スタグラーの謎の思惑とジェイニー登場
10月18日、及び22日13時58分ジェイニーの外見など改稿しました。
森の中に気配を感じる。
「モンスターか?」
ボジャックは慎重に敵が潜んでいないか辺りを見回した。一見見当たらないが。
「嫌、違います」
ゾゾは確信を持ち言い切るように答えた。
「これは、悪意を持った人間の気配です」
根拠、裏付けはある。
ゾゾは人一倍敏感で気配察知に特に長けている。
剣の師匠アズロから修行して身に付けた能力だからだ。
皆はそれに従い素早く臨戦態勢を整えた。
しかし既に遅かった。
サブラアイム兵が森の道前後を塞ぐように現れた。
前方から現れた四人の兵は既に森で待ち伏せしていた様だ。
前後共両距離は三メートル程、八人いる。
そして司令官らしき男が一人。
ボジャックは叫んだ。
「追っ手か!」
兵の一人は答える。
「貴様らは軍の秘密を知った。それだけではない。貴様は勇者の生まれ変わりだと言う疑いがかかっている。よって捕らえアンドレイ閣下の元へ連れて行く」
クラビとボジャックは叫ぶ。
「何だって⁉」
兵は言う
「ザーゴン様と戦った時激しい光を発したりすごい力を見せかつクラビと名乗っていた事からアンドレイ閣下は勇者の復活と確信したのだ」
新しい司令官らしき男が言う。
前に出てまるで挨拶の様に。
「はじめまして諸君。私は司令官スタグラーだ」
諸君、と言う言い方が皆に違和感を与えた。
妙に礼儀正しかった。
品性もある。
軍人としての威圧感もある。
しかし一方で貴族の様な高貴さも併せ持った、独特の雰囲気である。
ある意味ただ者ではない印象をクラビ達は受けた。
緊張感、圧は少しあるのだが殺気があまりない。
鎧は着ておらず、ナポレオン時代の上流の男の様な服装だ。それからも品性が出ている。
さらさらの白と金が混じった肩近くまである長髪をしている。
何か意味があるような深い笑みをする。
意図的に凄味は出さないが実力から自然に備わっている雰囲気と振る舞いだ。
しかし余裕がありながらも隙も見せない。
これも独特だ。
そしてスタグラーは言った。
「ふふん、アンドレイ様もそうだが、私は勇者の力を感知する力があるのでね」
「そんな能力があるのか」
クラビは思った。
でも、そんな能力がある事を何故言ってしまうんだ?
良く分からないな。
スタグラーはクラビを指差した。
「君は殺さず捕らえてやろう。利用価値があるのでね。他のお仲間二人は知らないが」
殺すではなく利用と言う言い方がクラビの頭に引っ掛かったり
「利用価値? アンドレイにとってって事?」
「いや私にとってだ」
「え、意味が良く分からない」
「まあ、今は敵だが」
スタグラーの話し方は妙に穏やかで悪辣さや粗暴さ、狡猾さがない。
ボジャックは不安ながらも臨戦態勢を取った。
「くっ、やるしかないのか。でも今アンカー使えないんだろ」
「俺とボジャックさんは戦えてもクラビさんは危ないすよ」
ボジャックはクラビに自己犠牲の覚悟を込め言った。
「お前先に逃げろ。あいつらは俺達はそんなに重要視していない。お前が一番目を付けられてるんだ」
しかし、クラビは当然強く拒絶した。
「しかし、俺だけ逃げるなんて!」
ボジャックは表情も調子も変えなかった。
そしてゾゾもボジャックに共感した。
「女神様からも人間からも、クラビさんは未来の希望になる人なんですよ。ここで何かあったら」
二人は完全にクラビを逃がす考えで一致しその方向で動く。
ボジャックは周りを見回した。
「弓兵が三人もいる。厄介だな」
「くそ、アンカーが使えれば遠距離攻撃出来るのに」
そして悪い予感通り弓兵はクラビを狙った。
「危ない!」
弓兵の動きを見ていたボジャックは素早くクラビをかばい飛んだ。
