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シヴァの傷 手紙と絆

 シヴァの十四歳の頃の回想に入る。

 

 俺の生き別れた家族、母さんと妹のライミ。

 生きてるんだろうか。

 幸せなんだろうか。


 会いに来れないなら仕方ない。

 幸せでありさえすれば。

 でも、本当は。


 そしてサッカーに打ち込み始めた。

 寂しいばかり言っていられない。

 一人前の男になるんだ。サッカーで。


 そして二人が戻って来れるように。

「シヴァ! 頑張って!」


 今日も女の子の声援が飛ぶ。

 しかしシヴァは知ってはいたが決して浮かれなかった。


「シヴァいいなあ」

 と男子たちの羨望の的となった。


「おーい!」

 練習中のシヴァを職員が呼んだ。


「喜ぶんだ! お母様と妹さんから手紙だ!」

「えっ!」


 生きてたんだ。

 この手紙がエネルギーとなり練習にますます打ち込んだ。


 その時拍手をした三十歳ほどの男性がグラウンドに来ていた。

「素晴らしい! 君の技術! よければ内のチームに来てほしい」

「え⁉」


 その男は職員にも伝えた。

 職員は喜んだ。

「素晴らしい! プロの道が開けるなんて!」

「今度契約の打ち合わせに二人で会いたいのですが」


 数日後、シヴァはその男と食事に行った。

 ところが


「あれ、何か眠い」

 シヴァは眠りに落ちた。


 気が付くとシヴァは鎖で手を縛られ牢の中にいた。

 シヴァは目を覚ました。

「え?」


「くっくっく」

 男の声が響き現れた。


「い、一体?」

「俺の名はサブラアイムの戦士ガニクラス。お前をサブラアイム軍に強制入隊させに来た」


「な⁉」

「あっさり騙されたな。もうお前に選択権はないぞ」

「そんな事受けるわけないだろう」


「我々はお前の母と妹の居場所を知っている」

「なっ!」


「会いたいか。会いたければ軍に入れ」

「……」


「ところで俺は手紙を預かっている。これが何だか分かるな」

「ま、まさか」


「そうだ。お前の母の二通目の手紙だ」

「か、返せ」


「くっくっく。お前に死以上の苦痛を与えてやる」

「!」


 ガニクラスは手紙に火をつけた。

 シヴァの何かが弾けた。

「貴様!」


「これで貴様は心の支えを失った。安心して軍に入れ」

「殺してやる‼」


 シヴァはあがいたが鎖は外れずボディパンチを食らった。

「うがああ」


 しかしあがいても外れない。

「許せない! 貴様は親を殺す以上の罪を犯したんだ!」

「だから何だ」


「殺す、殺す、殺す!」

 またボディにパンチを受けシヴァは昏倒した。


 しかしその時シヴァにデュプス神が語り掛けてきた。

「君に力を与える。ただし、一人の人間にいくつも物を与える事は出来ない。サッカーの才能を捨てるのだ。そして戦いの訓練をしてサブラアイム軍を倒すのだ」


 とてつもない力がシヴァに生まれた。

 鎖を引きちぎった。


 ガニクラスを殴り倒した。

「殺す!」


 しかしデュプス神は言った。

「こいつを倒すより逃げる方が先だ」


 シヴァは必死に逃げた。

 デュプス神は言った。

「君に凄い戦いの才能を与えた。ただ勇者ではない。これから隠れていずれ旅立つ勇者クラビと力を合わせるのだ」       

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