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ミッシェルの意外な弱点

2023年12月25日改稿しました。

 ミッシェルの強烈なパンチを食ったブロキアだったが口を拭いて体勢を立て直す。

「意外と挑発に弱いんだな」


 ミッシェルはにやりと言い返した。

「『女っぽい』は昔から禁句でね。言った奴で生き残った奴はいないよ」


 ボジャックは昔「女っぽい」と言われたミッシェルが怒った時の事を思い出して震えた。

「そんなに怖いの?」

 ジェイニーは聞いた。


「思い出すだけで震えるよ、あの人にそれ言って生きて帰れた人いないよ」


「今度言ったら本物の地獄を見せるぞ」

 突如表情が変わり、ミッシェルは余裕が無くなり一転して凄みを見せた。


 しかしブロキアはわざと言った。

「何度でも言ってやるよ、女」


「……!」 

 言われた瞬間ミッシェルの自制心が飛んだ。

「うおおおお!!!」


 次の瞬間にはミッシェルは鬼の形相で殴りかかった。

 しかし何とブロキアも逃げず同時にパンチを繰り出した。


「ええ??」

 皆騒然となった。

 全く避けようとしない両者のパンチが真っ向からぶつかり顔が歪み両者は壮絶にダウンした。

「ぐ、ぐぐ」


「ふうう」

 しかし先に立ち上がったのはブロキアだった。

「ええ?」


 ボジャックは驚いた。

「ぐ、ぐう」

 一方、何とかミッシェルは立ち上がろうとする。


 ブロキアは笑った。

 何かを見破った様に。


「貴様のパンチは凄まじい。褒めてやる。だが細身の体ゆえ打たれ強さがないな」

「ぐぐ」


 ボジャックは言った。

「そうだ、ミッシェルさんはいつもとんでもないスピードでほとんどの攻撃を避けてる。そんな弱点があったんだ」


「俺が行く!」

 このピンチにクラビが駆け付けた。

「ミッシェルさん、後は任せて下さい」


 ミッシェルは呑気に言った。

「うーんそうだなバトンタッチするか。でもあと一つだけ試す事がある」


「試す事?」

「ふん」


 と言うなりミッシェルは突如姿を消した。

「え?」


 気配も消えていた。

「何だ?」


 敵も味方も騒然となった。

 誰も見えない。


 ボジャックは言った。

「消えたのか超スピードかどっちだ?」


 ブロキアは言った。

「この俺が捉えられない動きだと? どこだ」


 十秒、二十秒、次の瞬間だった。

「ぐあ!」


 ブロキアの体が水平に切り裂かれ血が噴き出した。

 そしてミッシェルは後ろに回り込んでいた。


「速い!」

「今だ!」

 ミッシェルは珍しく叫んだ。


 そしてクラビは呼応し、射出型光剣を放った。

 ブロキアは胸を串刺しになった。


「やったか!」

「いや心臓をわずかに外した」

「わざと外したのか……」


「おのれ……」

 ブロキアは立ち上がってきた。


「俺も人間じゃないんだよ……アンドレイ様に魔界から連れ出された種族よ‼️ ぐうう!」

 ブロキアが力を込めるとブロキアの肉体が溶ける様に瓦解し生物の姿になっていく。


 そして現れたのは二本足で立って歩く二つ首の亀の怪物だった。

「えーっ!」

「ふーはあ!」


「覚悟はいいか?」

 二本首の口から火の玉をミッシェル目掛け吐いた。

「速い!」 


 まさに乱れ撃ちだ。

「全部かわして接近戦に持ち込んでやる!」

 必死に火の玉を掻い潜り距離を詰めたミッシェルは渾身のパンチを放った。


 しかし、これが甲羅で防がれた。

「ぐあ‼️」

 

 ミッシェルの拳から血が流れ出る。

「これを狙っていたのよ。拳は折れてるんじゃないか?」


「くそ!」

 ミッシェルは左手で刀を持った。

「そんな刀程度じゃ俺の甲羅は切れんぞ。さて火の玉もうち尽くしたし接近戦で決めてやる」


 ブロキアは猛然と突進してきた。

 しかしミッシェルは逃げない。


 ミッシェルは手を前に出した。

 するとブロキアの巨体が宙に舞い、背中から落ちた。


 ボジャックは驚いた。

「掴んでないのにどうやって投げたんだ⁉️ まるで空気を投げてるみたいだ!」


「おのれ…!」

 ブロキアは起き上がれない。

 ミッシェルは言った。


「自分の弱点も分からないのか? 亀はひっくり返ると起き上がれない」

「!」


「もう一つの弱点、亀は腹が柔らかい」

「よせ!」


 しかし容赦なくミッシェルは腹を何ヵ所か刀で刺した。

 さらに心臓も。

「ば、バカな‼️」

 