矢がクラビがいた所を通過した。
飛ばなければ当たっていた。
二人は地面に倒れ伏せ泥が付く。
「うおおお!」
チャンスとばかりに倒れた二人に追撃の様に兵が襲い掛かる。
しかしゾゾが即座に庇って立ちふさがり剣で防いだ。
「すまない!」
「ふふん」
相変わらずスタグラーは余裕綽々だ。
ゾゾは感情的になった。
「俺はお前らなんかには負けない」
「何⁉ ガキのくせに!」
兵は怒った。
しかしスタグラーが兵を止めた。
そしてスタグラーはゾゾに呼応した。
「じゃあ、私と勝負してみるか?」
「?」
威圧と言うよりまるで女性を誘う様に笑みを交え力も入らず言っている感じだ。
敵意より「ちょっと様子を見てやろう」と言う雰囲気だ。
ゾゾは戸惑った。
しかし応えた。
「望むところだ、はああっ! え?」
ゾゾが沈黙を切る様に切りかかったが、軽くかわされてしまった。
「速い!」
倒れているボジャック達二人はスタグラーの動きを見て言った。
「ふふん」
とスタグラーは鼻で笑った。
「他愛ない」とでも言いたげだ。
「くそ!」
と珍しく熱くなったゾゾは再度切りかかるが、軽くかわされる。
クラビは思った。
あいつ強い、剣には大して習熟していない俺にも伝わってくる。それに余裕綽々で戦いを楽しんでるみたいだ。
それに勇者の力が分かるってあいつ一体。
人間なのか? 何故そんな能力が。
女神は言った。
「そんな能力のある人間はいないわ。あの人一体」
スタグラーは一通りゾゾの剣をかわし、剣ではなく蹴りでダウンさせて見せた。
「ゾゾ!」
ゾゾは思った。
止めを刺そうと思えば出来るのにバカにしてる。
同時に勝てない相手だと悟った
ゾゾは犠牲になる覚悟で呼びかけた。
「お二人とも、俺に構わず逃げて下さい」
「そんな事!」
「うおおお!」
突然だった。
クラビは突如大声で叫びながらスタグラーの方へ走りだした。
ゾゾを助ける為飛び出した。
ゾゾを助けたい、その一心の気持ちがマグマの様にクラビの心を煮えたぎらせた。
普段クラビは怒らない。
しかし、こういう状況では瞬間湯沸し器のようだ。
しかも使い慣れない剣で。
クラビはゾゾ達が指導を受けたアズロの修行を諸事情で止めていた。
しかしたまにスイッチが入ってしまう。
スタグラーはそれを見て言う。
また楽しそうに。
それを望んでいる様だった。
「おお、勇者の力が見れるかな!」
しかしクラビはこれまでになく感情的だった。
ザーゴンに怒った時と同じ位かもしれない。
「ゾゾから離れろ!」
とクラビは渾身の力でスタグラーに切りかかった。
しかし怒りと勢い空しく軽くかわされ、同様に蹴り倒されてしまった。
「どうした、この程度かな」
スタグラーはみじんも負けると思ってないようだ。
「くそ!」
またクラビは怒った。
何とクラビは剣を捨て素手で殴りかかった。
「なっ!」
スタグラーは少しだけ動揺した。
現れてからは初めてかも知れない。
「どういう事だ? 剣を捨てて素手とは」
クラビは答えない。
ボジャックは思った。
あいつ逆上して冷静さを失ってる。
「面白いな君は。だがまだ私の余裕を崩すにはいたらんが。それとも勇者の力を見せるのか? 私は君に真の英雄になり統治者、神になってほしいのだよ」
「は?」
クラビは意味不明で面食らった。
かなり予想外だ。
その為聞いた。
「アンドレイの命令で俺を殺しに来てるんじゃないのか」
スタグラーは悪びれず言った。
「表向きはそうだ。だが私は君にこれから大きく勇者として成長してもらいゆくゆくは世界の統治者、神に代わる存在になって欲しい。だから殺さない」
ボジャックは困惑している。
「な、何言ってんだ? 意味が分からない」
