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動物達との戦い二

「はああ‼」

 ミッシェルは金縛りでサイの動きを止めた。


 ダメージを受け更にどう猛さに磨きがかかっていたサイの動きがピタリとやむ。

 勿論ミッシェルの体力等から時間制限はある。


 マークレイは再度両手の力だけでサイをもちあげようとした。

「うおおお! 超怪力レベル五だ‼」


 本当にサイをリフトアップし投げ捨てた。

 投げられないサイにはかなりのダメージだろう。


 ボジャックも感心した。

「俺のスキルより全然すげえ、どんな努力をしてるんだ」

 マークレイには「戦いの天才レベル四」と言うスキルもあった。


 ミッシェルは叫んだ。

「もうそろそろ限界だ! 止めを!」

「うおおお!」


 マークレイはダウンしたサイに駆け出し、剣を持っていない空いた手に光を集めた。

「光閃掌!」


 渾身の光閃掌を叩き込んだ。

 大分弱ったサイに今度は剣を叩き込む。


 これが致命傷となった。

 サイはぐったりした。


 シヴァとゾゾはゴリラ二匹を追い込んだが、致命打がない。

 シヴァはアンカーを射出しゴリラの足に巻き付けた。


 力はゴリラの方が上だが、アンカーを使っている時はアンカーの魔力が宿りパワーアップする。

 ゴリラをアンカーで足から持ち上げ空中でくるくると回し放り捨てた。

 

 サイの時と同じ様に動物は投げられる事がない為これはかなり効いた。

 ゾゾは攻撃はあまり喰らわなかったが苦戦していた。


「何てタフさだ普通のゴリラと訳が違う。目つきや凶暴さもダメージを受け逆に上がっている。闘争心、精神、体力全てゴリラよりアップしてる」


 しかしゾゾは怒りをなおもむき出しにし渾身の力で殴って来るゴリラの攻撃をかわし心臓を一突きした。

 これが致命打になった。


 ボジャック達も牛を倒した。

「ああ、手強かった。今まで大人しかった動物達が強敵になった」


「レベル三十の俺達が苦戦するんだぞ。普通の旅人なら簡単にやられてしまう。住みにくい国になりそうだな」


 クラビは言う。

「そんな事はさせられない。度重なる事件で国民の不安が凄く大きくなってるんだ。戦争になる事も避けないと」


 ベルスは言う。

「急ぎたいところだが、動物退治の任を預かっている以上、早道せずやっつけながら行こう。それが旅人を救う事になる」


 そしてまたしばらくすると、今度は野犬三匹と猿四匹が目つきが変わって襲い掛かって来た。

 

 マークレイは言った。

「落ち着け、所詮は犬と猿だ」


 しかし素早さと凶暴さが大幅にアップしていて苦戦した。

 しかも粘り強く、切ってもゾンビの様にまた向かって来るのだ。

「犬や猿がこの強さかよ」


 デュプス王の間に騎士は報告に来た。

「各所で動物が暴れ人を襲う被害がますます増えております」

「このままでは最悪人の住めない国に」


 デュプス王は厳命した。

「何としても原因を究明し防げ」


 一方別の平原で調査依頼を受けたデュプス兵士達は偶然変装したサブラアイム兵達が牛らを注射で薬を与えて野に放そうとしている場面に出くわした。


「何をやっている!」

 しかしサブラアイム兵は涼しい顔で向かって来た。


 更に牛もすさまじい勢いで向かって来た。

 これに戸惑い面食らったデュプス兵はやられてしまった。


 また別の場所で牧畜を営む男性の飼い場に謎の男が侵入した。

 これに気づいた男は抗議したが謎の男はにやりとして牛を放つと男は体当たりされたままずっと押され、荷台に激突して死んだ。


 謎の男に化けたサブラアイム兵はにやりとして去った。


 アンドレイは城で作戦の成り行きを見ていた。

「クラビ達はもうすぐ進軍してくるが、その道に兵でなく動物やモンスターを主にして置く。奴らは大分強くなっていて兵では逆にやられる危険性がある。そこで動物を布陣にしくのだ。これはデュプス国民の生活を狂わせやがて国が亡ぶ程の打撃を与えるだろう。狩りも牧畜も出来なくなり生態系も変化するだろう」


 その後クラビ達は進んで行ったが少し動物がいなくなった。

「この辺は動物は少ないのか?」


 ミッシェルは言った。

「例えば恐ろしい動物の住処が近くだと、弱い動物は皆逃げてしまうんだ。予感が当たってなければいいけど」


 すると地震の様なずしずしと言う音が聞こえてくる。

「これ地震? それともゴリラや像の群れ?」


 しかし当たっていなかった。

 そこに来たのはゴリラなど遥かに上回る十三メートルはある上背、巨大な顔と口、体重を支えるたくましく長い後ろ足と長い尻尾を持つ爬虫類だった。


「え……?」

「これ、ドラゴンの一種とか?」

「ち、違う、これは遥か古来に生息した『恐竜』だ」


「恐竜⁉」

「な、何でこんな所に?」


「恐らく、アンドレイが生き残りを捕獲したか魔界とかから呼んだかどっちかだろ」

「こ、こんなでかいのに俺達がパワーアップしたと言ってもかなう訳」


 クラビは言った。

「でもこいつをここで倒さないと、ここを通る旅人が確実に殺される。いや兵でさえ」


 ベルスも言った。

「正直怖いぜ。でも俺達は旅人の邪魔をする怪物討伐を仰せ使っているんだ」


 

 


2、3話に足りなかった所を追記しました。

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