前へ次へ
97/223

動物達との戦い

 スタグラーは結局、去った。

 何とも言えない沈黙。


 勝利の爽快感よりそれが大きい。

 皆釈然としない雰囲気だ。


 ボジャックとゾゾはスタグラーの姿が見えなくなってから言った。

「どう言う捉え方したらいいか分からない」

「復讐と逆恨みですよね、つまり」


 ミッシェルは言う。

「あいつは大勢の人達に親と共に迫害されたんだろう。その恨みの感情を同じ人間として否定する事は出来ない」


 ボジャックは別の見解を言った。

「だけどやはり逆恨みに近いよ。迫害とかしてない善良なデュプス教の信者の人も要するに敵だと思ってる訳でしょ」


 シヴァは言った。

「アンドレイの様に悪人然としてなくてそれが正義と思っていてかつ開き直ってもいるような考え方だ」


 マリーディアは言った。

「これまではよりクラビの能力を引き出すために加減をしながら相手をしてた。そして多分これからも」


 フリオンは言った。

「アンドレイを倒すにはクラビの力を限界まで上げなければならないわ。その過程でクラビが本来の人格を失って、スタグラーに利用されちゃうかも」


 ボジャックは聞いた。

「それは防げないのか?」


「ものすごく強い力のレベルでの話だから私には答えられない。ノーズランド神殿で神様に会えば何かわかるかも」


「じゃあ、行こう、近いし」

 そして一行はもう一つ大事な事を思い出した。

 

それは気絶したマークレイを見ての事だった。

「あ……」


 皆気まずくてとても口に出せなかった。

 しかし思っている事は皆同じだ。


 何で、マークレイが激しくクラビを憎んでいるんだ。

 理由がないじゃないか。

 皆こう言いたかった。


 ミッシェルはマークレイを担いだ。

 勿論マリーディアも何故なのか分かっていない。

 そして一旦皆城に戻った。


 再度一行は城に戻り王に謁見した。

「町の真ん中に攻め込んで来るとは」


 家臣が言う。

「宣戦布告の様な物です」


「我々が戦いを避けられない様に追い詰めているのか、しかも国民も許せないと言う声が多く挙がっている」

 クラビは言った。

「思い上がりかもしれないけど、僕達に一か月下さい。何としてもアンドレイを倒して見せます。その為これからノーズランド神殿に向かいます」


「そうか。我々が戦争をするか決断するのは1か月が限度だろう。しかも国を攻撃されたからでなくアンドレイの圧政からサブラアイムの人々を助けた方が良いと言う声が多く挙がってもいる。おっと話は変わるが皆にここで最高装備を与えよう」


「ボジャック君とマークレイ君には『雷鳴の剣』『大地の神の鎧』を」

 ボジャックは喜んだ。

「ありがとうございます!」


 マークレイは辛く気まずそうだった。

「あ、ありがとうございます」


「マリーディア君には『星竜の剣』『聖騎士の鎧』を」

「ありがとうございます」

「ゾゾ君とシヴァ君には『疾風の剣を』を」


「ミッシェル君には『特殊金属鎖帷子』スピードを落とさず高い防御を誇る」

「ジェイニー君には『魔法のクロスボウ』腕のない者でも魔法力で命中率が上がる」


 皆かしこまった。

「では騎士を何人か護衛に付ける、ノーズランド神殿に急いでくれ。ここから三キロ程だ。護衛にはベルスが行く」


「宜しくなみんな!」

 ベルスには昔の少しひねくれた感じが随分薄くなり、色々あって明るく声が大きいイメージになった。


 騎士の一人が言った。

「その事ですがアンドレイの『動物狂暴化計画』により草食動物が狂暴化し旅人が襲われている。平和を確保する為にも道中の動物をなるべく倒してくれ。馬車でなく徒歩で行く。馬車ごと襲われ事故に繋がるからだ」


 クラビステータス(通常状態)レベル34

 力132 素早さ135 体力128 頑丈さ129 魔法力135 魔法防御140


 装備:デュプスの剣、デュプスの鎧、デュプスの盾、デュプスの兜


 マークレイステータス レベル33

 力135 素早さ125 体力140 頑丈さ135 魔法力120 魔法防御120 


 装備:雷鳴の剣、大地の神の鎧、銀の盾、銀の兜


 ボジャックステータス レベル31

 力117 素早さ122 体力122 頑丈さ124 魔法力113 魔法防御130

 