スタグラーは続ける。
先程までより笑みが少なく真面目な感じになった。
「私は母の怨念で勇者の力が感知出来るようになった。君は迫害された私の母の仇の為これから最強の勇者になって欲しいのだ。これはアンドレイの命令ではない」
ボジャックは再度言った。
「言ってる事が分からない。あんたはアンドレイの部下だろ。俺達を殺すんだろ」
「表向きはそうだが目的は大分異なる。これと私が勇者の力を感知出来る事は軍でも誰も知らない」
ボジャックは信じなかった。
「そんな事普通初対面の相手に言わないだろ、まして敵が。信用しろって言うのかよあんたが表向きだけアンドレイに従ってるって」
スタグラーはさらに真面目になった。
「信用してほしいから初対面でも本当の事を言っているのだ」
「俺に真の勇者になってほしい?」
「スタグラー様、何の話ですか」
兵が聞いた。
「お前達には関係ない、陛下にはだまっていろ」
アンドレイに狙いを知られるわけには行かない。
「しかし、私とて軍人だ。アンドレイ陛下から仰せつかっている以上、君たちを捕らえて連れていく」
「ぐっ」
クラビは後ずさりしたかった。
強い、速すぎてアンカーも当たらないかも。
かと言って剣の腕もすごい。
女神は言う。
「アンカーをスピード重視にして」
クラビはカードをセットしようとした。
スタグラーはクラビがカードセットするのを黙って見ている。
その時、火炎弾が遠くから飛び地面に当たって燃えた。
「誰だ!」
皆が振り向いた。
そこにはクラビ達と同じ十七歳程の少女が立っていた。
魔法を放ち終わり、指を構えたままで火の湯気を指に残しながら立っている姿に思わず敵も味方も足を止め見いった。
現れたタイミングも含め、少女はそれほどの存在感だった。
耳にかかる部分もあるウルフカットの髪型をしている。
そして魔法の構えを終えた後肘を組み勇ましく臨戦態勢を取った。
とても堂々としていて敵に簡単に屈しない心の強さが見て取れる。
正義感が強そうだ。
しかし指や手つきはしなやかで繊細さも表し印象付ける。
すらりとした華奢な体躯だった。
目は真っすぐで睨み怒る眼力は強く、立ち姿も相まってかなり存在感がある。
しかしどこか世間知らずでぼっとした、あどけない印象も受ける目つきだ。
一面的にきつい感じではない。
しっかりした感じ、醒めた感じ、真摯な感じ、透明な感じ、純な感じ、繊細な感じ等多くの印象を彼女の目は内包していた。
ウルフカットの髪も印象付けを手伝う。
クラビ達と違いローブヴォランド、ピエスデストマの用な高そうな良い服を着ていた。
スタグラーと兵は少女を睨んだ。
「魔法使いか」
「貴様も仲間か」
少女は答えた。
「いいえ、通りかかっただけよ!」
その時アンカーが光り作動可能になった。
「よし!」
素早くカードをセットし火炎を放った。
「ぐあ!」
さらに少女も火炎弾を放ち草に燃え移り周囲に火が拡がる。
二つの火は重なって広範囲を燃やした。
火のどさくさに紛れる。
「くそ!」
「今の内に逃げましょう!」
少女のリードで四人は森を駆け抜けた。
少女の方が森に慣れている。
少しして戸惑いが覚めた兵達は追いかけて来た。
すると突如クラビ達は透明になり姿が消えた。
「何? 消えた? いやこれは幻を見せ消えたように見せる術だ」
さらに別方向からも大きな火炎弾が飛んできて兵達を蹴散らした。
少女はそこにいた魔法を使ったらしい貴族の男に言った。
「お父さん!」
「えっ、親?」
親らしき男は叫んだ。
「皆、逃げるんだ!」
「こっちよ!」
一行は必死に逃げた。
走りながら自己紹介した。
「助けてくれてありがとう。僕はクラビ」
「俺はボジャック」
「私はジェイニー、宜しく」
