ジェイニーの回想と和解
2023年8月20日、部屋の前でのやりとりを追記、改稿しました。
ジェイニーの回想に入る。
ジェイニーが十三歳の時学校旅行で島に行ったがそこでジェイニーの班だけはぐれてしまった。
捜索隊も来ない。何とかメンバーたちは集まって助かろうと知恵を絞った。
「救難信号を送れないか」
「思い切っていかだ作るとか」
「ああ、俺達の無力さを知らされるよ」
ジェイニーは言った。
「そんな、無力なんかじゃない、みんな必死に考えてるじゃない」
「で、ジェイニーは何か案ない?」
「えっ、私は……」
男子生徒達は溜息をついた。
ジェイニーは自分が一番何も出来ないような気持ちになった。
次の日ある男子生徒が言った。
「食料がない。生きる為にはトカゲや蛇も食べなきゃいけないかも」
「えっ⁉ 嫌よそんなの!」
「仕方ないよ」
男子生徒の一人が言った。
「これだから育ちのいい女は……」
これがぐさりとジェイニーを傷つけた。
女子生徒は三人、男子生徒は四人だった。
その夜男子生徒達は女子の所に来た。
「ねえ、毛布とか貸してくれないか?」
「えっ?」
「女の子を野宿させる気?」
「力仕事とか俺らがやってんだぜ。じゃあやってみろよ」
次の日ジェイニーは薪割りをやろうとしたが上手く出来ない。
「貸して見な」
男子生徒はそっけなく言った。
「じゃあ、火を起こして」
これも上手く出来ない。
また怪我をした生徒の応急処置も血を怖がって上手く出来ず他の女子生徒が行った。
「駄目だなあ、だから育ちの良い女は駄目なんだよ」
彼らの言葉にジェイニーは傷つき、夜寝床で泣いた。
結局男子生徒達の工夫で救難信号が届き全員無事に帰れた。
しかしジェイニーの心にしこりは残った。
回想は終る。
再びジェイニーの自室。
「育ちが良いとか、女だからとか二重の意味で馬鹿にされた上に皆の足を引っ張った。あれから自立出来るよう、言われない様様々な努力をした。そんな気持ちも知らないであいつ」
再度ジェイニーはもう少し後の出来事を回想した。
そう、それをきっかけにジェイニーは自分を鍛えるため一人で食料を持たず冒険し始めたのだった。
しばらく帰ってこない約束で。
いかだを作って無人島へ行きサバイバルをした。
魔物の多い地帯を一人で突破するなど。
「はああ!」
行く手を阻む魔物を魔法で倒して行く。
しかし魔力が尽きた時に魔物に囲まれてしまった。
「きゃあ!」
そこに捜索隊の騎士が助けに来た。
家でパルマーは呆れた。
「全く負けず嫌いでここまでするとは」
「私はバカにされたくない」
修行の回想を終わり、ジェイニーの意識は現実の自室に戻った。
そこへノックが聞こえた。
「ジェイニーさん、いい?」
クラビが来た。
「クラビさん」
「あの、大丈夫? ボジャックがきつい事言ってごめん。俺から謝るよ。あまり気にしないで」
「クラビさん、優しい~」
「あ、いや、ボジャックも優しいんだよ。あいつは本気で心配してる時しかあんなに言わない。女の子を巻き込みたくないからかも」
ゾゾは部屋の外ですました顔で聞いていた。
ジェイニーはクラビに言った。
「貴方達の過去、よければ少し聞かせて?」
「あまり聞かない方が良い部分もある気が」
回想に入る。
クラビ達が十四歳の頃の弧児院の近くの裏路地。
「おら、金出せよ」
「ぐっ」
マークレイは同世代の孤児院の外の少年を恐喝した。
もっと年上の男もだ。
そこへリーダーである飄飄したミッシェル少年が来た。
「あーマークレイ、女と子供と年寄りとあまり体の弱そうな人にはやっちゃだめだよ」
「はい」
しかしマークレイは言った。
「クラビお前もやれ」
「はい」
クラビは恐る恐る通行人に言った。
「お、お金をくれませんか?」
「は? 物乞いしてんの」
マークレイ達他の少年たちが来てクラビを怒った。
