕獲速度が.首や背中の筋肉も発達してるようだ」
ジェイニーはクロスボウで攻撃する。
確かに刺さったがあまり効いていない。
シヴァは言う。
「良し! 足元を凍らせてやれ!」
クラビ、マークレイ、シヴァはアンカーから氷魔法を出し恐竜の足元を固めようとした。
ジェイニーも氷魔法を出した。
恐竜は足元が固められているのに気づき慌て始めた。
もがいて足を氷から外そうとする。
「皆頑張れ! 足を凍らせてしまえば大分有利になるぞ」
クラビは檄を飛ばした。
しかし恐竜の苛立ちは想像を超えた。
足が凍り付きそうなのを必死に破壊しようとする。
「くそ! 抑えきれない!」
引き続き氷魔法を当て続ける一行。
しかしバリーンと言う音と共についに恐竜は足の氷を暴れて砕いた。
これで恐竜の狂暴度が上がった。
食ってやろうと凄まじい凶暴さで地面の一行に口を開けて迫る恐竜。
マークレイ、クラビは地面に顔が付く程伏せてぎりぎりでかわした。
その間尻尾を唸らせる。
「あの尻尾に当たっても一大事だ」
「皆、一旦距離を取れ!」
ミッシェルは前に出た。
「ミッシェルさん!」
「ぐうう!」
ミッシェルは金縛りで恐竜の動きを止めた。
「皆、こいつはきつい。速く逃げるんだ」
しかし、ゾゾが逃げ遅れころんだ。
「あっ!」
ミッシェルの金縛りが解けた。
恐竜は真下のゾゾを踏もうと右後ろ足を思い切り上げた。
「ゾゾ!」
「うわああ!」
何とそこにクラビが追い付き恐竜の足を受け止めようとしたが二人共踏みつけられた。
「クラビ‼」
皆は絶叫したが何とクラビは下から踏もうとする右後ろ足を両手で支えていた。
「ええ? あれは超怪力のスキルか?」
「馬鹿な、俺のとは次元が違う」
皆は騒然となった。
しかしマークレイは気づいた。
「おっと、俺が助けに行く!」
ボジャックも足の下に行きクラビと共に支えた。
「俺も行く!」
「俺もだ!」
ミッシェルまで下に入った。
「皆!」
マリーディアとジェイニーは叫んだ。
「何とか俺達の力で足をひっくり返すんだ」
「そ、それしかないのか!」
「前足を上げている為バランスが悪くなってるはず!」