仲間の励ましと奇跡
ボジャック達だけでなく、何と瓶の中の女神にも呪いがかけられてしまった。
「うぐぐ……!」
苦しむ女神。
そして一行。
「後多くても三分程度以内に呪いを解かないと皆死んでしまう!」
クラビは焦った。
焦って冷静な判断が出来なくなるだけでなく、自分を激しく責める弊害まで起きてしまった。
アンドレイは嘲笑って言った。
「まあ、せいぜい頑張ってくれたまえ、人間の頑張りが私の予想を上回る事を期待するよ。ではこれで私と軍は去る。別れの手紙を置いておこう。元々今日は様子見で来ただけで君達を殺すつもりはなかったのだが」
とクラビ達の足元に置いて余裕綽々で去った。
女神は泣きそうな顔でクラビに謝った。
「ごめん、私が貴方を連れ出さなければこんな事にならなかった」
しかしクラビは苦しい中必死に優しい顔で言った。
「気にしないでくれ。俺は何も後悔してない。使用人だった頃よりずっと良かったさ」
クラビは気を取り直した。
「しかし、何とかして呪いを解かないと、それは俺だけしか多分出来ない」
しかしクラビはまず自分の呪いを解こうとしたがさっきの様に破れない。
「何て強力な呪いなんだ!」
一行は全員力の限り踏ん張ったがクラビ同様に解けない。
「俺が、俺が皆を助けないと」
這う体勢で何とか皆に近寄ろうとした。
しかし体があまりに重い。
ジェイニーは言った。
「体から血の気が……血液が減ってるみたい」
マリーディアも言った。
「体から血液が抜かれてるみたい」
「くそ、俺に力があるんなら目覚めてくれ! 命を無くしてもいい!」
しかし呪いは解けない。
ただひたすら祈る様にあがいた。
「まだ諦めないぞ! 何とか俺が救うんだ!」
しかし一向に呪いは解けない。
「うああ!」
一行の体の激痛が更に増していく。
クラビは力不足を悔いた。
「すまない皆、俺の力不足で」
ボジャックは言った。
「俺は一ミリもお前を責めない。戦い慣れしてないお前がここまでやったんだ。誰も責める権利も恨む権利もない」
ゾゾも言う。
「そうです! 誰も責めてないですよ!」
ジェイニーも言う。
「自分を卑下しないで!」
ボジャックは再度言う。
「お前は何も悪くない。それに勇者って言っても元は一介の使用人だったんだ。そんなに背負うな」
ジェイニーも言った。
「旅に同行した事は後悔してないわ!」
ゾゾも言う。
「ここで死んでも俺はクラビさんを尊敬します」
マークレイも言った。
「俺もだ。昔親友の誓いをした時からお前は比べ物にならない程変わった。お前を責める気なんかない」
マークレイはそこから先は言葉に出さなかった。
本当は俺はマリーディアが好きだ。
その事で嫉妬してないと言ったら嘘になる。
でも嫉妬しちゃいけないんだ。
マリーディアも言葉には出さず思った。
私も貴方の為なら命を捨ててもいい。
クラビは全エネルギーを込め体から確かに光が出た。
しかしそれでも呪いは解けなかった。
ミッシェルは苦しんだ。
「これ程の苦しみ、情けないがどんな敵にも負けないつもりだったがここまでの攻撃は受けた事がない、くっ、きつい」
シヴァは思った。
ミッシェルさんが弱音を。
クラビは遂に弱音を吐いた。
「女神さん、あんたの力で何とかならないか?」
「ご、ごめん、何も」
女神は思った。
いつも自分で背負おうとするクラビが弱音を……
もう限界なのかも……
その時母子が通りかかり近づいた。
「お兄ちゃん!」
それはクラビが目を治した子供だった。
「フイ! すみませんこの子がどうしてもと!」
「お兄ちゃん! 死なないで! 僕の目を治してくれた時の奇跡を起こして!」
「奇跡……」
「う、うおおお!」
ついにクラビの体からさっきより強力な光が出た。
「うおおおお!」
遂に呪いが解けた。
クラビは女神に触れると呪いが嘘の様に解けた。
「ええ⁉」
そしてボジャック達も助けた。