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マークレイの回想一

2023年10月21日投稿しました。

 一旦、回想から現実に戻る。


 皆はドードリアスを倒したマークレイに駆け寄った。

「すごい威力の技だな改めて見たけど、アズロ先生に教わったのか」


 マークレイは説明した。

「勿論アズロ先生あっての技だ。でも実はそれだけじゃない。悪魔の力に打ち勝ち吸収したのさ」

「え?」


 皆はさすがに困惑しマークレイは説明を続けた。

「今まで言う機会がなかった。言う勇気もなかった。俺は昔悪魔に取り付かれて心を支配されてたのさ」


「悪魔?」

「ああ」


 マークレイ十四歳の頃の回想に入る。


 その頃のマークレイは精神的余裕をどんどん失っていった。

「親が実は貴族だった事、しかも捨てた理由が『頭が悪いから』。ふざけやがって本当に。俺は頭悪いよ。勉強嫌いだよ。スポーツは得意だけどさ。でもそんな理由で捨てた親が今更引き取りに来るなんて。絶対ごめんだよ。何か最近疲れたな本当。孤児って本当辛いよ」


 自室に帰ると、突如部屋が真っ暗になった。

「な、何だ?」

「ケーッケケケ」


 不気味な笑い声が聞こえ、光がそこだけ当たり小型の悪魔らしき生き物が現れた。

 魔王の様な親分的外見でなく体の小さい、ハイエナ的生き方をしそうな風貌だ。


 マークレイはさすがに驚いた。

「な、何だ⁉」

「俺の名は悪魔の邪魅亜、貴様の心に取り付きに来た」


「心に取り付きに来た悪魔⁉」

「そうだ。貴様は最近大分荒れている。ここで俺が取り付いて貴様の悪意を肥大させ、本当の悪人にしてやるよ」


「な、何? うわっ!」

 マークレイの抵抗むなしく霊的な存在である邪魅亜は体に入り込んでしまった。


「うわあ!」

 逆らっても追い出す事は出来なかった。


「ウ、ウウ」

 マークレイの目つきが変わり、その日から荒れ始めた。

 

 マークレイは道にいる荒れた若者達に突っかかった。

「何だお前?」

「う、ウウ!」


 いきなりマークレイは殴った。

「何すんだてめえ!」

 相手は四人だったが、悪魔が取り付いているマークレイは数段強くなっており、あっという間に勝った。


 そしてこの頃から喧嘩をする様になり窃盗団の話も出た。

 皆噂した。


「何か最近マークレイめっちゃ怖いよ。近寄りがたいし」

「貴族の父親が現れたからかな」


 そして、場所は変わって剣術の授業。

 皆はアズロの指導で練習していたがアズロは気になりマークレイに直接声をかけた。


「どうしたんだ。目、いや体全体から悪意が出ている、何かあったのか」

「な、何でもないです」


 この頃からマークレイは剣術も格闘技も強くなり皆を負かせて見せた。

 しかしクラビは負けず向かって行った。

「今度は負けない!」


 クラビは投げられた。

 マークレイは思った。

 

 おかしい。

 俺かつてクラビと親友の誓いを結んだのにあいつを見下し始めている。


 サッカーでもドリブルするマークレイにクラビはぶつかった。

 執念は見せたがクラビは追い越された。


 マークレイは思った。

 あいつ、何か熱い目してるな、まあいいけど。


 クラビは言った。

「マークレイに勝つため鍛えよう!」

 クラビはランニング等を始めた。


 そして窃盗団の活動が本格化しすっかりマークレイが悪人になってしばらくしたある日の夜、マークレイはまた町に喧嘩に行った。

 しかし今度は相手は八人だ。


 相手は挑発してきた。

「おい、おめーかよ最近この辺で生意気になってるガキは」

 いきなり隙を付かれたマークレイは後ろから棒で殴られた。


「ぐあ!」

 さすがにこれは耐えられずダウンした。

 そして仰向けで仲間に手足を抑えられた。


「おら、おら!」

 一人の男がマークレイの腹を何発も蹴る。

 それだけでなく圧し掛かって何度も殴った。


 そこへ声が聞こえた。

「やめんか!」


 それはアズロだった。

「げっ! あのおっさん剣聖って呼ばれてるやつだ、逃げろ!」

 ダウンしたマークレイにアズロは駆け寄った。


「すみません」

 アズロは平手打ちした。

「何をやっているんだ。こんな事をする為にお前達を鍛えているわけではない。お前は皆に慕われる少年だったんだろ?」


「信じてもらえないかも知れないけど、俺悪魔に取り付かれてるんです。でもその悪魔が全部悪いわけじゃなくて俺にも悪い心があって利用されたんです」


「私が助けよう」

「ありがとうございます。でもこれは外からじゃどうにもならないんです」


 マークレイは部屋で一人になってから邪魅亜に話しかけた。

「出てこい! 俺はもう操られない!」


 邪魅亜は姿を現した。

「よし、お前の精神世界に行こう」


 真っ黒な精神空間、そこでマークレイは邪魅亜と格闘した。

 肉体でなくお互い霊体で。


 しかし邪魅亜の方が強い。

「くっ!」

「ふふ、お前はどうせ俺からは逃げられない」


「まだだ、今度は俺が勝つ」

「もし仮に勝ったら、お前は悪魔の力を得た技を二つ習得できるが無理だろうな」


 そして一週間後夜、アズロの元へマークレイは行った。

「外からは見えないけど、俺の戦い見てください! 俺はもう負けない!」


 そして目を瞑ったマークレイは精神世界に入った。

 アズロは不安だった。

「何が起きているんだ。助けてやりたいが」


 マークレイは殴られ爪で切り裂かれた。

「ガキが」

「俺は負けねえ。確かに俺に悪い心があって付け込まれたんだ。俺が悪いんだ、でも俺は打ち勝つ!」


「無理なんだよ! お前ら孤児は貧しいから心も荒んでいるやつらばかりだ。お前の仲間も皆そうだろう」

「仲間の悪口を言うな!」

 マークレイは血を流しながら殴り返した。


「俺は悪の心に負けない! 受け止め打ち勝ってやる! 皆を守れる人間になるんだ! クラビ、皆、アズロ先生、そしてマリーディア……そうか、マリーディアと付き合えない事も悪の心を生んでたんだ。辛い、辛いけど俺は! もう一度皆に慕われる人間にならないと! いや新しく生まれ変わる!」


 反撃したマークレイはついに拳で邪魅亜の腹を貫いた。

 邪魅亜は苦しみながら言った。

「が、がああ、いいだろう、約束通り悪魔の力をやる。ファントム・ゼロと死神の鎌・ヘヴンズハーケンブレイクが使えるぞ」


 そう言うと邪魅亜は消えた。

「悪魔の力?」

 そして目覚めたマークレイ。


 アズロは心配した。

「大丈夫か」

「ありがとうございます。これからお見せしたいものが」


 マークレイはアズロの前でファントム・ゼロとヘヴンズハーケンブレイクを披露した。

「おお! これは普通の人間に出せる技ではない!」


「悪魔の力を克服し吸収しました。アズロ様の応援あってのおかげです」

 それから教会にいったりして真面目になっていった。

「俺は二度と悪の道に走らない人間になって見せる! どんな誘惑があっても!」


 回想を終わる。

 ベルスは言った。

「そ、そんな事があったのか、い今初めて知ったよ」


 マリーディアは言った。

「何も知らなかったわ」


 マークレイは言う。

「俺はもう大丈夫さ。アズロ先生も見ててくれる」 



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