新たな戦士
2023年11月11日改稿しました。
マリーディアは残った理性で師匠の言葉を思い出し、怒りに流されない様自分を抑え込み踏ん張った。
「ぐ、ぐぐ」
全神経を自制に使う。
そして静かに精神集中し心が水の様になるのを待った。
するとマリーディアの師匠・アズロの姿が心の中に現れた。
過去の記憶……
アズロはマリーディアの精神に語りかけた。
「憎しみだけで戦ってはいかん。戦いの意味を考えるのだ」
「師匠……」
マリーディアは答えた。
すると、怒りと憎しみに支配されそうだったマリーディアの心が浄化されていった。
すーっと肩の力が抜けて行く。
しかし怒りは消えたわけではなくそれは強い力として残った。強い攻撃力として。
気迫として、相手の心を射る睨みの眼差しとして。
そして一呼吸した後踵を返し強い眼できっとブロキアを見据えた。
そして体勢を落とし、決死の覚悟で突進していった。
「?」
振り切ったマリーディアの剣戟はブロキアを動揺させるに十分な勢いと変化があった。
瞬発力が大きく上がっている。
「何だ?」
「お、押されているのか!」
さらに攻撃を矢継ぎ早に繰り出して行くマリーディア。
ブロキアは押された。
それは怒り任せではなく余分な力がなくなっていた。
「こいつの攻撃が重く、速くなっている!」
目つきが座ったまま悟った様なマリーディアの目を見て思った。
感情の変化だけで変わるわけがない!
それともこいつも勇者?
そして遂にマリーディアはブロキアの上腕部に傷を付けた。
しかし、これにマリーディアは戸惑った。
ブロキアは苦しみながら笑った。
「くっくく、やはりそうか」
マリーディアの勢いが止まってしまった。
いきなりブロキアは槍で左腕を突き刺した。
「!」
血しぶきが飛び散る。
苦しみながらブロキアは言った。
「話は聞いているぞ。お前は血に弱いんだろう」
「!」
マリーディアは秘密を知られ恐怖であとずさりした。
「ぐ、ぐぐ!」
マリーディアは吐き気を催したがこらえた。
しかし耐えるのがぎりぎりだった。
せっかく師匠が助言してくれたのに、ここで自分に負けるわけには。
ぐ、ぐぐ。
そう思って耐え抜く。
マリーディアの心は悟り浄化された聖水の様になっていた所に露骨に争いと死の象徴である大量の血が土足で入り込んできたようでダメージは計り知れなく大きかった。
「はーっはっはっ! 戦士の癖に血が怖いだと⁉ 今度は自分の血で叫んだらどうだ?」
と言いブロキアはマリーディアの腹を刺した。
血が飛び遂にマリーディアは倒れた。
「ふん、次で止めだ」
と剣を構えた瞬間、剣をふさぎ立ちはだかった青年がいた。
気が付いたボジャックはその懐かしい顔に驚いた。
「シヴァ⁉」
マリーディアもゾゾも気が付いた。
それは孤児院時代のマークレイの仲間でありクラビ達を助ける為遣わされた少年・シヴァだった。
「誰だ貴様は」
「マークレイの命令でクラビ達を助けに来た。俺は孤児院出身の戦士、シヴァ・クトールだ」
シヴァの登場と雰囲気と名乗りの気迫に異様な存在感があり場の空気を支配した。
シヴァは続けた。
「皆を助けに、あんた達を倒しに来た。」
ブロキアは返す。
「バカが」
シヴァが言う。
「相変わらず空気を汚くする連中だな。手紙の仇は果たさせてもらう」
「手紙の仇?」
強がりでもなく冷めているわけでもない独特さだ。
唯一無二と言っても良い、他者には真似できない彼しかない確かな存在感がある。
そしてすかさず臨戦態勢になったシヴァは、どんな相手かと慎重に槍でけん制してくるブロキアの攻撃を見事に防御して見せる。
隙がない一方余裕も持って。
実力がなければ出来ない。
そして一旦間合いを取ったシヴァが右腕をまくると何とそこにはクラビと同じ様なブレスレットがあった。
「まさか!」
ボジャック達は驚いた。
シヴァはクラビと形の違うアンカーを射出しブロキアの槍に巻き付けた。
「貴様も神の武具が使えるのか? どうなっているんだ」
そして一旦シヴァはアンカーを引っ込め今度はカードを入れ直した。
そして火炎を出した。