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重なる絶望

「はああっ!」

 ボジャック達は火を撒こうとする兵士達を倒していた。

 ジェイニーは魔力がないのでクロスボウで戦っていたが、冷気を出せない為火を消せない。


 その為マークレイとシヴァのアンカーからでる冷気で消していた。

 町は火事で大騒ぎとなり逃げまどう人々であふれた。

 助けられなかった人達もいる。


「クラビ……」

 と不安に思っていたマリーディアの後ろから不意に兵が切りかかった。

「危ない!」


 危うくマークレイが兵を切って助けた。

「どうした? 君らしくないぞ」

「ご、ごめんなさい」


 マークレイは思った。

 クラビの事が心配なのか……


「うわあああ!」

 一方、クラビとミッシェルは呪いに苦しんでいた。

 

 それを見て微笑むアンドレイ。

「さてと、そろそろ去らせてもらうか」


「ぐおおお!」

 何とかクラビは剣を掴もうとした。

 しかし

 

 苦しい、頭が砕ける、手の筋肉が割れる、指が震えて動かせない。目がかすむ。

 足のももが槍でも刺さっている様に痛い。周りの景色が白黒に見え、ノイズの様な物が目に映り込む。


 苦しみは想像を絶していた。

 それでもクラビはまだ諦めなかった。

 ミッシェルさんだけでも助けて見せる……!


 無様に地面を這うような体勢だった。

 それでもクラビは少しでも体を動かそうとする。


 ミッシェルも物凄い根性で耐えた。

 女神は言った。

「クラビ! 辛いけど諦めないで! 今の貴方なら呪いを何とか吹き飛ばすほどの力がある!」


「がう……!」

 這う姿勢から剣に手を伸ばす。

 後一歩。

 

 遂に剣を掴んで見せた。

「ほう!」


 アンドレイは感心した。

 クラビは更に剣を立て、支えにして何とか立ち上がろうとした。

「まだやる気があるのか?」


 クラビは限界に近い力を全身に込めた。

 クラビの記憶の断片がまた戻る。

 勇者にしか使えない『呪い解除(自分の分のみ)』に覚醒した。


「うおおおお!」

 クラビの全身が激しく光った。

 クラビは呪いを解除した。


「ほう、戦いながら進化する、とでも言うのか」

「はあはあ」

「面白い、私を倒せばその男の呪いも解けるぞ。試してみるか?」


「やってやる!」

 クラビは力を振り絞り剣を構えた。


 そして切りかかった。

 感情任せに剣を繰り出した。

 さっきより速くなっていたが焦りもあり剣筋がいささか大味だった。


「ふふ」

 アンドレイには当たらなかった。


「落ち着いて! でもクラビが疲れてるのもあるけどあいつの動きも速くなってる?」

「そうだ」


 アンドレイに牙と尻尾が生えた。

「攻撃が当たらないのは貴様が疲れてるからでも焦っているからでもない。私が更に本気を出したからだ」


「俺は負けない! 呪いにも、恐怖にも!」

 再度切りかかったクラビだったが今度は剣でなくパンチを食った。

 しかしお返しにパンチを見舞って見せた。


「俺には素手挌闘スキルもあるんだ」

「素手には素手か。愚かな騎士道精神だな」


「うおおお!」

 しかしクラビのパンチは受け止められ逆にお返しを食った。

「早く私を倒さんとあの男が死ぬぞ」


「うおおお!」

 ミッシェルの体の節々から血が噴き出た。

「ぐうう!」

 

 しかしミッシェルは想像を絶する根性で動いて見せた。

「馬鹿な! 貴様も呪いを破っただと!」

「なめるなあ! 俺はこんな事で屈しない、屈しないんだよ!」


 そして刀で切りかかった。

 全ての力を込めて攻める。

 しかし反撃を食ってしまった。


「うおおお!」

 クラビは救出に入ったが射出型光剣に似た光の剣で刺されてしまった。

「あぐぐ」


 クラビの動き、いや心も停止した。

「分かったかね? これが現実だ。例え君が記憶と力を取り戻そうとも私の足元にも及ばんのだよ」


 クラビはどっさりと倒れた。

「さてと、もっと強力な呪いをかけるか」

「ぐわああ!」


「クラビ!」

 そこへボジャック達が駆け付けた。

「よせ、皆来るな!」

「うわあ!」


 ボジャック達にも呪いはかけられた。

「これで全員後三分もあれば死ぬな」


「み、皆を助け……ないと」

 クラビはあがいたが気が遠くなって行った。   


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