才能と葛藤
回想に入る。
マークレイは炭鉱を辞めた後農業に従事していた。
「炭鉱の時ほどじゃないけど、やっぱり農業もきついよな。手取りも減ったし。そもそもアンドレイが重税を取り立てているからだ。だからあいつをいつか倒すため力を付けたいところなんだが、休日も疲れてるし」
そこへクラビと会った女神とは違う女神が現れた。
「えっ⁉」
「初めまして」
女神はマークレイの戸惑いを無視し話を進めた。
「貴方は立派ね。休日も悪人を倒そうと修行しているのね」
「まあ、体だけが取り柄だからそれを戦いに向けようと思って」
「弱い人の為?」
「いやいや、個人的にアンドレイが許せないだけですよ。俺は英雄って柄じゃないし」
そしてまた女神は自分のペースで続けた。
「では貴方に戦闘スキルを授けるわ」
「え」
半ば相手の気持ちを無視している。
「貴方は本当に戦士としての才能がある。アズロ様から手ほどきを受けたみたいだけどそれにプラスするわ。『人口岩作成」、「光閃掌」よ!」
マークレイは女神に貰った技を試そうとした。
「んっ!」
すると少しずつ岩が集まってきた。
「おお」
「最初はこんなものね。で修行で形にしていくのよ」
「でも、何でこんな能力をくれるの」
「貴方には勇者のサポート役の戦士になってほしいの」
「サポート役の戦士?」
「貴方は才能は凄いけど『勇者』ではないわ」
「勇者が他にいるの?」
「うん、貴方の孤児院時代のお友達・クラビよ」
「え?」
マークレイは驚き複雑にもなった。
「勇者じゃなくて『サポート役』なのも『俺は勇者にはなれない』みたいで少し辛いけど、勇者がクラビ! あんな力が弱かった奴が、そうなのか」
この時クラビに対する複雑な気持ちが生まれた。
「運動能力も気迫も俺より劣っていたクラビが勇者、どう受け止めていいのか」
女神は言った。
「じゃあ、毎日来て技の練習するから」
マークレイは段々集めた石が棒状になって行った。
「棍棒みたい」
「じゃあ次は光閃掌」
特訓が実り一か月後には大木を打ち破るほどの力が付いた。
「さすが戦いの天才ね」
「ああ」
「どうしたの?」
「いや」
俺は勇者ではないのか、戦いの天才とは言っても。
それって何かが足りないからなのか。
努力でなれんのかな。
「貴方の同級生のマリーディアもクラビ程じゃないけど勇者よ」
「マリーディアも⁉」
これがさらに複雑さを増した。
「俺はクラビと比べ何かが足りないから勇者になれないのか」