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立ち話 孤児院過去続 マークレイ達の過去

2023年8月20日追記改稿しました。

木で火を起こす場面等。

「ジェイニーさん、新しい服も魅力的ですね」

 ゾゾが褒めた。

「えへ、似合う? 動きやすい格好にしたのよ」


 ジェイニーはドレスから労働者の様な服に変えた。

 小間使いの服にも近いが、実際は裕福な農民が着るような服だった。


 クラビは言った。

「でも少しラフだけどまだ高そうな服だよね」

「俺らもそろそろ新しい服買おうぜ」 


 道で一行は話し合った。

 ジェイニーが問いかけた。

「これからどっちへ?」

 

 ボジャックは答えた。

「最終目的はサブラアイム城なんだけど、三十日以上徒歩でかかるとしてもそこに行くまでに魔物を倒してレベルアップをして金を貯めて装備を整える。だから寄り道もする。実質三十日以上はかかる。女神さん、それくらいでいいかな」


「そうね、なるべく早く倒すべきだけど正直今の皆じゃアンドレイ達には勝てない。だから十分に強くならないと。仲間も増やすべきかな。それとデュプス王に会って国の危機を伝えないと。レベルで言うと四十位。ボジャックとゾゾはともかく、クラビはそれよりレベル低いからかなり上げないとだめ。でアンカーを使うと経験値は減るわ」

 

 クラビはのんきに言った。

「という事は剣で戦ってさらに俺が皆より努力しないといけないわけだね。まあリーダーや前線はボジャックがいるし」


「おいおい、お前リーダーじゃなきゃダメだよ。神に選ばれた勇者なんだから、中心になってくれないと」


「ダメだよ俺リーダーに向いてない。平和主義でのんびり屋だし」

「そんな事言ってる場合じゃねえよ。まあ俺もリーダーになる努力してたけどさ」


 ゾゾとジェイニーは言う

「クラビさん自信持って下さい!」

「自覚を持てばクラビさんもっと男らしくなるわ!」


 女神は言う。

「追い込み過ぎはまずいけど自覚を持ってほしいわ」


「誰かこいつに自覚もたせる起爆剤はないのかよ」

 ゾゾは耳打ちした。

「孤児院に起爆剤が」


「おお、そうだな彼女なら起爆剤になるだろう!」

「何の話」


 クラビは聞いたがボジャックはそらした。

「あっこっちの話。そうだな、俺達の各所に散らばった仲間に合流しなけりゃならない。そいつらをメンバーに加える。皆頼もしいぜ」


 ジェイニーは再度聞いた。

「ボジャックやゾゾ君みたいに強い?」

「少なくとも孤児院時代は俺達よりはるかに強かった。でリーダーのミッシェルて人がめっちゃ強いの。忍者みたいで」


「皆もしかして孤児院窃盗団の人? 足は洗ったの?」

「足洗ったって……」


 クラビが説明した。

「俺に今『国を動かす様な事をやっている』って手紙来るよ」

「どんな事?」


 ボジャックは言う。

「良く言えば活動家、皆使用人や炭鉱とかの仕事をしながららしいけど」


「じゃあもしかしてアンドレイ王の事とか狙ってるの」

 ボジャックは言った。

「あいつの独裁悪政は聞き及んでる。目に余るよ。恨みあるだろうね。あいつが農民の年貢上げたし、貴族はいい思いしてる様で実は誰も逆らえない」


 ゾゾは説明する。

「遅かれ早かれ、あの国には民の不満が充満していて暴動が起きそうです。でも暴動を起こした人は配下に殺されるらしいです」


 ジェイニーは聞いた。

「クーデターとか国家転覆って正義?」

 

「時代によって解釈は異なりますね」

 クラビは答えた。

「平和な時代だったら変人扱いされるよ。でも今は時代と政治がね。恨み買って当然の事してるから」


 ボジャックも答える。

「いや、俺達の仲間、は恐らく国家を狙い正義じゃなくとも恨みと怒りを晴らす、しかし恨みだけじゃなく俺達が正義、と二つの理由を持ってると思う。別に正義と思われたくないけど自分達は正義と思ってる一面もあるようだ。国家を倒そうとしてるかもしれない」


 女神は加えた。

「後カードを集めなきゃ行けないからそれもね」


 時折話しながら三キロ程歩いた。

 ジェイニーはボジャックに聞く。

「孤児院にいた人達って悪い人が多かったの? クラビさんも変な事やらされたって」


 クラビとボジャックは説明する

「皆すごく暴れた。孤児院内でも町中でも」


「でも最初は皆悪い奴じゃなかった。マークレイってやつはすごくいい奴でスポーツ万能でリーダーで行動力もあって友人が一番多かった。カリスマヒーローだった」

「カッコいいヒーローなんだ」


「でもいつからか彼を始め色々あって不満が噴出し荒れ始めた。そして町とかで暴力をふるうようになった。俺とクラビ、ゾゾもついて行った」


 ボジャックは続ける。

「そうだな……確かに悪い事やっている自覚はあった。でも『孤児だから』『世の中が悪い』『生きる為には仕方ない』って言って皆流されてたんだよ。リーダー格のマークレイとそのライバルのベルスが皆を引っ張る感じでね。俺はそれがやだった」