 大量の血が吹き出した。

 そしてブロキアは元の姿に戻った。

 どうやら絶命したようだ。


 そして一方、マークレイは光閃掌をドードリアスに食らわせた。

「俺の修行の成果を見たか! 教会で禊ぎまでやったんだ」


 回想に入る。

 牧師はマークレイに確認する。

「本当にいいのか。禊ぎの部屋のきつさは生半可ではない」

「構いません、罪を洗い流したいんです」


 禊ぎの部屋に入ったマークレイに僧たちは「聖なる呪い」をかける。


「ぐあああ‼️」

 マークレイは高圧電流を流された程の衝撃を受けた。


 しかしマークレイは後悔していなかった。

「良いんだ、暴力や窃盗をした罪や友人にそれをさせた罪を償って真面目になる為には!」


 激しい「禊ぎの儀式」の後、マークレイは生まれ変わった様な気持ちになった。

 回想を終わる。


「はあ、はあ」

 しかしドードリアスはまだ起き上がって来た。

「そうこなくちゃな」 


 両者は大鎌と大剣をそれぞれ拾い構え直した。

 そしてぶつかった。


 マークレイにはどこか余裕と自信がある。

 その雰囲気はドードリアスに伝わり動揺させた。


 何だこいつは?

 武器を生成するスキルに驚いていたのだと思ったがそれだけではない、何だこの余裕と自信と武器裁きは。

 

 ガキの癖にこんな奴がいるのか。

 まさか俺が動揺しているのか。


 しかしドードリアスにも意地がある。

 誇りと自身の動揺を認めたくない気持ちにより、大剣で鎌を吹き飛ばした。 


 マークレイは丸腰になった。

「くっ!」

 

 ジェイニーは叫んだ。

「マークレイさん!」


 マークレイは反撃の準備が出来ていなかった。

「覚悟しろ! うおお」


 何とドードリアスの皮膚が溶けて行った。

 そして人間の骸骨になったかと思いきや、骨は変形して二本足で立って歩く竜の骸骨になった。


「こいつも真の姿を隠してたのか!」

「ドラゴンゾンビ?」


「いや、骨の下の胸の部分に心臓がある。アンデッドではなく生命体だ」

「ガウウ!」


 ドードリアスは武器を拾わず爪でマークレイを襲おうとした。

 マークレイはまだ動けない。

 

 その為爪で切られてしまった。

 さらにドードリアスは火炎を吹いた。

 これを何とかかわすマークレイ。


 しかしドードリアスはそこへ突如乱入したマリーディアの剣の一閃を受けた。

「受けなさい!」


 それはかつて(十八話で)皆に披露したマリーディアの奥義だった。

「流麗なる剣の舞!」

「ぐあああ!」

 

 その名の通りまるで舞うような流麗な剣筋の奥義だ。

 ドードリアスは大ダメージを受けた。

 

 このチャンスにマークレイは体勢を整えた。

「すまないマリーディア! 最後は俺が決めてやるぜ!」


 マークレイは鎌を拾い切りかかった。

「へヴンズハーケン・ブレイク!」

「ぐわああ!」


 そして今度は鎌でなく剣を拾った。

「出るのかあの技が!」

 皆注目した。


「召喚された悪魔よ、俺の悪意を吸いとって更なる力を得よ!」

 この技こそ十八部分で皆が話した奥義だ。


 マークレイの背後に悪魔の影が昇り、右腕は赤い光をまとった。

「はあああ!」


「ファントム・ゼロォォッッ!」

 マークレイは叫び剣を繰り出した。


 凄まじい衝撃波だ。

「さらに! ファントム・ゼロマイナスワン!」

 続けて改良奥義を出した。


「止めだ! 新光閃掌!」

 今度は素手技の光閃掌の改良型だ。

「ぐあああ!」


 悲鳴を上げ、遂にドードリアスは倒れた。

 ゾゾが言った。

「あんな技を幾つも……!」


 マークレイはかなり疲れながらも爽やかに言った。

「どうだ、弧児院リーダーのとどめのファイナルラッシュは、サブリーダーだけどな」


 ゾゾは言った。

「ファントム・ゼロもだけど、鎌の奥義も開発してたんだ、何てセンスなんだ」 


「開発じゃなくて悪魔からもらったんだけどな」

 

 ボジャックは言った。

「幹部を二人、倒した……!」      

     

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