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アンドレイ姿を現す

「アンドレイ!」

 クラビ達は騒然となった。

 皆口を開け、叫んだ。

 

 無理もない。

 自分達の目標、悪の王が信じられない事に城を出て兵に化け戦場に突如現れたのだ。


「は、ははーっ‼」

 兵達はひれ伏した。

 自分の命と心を掴まれたかの様に。


 ボジャックは言った。

「嘘だ! 国王が出てくるなどあり得ない」

「城は影武者に任せて来たよ。信じられんかな」


 しかしクラビとマークレイはがたがた震えていた。

 マークレイはこの前直接脅された恐怖からだ。


 アンドレイはわざとらしくクラビの方を向いた。

「ほう、初めましてかな、いや十二年ぶりかな、勇者クラビ君」


 ボジャックはクラビを見た。

 クラビがあんなに汗を流して震えてる。

 本物の悪意とかを感じ取ってるのか。


 アンドレイは言った。

「十二年ぶりだね。君の敗北から」

「……」


「あの時君を確かに殺したがね、私に限って失敗はないはずなのだが、それにしてもまた旅に出て大分内の軍相手に暴れてくれたようだね。しかしあの時十五歳位だった君だがあれから十二年経っているのにほとんど年を取っていない、何故だ」

「……」


「さてと今日来たのは挨拶だ。君らごときすぐに殺せるからね。それともう一つの用は……ドードリアスとブロキアの肩を担いでやれ」


 兵は答えた。

「城に連れて行って治療するんですね」


「違う、城下町に連れて行け」

「え?」

「その二人は敗北した。よって町に設置した処刑台でギロチンで殺す」


「な!」

 敵も味方も震えた。


「そ、そんな!」

 と叫んだ兵士は首を即座に飛ばされた。


「うわ!」

 あまりの凄惨さに皆目を背けた。


 アンドレイは言う。

「失敗者だけでなく逆らう、いや反抗した者は殺す」

「……貴様」

「はい!」


 兵士は震えた。

「貴様が剣でドードリアスとブロキアに止めを刺せ」

「そ、そんな!」

 

 また兵士の首が飛んだ。

「腑抜け共め」


 と言いアンドレイは火炎魔法の詠唱を始めた。

 そして構えた。

火炎魔法フレイム


 と唱え、倒れたドードリアスとブロキアの体に火を放った。

 ごうごうと音を立て体は完全に燃えた。


「貴様らは命を助けてやった様だが無駄だった様だな」

「くっ!」


「さて、暇つぶしに君達の相手をしてやるか」

 皆は震えながら構えた。


 一体どんな力があるんだ?

「はっ!」

 とアンドレイは叫ぶと細い直線状の火を放った。


 これは当たらず、クラビ達の横を通過して行った。

 ところがこの火ははるか数百メートル先まで飛び爆発を起こした。

「くっ!」


 皆その爆発を見て怯えている。

「さあ勇者よ、まだ秘められた力があるなら見せてみよ!」


「ぐ、ぐう!」

 突如クラビは射出型光剣を発射した。

「ふん」


 しかし軽くかわされた。

 お返しに射出型光剣と同じ形の光の剣を投げつけた。

「くっ!」


「ふん、こんなお遊びなど簡単に真似出来る」

「射出型光剣が!」


「今日は様子を見に来ただけだ。もう私は帰る。君達などいつでもたやすく殺せるからだ。これが現実だ。おっとこの町を焼き払わんと」

「なっ!」


 アンドレイは火を後ろ側に向けて発射し家に火が付いた。

「兵達よ! 散ってあちこちに火を付けてこい」


「そんな事させるか!」

 クラビは走り込んだが立ちふさがったアンドレイのボディパンチで腰を落としてしまった。

「あぐぐ」


 クラビは言った。

「こいつと一緒にいると十二年前負けた記憶が蘇り恐怖が体を支配しそうになる」

「力よりもまず精神修行からじゃないかね。無駄とは思うが」


「えい!」

 その時パチンコの石がアンドレイに命中した。

 それはマークレイが先程助けた孤児だった。


「な、何やってんだあいつ! 逃げないと!」

「よせ!」


 クラビは前に出てかばった。

 今度はパチンコがまた飛んだ。


「え?」

 振り向くとそこには先程クラビが火炎から助けた子供がいた。

「助けに来たよ!」

「何やってるんだ! 早く逃げろ!」


 と言った瞬間、アンドレイは両手を上げた。

 同時に二人の子供は燃えた。

 火に包まれた。


「私は子供だろうと容赦なく殺し、燃やす」

「……‼」


「元々ろくな人生を歩めないんだ今死んだって同じだろう」

 クラビの中で何かがはじけた。

「子供まで殺しやがってこの野郎」

「何?」


「お、お前は、俺が殺す!」

 そしてクラビはかってない怒りを身にまとい猛然と切りかかった。      

 


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