ミッシェルの過去
2023年8月13日改稿しました。
ミッシェルは忍の末裔である為、小さい頃八歳位までは山の里で修行の日々を送り、一般社会とは隔絶気味だった。
師匠ダンゲルと兄弟子二人はミッシェルに世間を教えるため世に出す事にした。
しかしそれが並みの厳しさではない。
彼らはスラムの様な最下層貧民街にお金も渡さず住む所もなく放り出した。
連れてこられダンゲルは去った。
当然目付きの悪い、食べ物と言うより血に飢えた様なあるいは死んでいると表現した方が良さそうな人間達ばかりであった。大人も子供も。
犯罪者にしか見えない汚い格好と顔つきをした大人、ミッシェルと同じ位の子供もいたが目つきが殺気に満ちている。
何だこの人達? 幾ら鍛えてるとはいえ逆らったら殺されそうじゃないか。
何か食べてたら分捕られそうだ。
その日からそこで暮らす事になった。
「何だ坊主?」等言われそうだがセリフがなくさらに殺気を感じさせる。
その夜食べ物を求めて彷徨うと、何故かそこに食べ残しが落ちていた。
運がいいのか悪いのか。
ところがそれを食べようとするなり後を付けてきた少年達にかすめ奪われた。
「ここが人間の住む所かよ。ダンゲルの奴には愛情も人の心もないのか」
でそれから残飯をあさってたりすると同じように襲われた。
しかしここでミッシェルに凄まじい反骨心が生まれた。
ダンゲルの野郎許さないぞ。復讐してやる。
一人で強くなる事を決めた。
ところが……
数か月経ち他の子供達と喧嘩をした際に凄い身のこなしを見せると彼らは驚いた。
「お前凄い身のこなしだな」
と何故か友好的雰囲気になった。
「忍者の端くれさ」
そしてミッシェルは捨てられた子達と何故か仲良くなってしまい一緒に盗み等をする様になった。
これを知ったダンゲルは怒った。
「狙いが完全に外れた! ミッシェルを連れ戻すぞ」
強制的に里に戻された。
「あいつはアンドレイを倒す為に強くなって貰わなきゃ困っているのに」
そして十三歳で今の孤児院へ行く事になった。
そこには荒れたマークレイがいた。
「やんのかよお前」
と二人は喧嘩になったが結果はミッシェルの圧勝だった。
その日からミッシェルはボスになった。
ところがまた話を聞いたダンゲルが来た。
「貴様! 今度は孤児院で喧嘩をして威張ってるそうだな! 我々の気持ちを分かっているのか!」
ミッシェルは答えた。
「ねえよ。あんたらみたいな愛情のかけらもない人間の気持ちをどう考えろって言うんだ?」
「貴様!」
ダンゲルはミッシェルの手を引っ張った。
「今日で連れて帰る!」
「放せよ!」
そこへ何とマークレイが立ち塞がり土下座した。
「待って下さい! ミッシェルさんを連れて行かないで下さい!」
「マークレイ……」
「俺、ミッシェルさんがいなくなったら寂しいです。それにミッシェルさんと戦って初めて世の中にこんな強い人がいるって知ったんです。俺は思い上がってた。ミッシェルさんにはボスでいてほしいんです。また戦って今度は勝ちたいし。それに威張るけどいい奴だって思ってます!」
「よくわからんが、仕方ないな。連れ戻すのはまた今度にした」
そう言ってダンゲルは帰った。
ミッシェルは本当に驚いた。
「かばってくれてありがとな」
「これからもよろしく」
この件で二人は仲良くなった。
そしてマークレイ十七歳の頃、仕事で苦労している所へクラビと同じ感じで神の使いは降りたった。
「あ、あ」
呆気に取られるマークレイ。
神の使いは言う。
「僕は神の使いとしてそれにふさわしい人に能力を与えている。君は戦いに関してすごい才能を持っているから勇者として覚醒させてあげよう」
「本当ですか⁉️」
「ただ、それには限りなく心に邪心がない人だけなんだ。君は結構悪い事したよね」
「う……」
「でも十歳くらいの頃の君は本当に皆に好かれる良いやつだった。その頃の気持ちに戻るのなら『勇者の魂』を覚醒させる。教会も行って大分心入れ換えたろ」
「はい」
「頑張れるかい?」
「はい、頑張ります!」
マークレイの体がまばゆく光った。