そして父と呼ばれた男も来た。
「兵士達に幻覚魔法をかけておいた。これで見失うだろう」
クラビは気になった。
しかし、あの司令官凄まじく強い……また追って来るだろうか。
いやそれだけじゃなく何を言いたいのか。
俺を英雄にして神にする? 利用か殺すという事か。
と言う疑念は消えなかった。
少女は笑顔で言った。
「案内するわ私の家へ」
そこは貴族の屋敷だった。
二階建てで同じ大きさの窓が並ぶ。
上げ下げ窓がある。
広大な庭園があり薔薇を栽培している。
中庭に面した窓辺が花で飾られる。
大理石の彫刻がある。
サロンや宴会場がある。
書斎がある。
現在だと宿泊施設になりそうだ。
浴室、便座も綺麗だ。
「大きいなあ」
「さっ、入って」
そして案内された。
「私は父親で当主のパルマ―だ」
「ありがとうございます」
クラビは思った。
いい人そうだな。
パルマ―はスマートで顔も良い四十代の男で非常にさわやかで優しい感じだ。
クラビ達を見ても見下しているような感じが微塵もない。
「娘と魔法修行をしていたらおかしな気配を感じてね。間に合って良かった。じゃあ昼食にしよう」
食卓の大きな晩餐会をする部屋に行きテーブルについた。
テーブルは縦長で二十席ある。
召使も多くいる。
銀製の容器がある。
その下に焼いた肉などごちそうがある。
煙が漂う。
クラビとボジャックはなれない雰囲気で緊張しながらも心から礼を言った。
「嬉しいです」
「助けてもらったのに食事まで」
パルマ―は優しく言った。
「気にしないでくれ。これも何かの縁だろう」
クラビ達の服は汚れてふさわしくないがパルマーが雰囲気を作ってくれた。
クラビ達はパルマ―が真に信頼できる人間と認識した。
「いただきます。とても美味しそう」
パルマ―は聞いた。
「君達、家は?」
「僕は住み込み使用人だったんですが追い出されました」
「ええ?」
「で、今は旅を続けています」
今度はジェイニーが聞いた。
「どこへ向かってるの?」
「サブラアイムに調査に行く任務があって、そこで友人と合流します」
再度ジェイニーが聞いた。
「泊まる場所は?」
「お金は一応あるんで宿に泊まります」
「大変ね」
パルマーは言った。
「今日は泊って行きなさい」
「本当ですか?」
クラビは喜んだ。
「嬉しいです! しかしこの肉おいしい! 初めて食べました」
ジェイニーは悪気なく言った。
「えっ、肉食べた事ないの?」
「ジェイニー!」
天然で言ってしまうのが彼女の育ちゆえか。
「ごめんなさい」
「無神経な事を言っちゃいかん」
パルマ―はたしなめた。
ボジャックは言った。
「俺は小さい頃は肉食べた事があるけどね」
「?」
「六歳まではそこそこ裕福な商人の出だった」
ジェイニーは少し間を置いて聞いた。
「調査の旅って? それに何で追われていたの?」
「アンドレイ王を調べて倒して欲しいって依頼なんです。彼は悪魔なんで」
ジェイニーは冗談かと思い受け止めきれなかった。
「あ、アンドレイ王が悪魔? そ、そう……誰からの依頼?」
「め、女神様」
「ええ」
さらにジェイニーの猜疑心が強くなってしまった。
目付きもちょっと変な人を見る目だ。
いちいちバカ正直に本当の事を言うクラビをボジャックは助けた。
「ああ、こいつ少し変わってるんですよ」
「嫌、本当の事を言おう。あと証拠を」
と言ってクラビは女神が入っている瓶を開けた。
「これが女神様……」
これが話を真実と裏付ける証拠となった。
尤もジェイニーは「アンドレイが悪魔」と言う事と同じ位受け止めるのが難しかった。
そしてしばらく女神を見た後ジェイニーは切り出した。
「えっ? 軍と戦って命を狙われてる?」
「はい、だからすぐ去ります」