「さっき話に出た人? その人が仕切ってて皆逆らえなかったとか」


「うん『逆らえなかった』って言うのもある。マークレイって切れると怖いよ凄い。けど元々はマークレイは皆に慕われる中心的人物だったんだ。皆を引っ張って雰囲気を良くしたり、友人があまりいない人に声をかけるとかね。だから皆にすごく人気あった」

「友人は一番多くて力も行動力もありある意味カリスマだった」


 クラビは説明した。

「俺が孤児院に来た時も話しかけてくれて気さくに接してくれた。彼がいなかったらもっと溶け込むのに時間かかった」

「その人が窃盗とかをしようって言いだしたの?」


「うん。でも本人はきちんと悪い事やってる自覚はあったんだ。でも自分はこうするしか、盗みをするしか生きる方法がないから罪を背負うんだ、て言う生き方をしていた。正しい生き方をする人だけど、綺麗ごとだけじゃ生きて行けないって分かったらしい。善悪両面あるのが自分だと思ってたらしい。それを認め背負う覚悟って言うかその中で正しい生き方を探るみたいな」


「じゃあ、やむを得無しみたいにその人は思ってたんだ」

「悩んだと思うよ」


 回想に入る。


 十一歳のマークレイは座ってクラビと話す。

「俺は親の顔も知らないで一人でガキの頃から生きなきゃならなかった。でもだからこそ皆を守り面倒を見て行こうと思うんだ」


「すっごいなあ、心が広くて男らしいよ。実はさ僕も夢があって、将来は王様になりたいんだ」

「はは、すごい夢じゃないか」


「マークレイは人を笑わないんだね」

「いやいや。俺、皆がリーダーって呼んでくれるの嬉しいよ。誇りに思える。それにふさわしい人間になるよ」


 ボジャックは一緒にいて思っていた。

 ああ、確かにマークレイは立派だ敵わない。

 でも彼は俺に出来ない事やるから、それにいつからか俺は僻みを感じるのを隠せなくなっていた。


 勿論友人とは思ってたけどさ。俺はリーダー格に右に行けと言えば合わせてしまう。

 何となく流されて自分の意見がない。そんな自分が嫌だった変えたかった。でも上手く出来ない。


 そして、クラビにも。

 孤児は皆どこか突っ張っているのにあいつはいつもとても温厚だ。


 あまり人や世を恨まない。

 どこか異質な、理解できない面がある。


 しかしマークレイにはその内ライバルが現れた。

 貴族でありながら捨てられたベルスだった。


「元貴族?」

「育ちが良いって事?」


 しかしベルスは皆と違うひねくれ方をしていた。

 それは彼が貴族に生まれた事を当たり前の様に思っていて感謝をしない性格だった為捨てられて一転不満が爆発したのだ。


「何で俺がこんな所に入らなきゃならないんだよ」

 いつも不満をまき散らした。時には暴力も。で他の子に被害が加わらない様マークレイが話を聞く事にしたのだがこれをベルスが反感を持った。以来ニ人は対立した。


 ベルスもマークレイのように腕っぷしが強かった。

 そしてマークレイもベルスも仲間や取り巻きが増えて行った。どちらかに分かれて対立した。


 そしてグループ対立で殴りあいも起きる様になった。

 クラビとある少女が必死に止めていた。


「ケンカはダメだ!ボクシングで決めよう」

「やめてっ、皆やめてっ!」

 その少女はクラビが思いを寄せていた。


 マークレイは不満を強い自制心で抑え周りに優しくしていたのにそれが段々噴出し爆発していった。

 

 ベルスと言う起爆剤を得て。

 孤児院は暴力が増えた。

 

 しかしマークレイは出来る限り弱いものには当たらずベルス達だけに感情をぶつけた。

 ベルスも。対立グループだけの争いだった。

  

 ベルスは意地悪なのに何故か取り巻きが多く出来た。

 それは彼が腕っぷしがマークレイの様に強い事と現実主義者だからの様だ。

 

 しかしある時マークレイには親がいて貴族だった事がわかった。

「お前も貴族なのか」

 とベルスは妙な仲間意識をマークレイに持ち始めた。

 

 しかしマークレイは逆に荒れ始めた。

「今まで親は死んだと思っていたのに貴族で捨てられた。ふざけやがって。俺は貴族が憎かった。でも差別はダメだから出来る限り憎まないように努力していた。でも俺は貴族だった」


 マークレイは親が死んだ事実を強固な精神で受け止め乗り越え優しく強くなろうとしていた。


 しかし親が見つかりしかも貴族だった事でついに抑えた感情が爆発し関係ないものにまで当たった。


 マークレイ達は町で暴れたりする事も増えて行った。

 クラビやボジャックは心配した。


 この頃孤児院の職員が悪い人に代わった。

 そして窃盗が始まった。

 