「馬鹿野郎! それじゃ恐喝じゃねーだろ! もっと強く言え!」
「わ、わかった」
クラビはいきなり他の若者を殴った。
「ぐあ!」
「金を出せ」
「それで良いんだ」
回想は終わる。
「そんな事やってたの?」
「実はね、最初孤児院はそんなに雰囲気悪くなかった。だけど職員が変わって変な人が来てやな人になり皆荒れだしてこういう事をやりだし、皆追い出されたんだ。その後教会に拾われた。今は職員さん良い人に変わったらしい」
「すさまじい、確かに私そんな経験してないわ。ボジャックの言う事もわかる。クラビさんが暴行なんて」
「でもね、こっそりその人に返したりしてたんだ」
「あははっ、優しい!」
「ボジャックもやりたくなかったんだ」
「クラビさんていつもボジャックをかばうよね。素敵なお友達」
「ちっ」
といつの間にか扉の前に来たボジャックは舌打ちした。
ゾゾは言う。
「ボジャックさん機嫌悪いですね」
そして聞いた。
「もしかして二人が仲良くしてるからですか」
「違うよ!」
ジェイニーに大声が聞こえてしまった。
「あ……」
「あんた達何? 盗み聞き?」
「いや……」
「帰って! 帰って!」
クラビは言った。
「ボジャック様子を見に来たんじゃ」
「友達をかばうなんて素敵! え? も、もしかして……様子を見に来たとか?」
ジェイニーはボジャックに視線をやった。
しかし、ボジャックは斜めを向きながら冷たく言った。
「俺はそんなお人好しじゃねえよ」
「な……?」
ボジャックは更に続けた。
「クラビが優しいからって『優しい~』とか言うのって優しい人に依存する事の表れじゃないか。それは甘えだ。甘えてる人はパーティーに必要ない」
「あんたってクラビさんと違って意地悪な事しか言えないの⁉️」
「意地悪⁉️ 甘えてるやつは自分に対する批判を意地悪と解釈するんだ、例外なくな」
「あー、わかったわ! もう付いていかないわ! 弧児だからって貴族を下に見るの止めてよね!」
ボジャックはさらに言った。
「下に見てるわけじゃないが……止めるならその方が良い。ホームシックになられると困るからな」
「ホームシック⁉️ ばかにするのもいい加減にしなさいよ!」
ジェイニーはばたんと扉を閉めた。
クラビはまだ中だがボジャックとゾゾは閉め出された。
ボジャックは舌打ちした。
「けっ! 何がクラビさん素敵、だよ」
ゾゾは陰で見ていた。
「珍しくクラビさんをねたんでる。初めて見た、親友なのに。ボジャックさんも嫉妬するんだ」
女神は心配した。
「パーティーに亀裂が入らなきゃいいけど」
ジェイニーは一転クラビに優しくした。
「クラビさんはよく人の気持ちがわかるね」
「あ、いや俺親の顔知らないから、孤児院で親と不和だった人の気持ちがはじめわからなくて違う立場の人を理解しようと努力したんだよね。それから少し考えられる様になった」
「立派」
その夜ジェイニーが寝てから外で声や物音がしてジェイニーは恐る恐る窓の外を見た。
するとボジャックとゾゾが剣の手合いをしている。
「こんな遅くに? しかも他人の家に泊まった日まで……」
「なあゾゾ、女の子泣かした時は何て言えば良いんだ?」
「えっ‼️」
「弧児院で昔女の子を泣かせた時なかなか関係修復出来なくて、そういうの苦手なんだ」
翌日パルマ―は言った。
「ああ、ちょっと考えてる事があって、もう一日だけここに泊まってくれないか?」
「え、あはい」
ボジャックはジェイニーの部屋に行った。
「すまんです」
「え?」
「さっきは強く言い過ぎた」
「……」
「ごめん泣かせて」
「えっ?」
「さっき泣いてるのを見ちゃったから」
「いいわ、怒ってないから」
「俺に魔法を教えてくれないか?」
「え?」
「俺遠距離攻撃できないから」
「でも一日じゃ」
「一日でがんばるだけ頑張る」
「良いわ、教えてあげる」