マークレイとマリーディア
その日はマリーディアはジェイニーと昼食を摂った。
そこへちょっと不安そうにマークレイが来た。
「ジェイニー、席変わってもらっていいかな。ちょっとマリーディアと話すことあって」
と言いジェイニーと交代する事になった。
マリーディアは「何の話だろう?」と言う様な少しだけ不安な顔をした。
いつものような元気を抑えた雰囲気でマークレイはマリーディアの向かいに座り食事を始めた。
「再会してから、君とはあまり話してなかったから……」
何て切り出すか少しだけ間が開いた。
マークレイから話した。
「疲れてない?」
「大丈夫、好きでやってる事だから」
「好きで……」
「自分で決めた事だから」
マークレイは何がマリーディアを決意させたのかとても気になっていた。
「どうして、急に旅に同行したの?」
「えっ?」
「ほら、孤児院の職員だった君が辞めてまで旅に加わったきっかけは何だったのか、ちょっと気になって」
「そうね。皆を見て同じ孤児院仲間として私も戦おうと思ったの」
「誘ったのは誰? もしかしてクラビ?」
「え? 誘われてないわ。私が自主的に思ったの」
マークレイは思った。
相変わらず生真面目で取り繕うの下手だなあ。
「その、危険が伴う旅に行こうと決意した強い理由は、クラビがいるから?」
「いえいえ! 皆が大変そうだから私も力になろうと」
相変わらずごまかすの下手だな……
「ごめん変な事聞いて、クラビが誘ったのかと気になってたから。ちょっと話はそれるけど皆の中でマリーディアが一番変わったよ本当、綺麗になった」
「そんな」
「嫌、昔から皆思ってたよ。ああ、食べ終わったらちょっと外に出て涼もう」
二人は外に出た。
「君は女だ。だから危険な事にはあまり無理しない方がいい。俺みたいなでかぶつが力のない人を守るべきなんだ」
「『戦いの天才』」だものね」
「いや、なるべく自分に力があったら弱い人を守らなきゃいけないと思ってるからさ。いつの間にかそれが誇りになってた」
「貴方はリーダーシップがあるから心強いわ。最初誰がリーダーか決まってなくてクラビは「俺いいよ」なんて言ってたから」
「クラビと話すと楽しい?」
「うん……」
「俺と話すのとどっちが楽しい?」
「うーん、マークレイの方が話術あるかな。でもクラビは何となく人柄が伝わってくるの」
「そうか」
そこへ何の悪気もなくクラビが来た。
「二人で何やってんの?」
邪心がまるでない笑顔だった。
「あっ、嫌何でもないんだ!」
マリーディアはクラビが来て嬉しそうな顔をした。
嬉しそうな顔してる……
そしてマークレイは一人部屋に戻った。
「はーっ」
溜息をつくとベルスが来た。
「どう? マリーディアと話せて」
「色々気になってうまく話せなかった」
「要するに好きなんだろ? 前から。なら言えば良いじゃないか」
「何かクラビがそう思ってるみたいで、流石に遠慮してしまう」
「それはあるよな。でも仲間と仲を壊したくないから自分の気持ちを抑えるのも間違いだと思うぞ」
「そうは言っても、あ、でも俺は中途半端を望んでたのかもしれない。気持ちを出したり配慮したり」
「言っちゃえば?」
俺だって嫉妬心あるよ。
でもそれを認めたくない自分がいる。
皆に好かれるのをアイデンティティーにしていたからだろう。
ベルスが去ってからマークレイは一人苦しんだ。
「あー苦しい! 狂おしい程に好きだマリーディア! だけどクラビも恐らく彼女を好きだ。ここで自分の事だけ考えて告白したりしたらクラビとの関係がおかしくなり自分から言った『親友の誓い』を破る事になる。俺はいい人でいたいエゴがあるんだろう。クラビは俺の気持ちなんて知らないんだろう。俺の抑えた心が悪の心として噴出し悪人になるかも知れない……せっかく神に認めてもらったのに」