「でも三人だけで大丈夫なの?」
「あんまり大丈夫じゃない」
ジェイニーは少し考えて言った。
「私、旅に同行していい?」
パルマーは「何を言ってるんだ」と言う調子で聞いた。
「ジェイニー?」
ジェイニーは言う。
決して好奇心や遊びで言ってるのではない真剣さが目や口調から伝わった。
「突然ごめん、でもとても大変な任務で国の人達の事もかかっているんでしょ? 私も力になりたい」
クラビ、ゾゾはさすがに戸惑った。
「ええ、ああ」
ボジャックは思いつめたように無言でいる。
腕を組んでいる。
クラビは言った。
「嬉しいけど、結構危険かも」
ボジャックは突如冷たく言った。
「断わる」
「え?」
クラビは何事かと思った。
ボジャックは続ける。
「そりゃ助けてもらって食事までもらってとっても感謝してます。ただジェイニーさんが同行するって言うのは話が別です」
淡々とだが、少し冷たい調子で、拒否する部分は強調して語気が少し強くなる。
「私じゃ力不足かしら?」
とジェイニーはすぐ怒るのではなく相手の出方と真意を伺い引き出そうとする様な作った薄笑いと口調で答えた。
ケンカ相手を牽制し力と品性を計る様に。
しかしボジャックは巌としており時々語気を強くし説明する。
「いや、その、魔法使いとしての力は申し分なさそうなんだけど、何て言うか、はっきり言うけど、あんたはお金持ちで育ちが良い貴族のお嬢さんだ。だからさらに言うと育ちの良い貴族の女なんて旅の足手まといになる」
強い拒絶姿勢を調子で表現する。
優しさではなくジェイニーを見下す感じが出ている。
「……」
ジェイニーはぴくんとし、これに反応した。
「はっきりいうわね、私が何も出来ないみたいに」
少しジェイニーの怒りの温度が上がっている。
目じりが上がった。
彼女は沸点が低そうなイメージがある。
まだ爆発してなくても。
不器用な薄笑いが怖い。
「ふーん」
ジェイニーは肘を着いてボジャックを覗きこむ
苛立ちで貧乏ゆすりを始めた。
顔が徐々に赤くなりテーブルが震える。
クラビとゾゾも少し震えている。
「雰囲気やばい」
と感じたクラビはフォローした。
「いや、こいつは女の子を巻き込みたくないんだよ、こいつ素直じゃないから」
しかし逆効果でボジャックは余計きつく言った。
「うるせえなそんな理由じゃねえよ。例えば俺達は食べ物が無くても我慢できるけど彼女だけ我慢出来なくなるかもしれないだろ。それに野宿するかもしれないし」
「我慢するわ」
やや隠しきれない自信のなさがあった。
「やった事あるの?」
嫌な言い方をボジャックはする。
ゾゾは言う。
「俺も反対です」
ボジャック程きつくはないが。
ボジャックは続ける。
「温室育ちで俺達みたいな野良犬とは違うから駄目っぽいよ。それにあんたは無理して同行する必要性もない」
ジェイニーは段々怒りを態度に見せ始めた。
そして目の奥の怒りの炎が薄ら笑いを破壊していく。
声がじわじわ大きくなる。
「何でこういう事はやったことないって知った様に言うの? 私の人生何でも知ってるって言うの?」
「うっ!」
何て口喧嘩の強さ……
「もういいわ!」
ついに怒った。
「食べるだけ食べて嫌み言わないでよね。後、私が心配だからだ、って言うのも止めてね」
「あーまったまった」
パルマーは「いつもの事か」と言う顔をした。
彼女を抑えるのは慣れているようだ。
ジェイニーはばんとテーブルを叩き席を立った。
パルマ―は抑えた。
「まあ気にしないでくれ」
何よ馬鹿にして、私が女だからって言うのもあるんじゃ……
ジェイニーは悔し涙を流しながら自室にこもり明かりを消し机に座った。
ボジャックに言われた事で過去の辛かった記憶が思い起こされた。
ジェイニーの回想に入る。