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がむしゃらな自己犠牲

ジェイニーにはまだ残っている切り札があった。

 最上級の火炎魔法。


「ファイヤーガウス」

 彼女が不利ながらも落ち着いているのは、まだ力を出し切っていない為だった。


 しかし本人には「これが効かなかったら」と言う焦りも一方であった。

 またかなり魔法力を消耗する為、二発が限界だ。

 避けられるかも知れないし、失敗したら間合いを詰めてやられるかも知れない。


 魔法使いは近距離の剣での戦いが出来ない。

 詰められない様魔法を連続するしかないのだ。


 戦いの経験から自身が何を考えているのか悟られないふるまいはかなり身に付いていた。

 昔相手に突撃し魔法を放ったりした時に比べ精神面の成長は雲泥の差だった。


 しかしブロキアも歴戦の戦士だけあって、ジェイニーの表情や態度を観察していた。

 あえて言葉には出さずとも。


 あの女、妙に落ち着いているがそれはまだ奥の手があるからだろう。

 あれは無理に強がっている態度ではない。まだ余裕がある。

 俺は幾多の経験から学んでいるんだ。


 ボジャックは小声でゾゾに言った。

「俺達が囮になろう」

「囮?」


「ああ、あのままじゃ間合いを詰められてやられる。だからジェイニーの最上級魔法を出せるよう俺達が前線に出てあいつの注意を引き、魔法を出せる間合いを作るんだ。


「でも俺は良いですけど、ボジャックさんはその怪我じゃ」

「俺はいい、いざとなったら命を捨ててやるさ」

「そんな」

「それに二人でやった方がはるかに攪乱の効果は増す。行くぞ!」


 二人は怪我を押しジェイニーをかばう為前に出た。

「何?」


 ブロキアはどこか二人に違和感を感じた。

 あの女に集中をさせる為だろう。

 捨て身の覚悟が見え見えだ。


 ボジャックはがむしゃらに立ち向かったが少し動きが落ちている。

 ジェイニーは心配した。

 ボジャック、私をかばうために無理を。


 ボジャックはジェイニーにアイコンタクトした。

 俺達が引き付けるから力を溜めるのに集中するんだ。

 ジェイニーは辛かったが心を鬼にして集中した。

 目を瞑る。

 

「うおおお!」

 二人は必死だった。

 しかしブロキアにはまだ余裕がある。


 そこへマリーディアは息を切らしながら来た。

「マリーディア!」

「はあ、はあ」


「クラビはどうしたの?」

「倒れてる」


 マリーディアはクラビとのやり取りを話した。

「うっ!」

 傷ついたクラビは膝から崩れ落ちてしまった。


「クラビ!」

 と言ってマリーディアは肩を貸した。


 しかしクラビは

「俺少しだけ休んだら行くから君は先に行ってくれ」

「そんな!」


「行くんだ!」

 珍しくクラビは強めな調子で言った。

 マリーディアは少し怯えた。


 クラビは謝り訂正した。

「ごめん、強い言い方して。先に行ってください」

「……」


 マリーディアはこくりと頷き先に行った。

 クラビは倒れた。


 一方ボジャック達は奮戦した。

 ブロキアも疲れてはいたがこれでやっと互角だった。


 ジェイニーは集中した。

 これに勝負がかかっている! 

 

 

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