 何となく上手くやって行く感じになったのだが意見が会議でぶつかる事もある。


 ベルスは会議でいつもシビアな意見を言う。

「ひったくるのは子供からだ」


 しかしマークレイ派の少年たちからは「それは卑怯だろ」と言う声が飛ぶ。


 ベルスは主張する。

「嫌それが一番リスクがないんだ」

「駄目だそんな事!」


 突如クラビは声を挙げた。

「そんなこと駄目だよ」


「何だお前、ボクシングで勝負するか」

 ベルスが言うとクラビは引かず睨んだ。


「よせ」

 とマークレイが止める。


 ボジャックは何も言えなかった。

 それが腹ただしかった。


 クラビは俺にも他の人にもない強さみたいな者を持ってる。

 俺には只者じゃないって感じる。


 だけど俺はただの人だ。

 だから正しい事を考えられる人間になりたい。


 ボジャックは自分を変えていく目標を持った。

 自分が正しい事を掴むまで。


 回想を終わる。

 ジェイニーは言う。

「でも今は正しい事にも戦えてるじゃない。友達思いだし」

「え⁉ いや」


「あっこいつ女の子に褒められると赤くなるから」

「赤くなってねーよ‼」 

「マークレイって人いい人なの? それとも力で皆を従わせてる人?」

 

「十一歳くらいまでは本当にいいやつだった。ただ本人は辛さもかかえてるし威張る事もある、リーダー、ボスみたいな感じ、でも親がいて捨てた事を知ってからはそれに怒り荒れ始めた。本人は本人は親に憎しみをぶつけなきゃいけないのに国を激しくにくみはじめた。今も働いているけど国をどうかしようと活動してる。貴族の使用人はなりたがらなかった。親が貴族だってわかったから」

「そりゃそうよね」


 クラビは言う。

「こっちは確か魔物が多いよ」

「戦いながら行こう。レベルアップとコンビネーション上達をかねて」


 そして、しばらくして怪物が現れた。

「日光コウモリ」と言う夜行性でないコウモリ。

「小型一角獣」

「硬皮膚オオトカゲ」


 の三匹だった。

「よし振り分けよう、動きの速い一角獣はゾゾ、防御の高いトカゲは俺、空を飛んでいる相手はジェイニー」


 この振り分けはベストだった。お互いに得意で相性の良い相手を選択した。

 そして倒した。

 

 疲れた。

 とジェイニーは言いそうになったが喉で止めた。

 

 皆、汗もかいてないし息を切らしてない。

 私も足手まといにならない様にしなくちゃ。


 昼食時、ボジャックはささっと木に登り木の実を取った。そして木の棒でさっと火をおこして見せた。

 ジェイニーは聞いた。

「ランプの火使わないの?」


 ボジャックは答えた。

「いや、いざと言う時ランプの油を残しておかなきゃいけない」


 ジェイニーは関心した。

「生活力があるわね」

「まあ、生きる為に色々やったしね」


 そして、何とボジャックはトカゲを捕まえて来た。

「今日の昼飯こいつね」


 ジェイニーは当然拒否反応をした。

「えー!」


「仕方ないよ。ジェイニーには無理かな」

「い、いいわ、食べる!」


「割と栄養あるからね」

「生々しい話しないで気持ち悪い!」


「無理するなって」

「大丈夫よ!」


「あ、まだ生きてた」

「きゃーっ‼️」


「あ、嘘ごめん冗談」

「悪質な嘘は止めて!」


 その日はしばらく四人で歩いたが町も宿は近くにない。

 ゾゾが言った。

「今日は野宿ですね」


 ジェイニーは不安な顔をした。

「野宿……」


 ボジャックはカバンを開いた。

「俺の一個だけある寝袋、使ってくれ」


 ジェイニーは驚いた。

「ええ! で、でも! だ、大丈夫よ」

「嫌俺は見張りを兼ねて木の上で寝る。見渡しが良いから好きなんだ」


「……ありがと」

 夜もふけたが、ボジャックは木の上では眠れなかった。

 そこへジェイニーが登って来た。

「えっ⁉️」


 ジェイニーは優しく言った。

「ほら、毛布よ」

「あ、ああ……」


「それに、私も見張り付き合うよ」

「え……」

 そして二人は良く眠れなかったものの、木の上で夜を過ごした。


 朝が来てボジャックは迷った。

「でさ、こっちの方向だと中継地点の町に行くんだけど」

「けど?」


「寄りたくないような」

 ジェイニーは聞いた。

「何かあるの?」


「俺達の孤児院があるんだ」

「そうなんだ! でも何で寄りたくないの?」


「こいつがさ」

 クラビを指さした。

 クラビは嫌そうな顔をしている。

 話をそらしたがっている。


「こいつの好きな女の子がいるかも知れないから」

「ええ!」


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