 装備:雷鳴の剣、大地の神の鎧、銀の盾、銀の兜


 ミッシェルステータス レベル32

 力138 素早さ187 体力140 頑丈さ135 魔法力140 魔法防御140


 装備:日本刀 特殊金属鎖帷子 魔法の帽子


 ベルスステータス レベル31

 力130 素早さ143 体力135 頑丈さ128 魔法力130 魔法防御123


 装備;騎士の剣、騎士の鎧、騎士の盾、騎士の兜

 

 そして一行は三キロ離れたノーズランド神殿に向けて出発した。

 しかしマークレイだけどこかぎこちなかった。


 ミッシェルは耳打ちした。

「きつかったら俺に言え。他の奴に言えなかったとしても」


 そして、三百メートル移動すると早くも狂暴化した動物たちが襲い掛かって来た。

 ゴリラ二頭とサイ、牛の組み合わせだった。


 皆肉食動物、いやそれ以上にいきり立ち、目が狂気をはらんでいる。

「まるでゴリラって言うより熊だ」


 クラビは「経験値一倍半」をセットした。


 牛かサイが最初に突進すると思ったがゴリラが最初に来た。

 クラビは最前列に立っていた。


 ゴリラはまるで相手の体を引き裂いて食ってしまおうと言わんばかりの凶暴さだ。

 

 ベルスは前に出た。

「よし、新入りの俺が皆を守るぜ!」

 声の大きさと明るさはリーダーが務まりそうであった


 突進して来たゴリラの攻撃を上手くかわすベルス。

 お返しに剣で切りつけた。


「はあ!」

 クラビも切った。


 手ごたえはあった。確かに切れ血は出た。

 ところが思った以上に痛がっていない。


「肉体、生命力も強化されてないか?」

 お返しにクラビは強烈なパンチを胸に受けた。


 しかし踏みとどまれた。

「さすが、デュプスの鎧」


 ベルスはゴリラの攻撃を食わない様上手く避けて戦っている。


 ジェイニーは牛を矢で攻撃するのを止めておいた。

「遠くから刺激すると一気に向かってきそう」


 ミッシェルはリーダーシップを発揮した。

「よし、牛とサイは力を溜めてるからそれを警戒し、先にゴリラを仕留めるんだ」


「俺とゾゾが『疾風の剣』でスピードを生かして行く」

「オーケー」


 二人が最前に出て警戒しながらも攪乱攻撃に出た。

 二人相手に凄まじい闘志を見せるゴリラ2匹。

 

 さらにクラビに付けられた傷もあまり効いていないようだ。

「はあ!」

 シヴァは切りかかり傷を与えた。

 

 しかし相手の反撃も速い。

「おっと!」


「高速移動レベル五!」

 とゾゾは叫びシヴァ以上のスピードで切りかかる。


 ゴリラは速い。

 二人だからやっと避けられる感じだ。


「サイと牛の突進は俺が受け止める!」

 マークレイは前に出た。


「俺も!」

 クラビも出た。


 そしてサイは突撃して来た。

 ジェイニーは矢を撃ったが皮膚貫通まで行かない。


「何だあいつ⁉ まるで鎧を着てるみたいだ!」

「避けるんじゃなく、真っ向から受けてやる!」


 盾を前に出したマークレイは『超怪力』スキルを発動させ角攻撃を受け耐えようとした。

盾で角を受け力比べの様相になった。


「舐めるな……‼」

 気迫全開のマークレイ。

「ぬおおお」


「何てパワーのサイだ。俺達も普通の人間よりずっとパワーアップしてるのに!」

 クラビは手が出せなかった。


 ジェイニーは火の魔法で援護する。

 少しだけサイの勢いが鈍る。

「うおおお!」


 サイの肩にマークレイの剣が刺さった。

 これで押し切りたい感じだ。


 一方ボジャック目掛け牛が突進して来た。

「何てスピードだ! 牛かあいつ! 『超怪力』で受けてやる」


 しかしそこを横切ったベルス、そしてクラビが一閃を食らわせた。

 牛はサイ程防御が高くなく、ひるんだ隙をボジャック、マリーディアは攻めた。

 しかし皮膚は弱いが体力は結構ある。


 操られているみたいにも見える。

 獲物を倒すまで勢いが止まらないような。


 サイを二、三か所刺したマークレイ。

 動きが落ちた所にミッシェルも攻撃を加えた。  

 マークレイは何と弱ったサイを持ち上げ投げ飛ばした。


 投げに慣れていないサイはこれが効いた。

 ゾゾ、シヴァも大分ゴリラを弱らせた。      


前へ次へ目次