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町中の騒ぎ

2023年11月12日改稿しました。

 ジェイニーの浮かない様子にボジャックは気づいた。

「毒はもう抜けたか」

「うん、完全に」


 ボジャックはジェイニーを気遣った。

「しかし、解毒剤が後一個しかなかった。あの時処置できなかったら……やはりヒーラーが必要かもしれないな」


 ゾゾは言う。

「ヒーラーなしでここまで戦ってこれたの奇跡的です」


 ボジャックは説明する。

「普通、パーティは役割から逆算してメンバーを集めるんだ。体の大きい戦士がほしい、とか。だけど俺達は成り行きみたいな形で出来たパーティだ」


 ジェイニーはここ最近を振り返った。

「何か運命がここ数日で一気に変わっちゃった」


「でもジェイニーはすごい積極性で自分の意思で俺達に加わったんだ。すごい決断力が自分を変えたんだよ」


 ゾゾも褒めた。

「あんな短い時間で決断出来るってすごいですよね」

「うん、勢いが少し勝っちゃったけど後悔は全然してないわ」


 マリーディアは言う。

「でも役割からじゃなくて成り行きの運命で一緒になったパーティだけど、私も入って本当に良かった。皆すごく良い人で信頼も強いし」


「ジェイニーとマリーディアが立て続けに入ってくれなかったら人員不足だった」


 ゾゾは疑問を投げかけた。

「マリーディアさんって何で旅に同行する事決めたんでしたっけ」

「え⁉」


 マリーディアはあたふたした。

 クラビは言った。

「何か夢の続きが見たいって言ってたよね」

「な、何でもないわ、こっちの話」


 その頃サブラアイム城ではスタグラー一人でいる所に参謀ジョルジョが含み笑いをしながらやって来た。

 

 その表情にスタグラーは不信感を抱いた。

「何だ?」


「貴方は私達に、アンドレイ様に何か秘密を隠していますね」

「何の秘密だ?」

「どうも貴方はアンドレイ様と違う目的で戦い勇者を追っていませんか」


「根拠はあるのか」

 二人の間に緊張が走る。

 

 言いたい事は早く言えとばかりにスタグラーは圧をかけていた。

 しかしジョルジョはにやりとして自分のペースを崩さない。


「貴方はうっかり『私には勇者の力が感知出来る』とある時漏らしてしまったのです。それを聞いてから私はずっと貴方の様子を伺ってたのです。貴方は何か企んでアンドレイ様に反逆しようとしていませんか」


「反逆など考えてはいない。違う目的はあるかも知れないが」

 ジョルジョは思った。

 この男、アンドレイ様の恐ろしさを見ているくせにあまり恐れた感じがない。


 スタグラーは背を向け毅然と言った。

「今の所アンドレイ様とは目的は同じだ。だから戦っている。私は何を探られても後ろめたい事はない。そんな生き方はしていない」


 その毅然ぶりにジョルジョは「本当に何もないのか」と思った。

 何よりアンドレイをあまり恐れていない様な態度がジョルジョには不気味に思えた。


 スタグラーは思った。

 今はアンドレイの命令を聞いていても良い。しかしクラビには神の様な勇者になってもらわば困るのだ。

 アンドレイとは別れる事になるが、私は反逆処刑される程間抜けではない。


 ジョルジョは思い出したように言った。

「おっとそろそろあの作戦の決行時間ですな。今度こそ勇者一派を叩き潰せるでしょう」 


 一方クラビ達は町の訓練場で特訓をしていた。

 ボジャックとマリーディアは手合いをしていた。


「レベルは俺達の方が上でもクラビの方が能力の伸び方が早い。クラビに負担をかけすぎない様俺達も特訓する必要がある」


 その時、外が騒ぎになっていた。

 特訓が一段落して一行は外に出た。

「どうしたんですか?」


「家畜や番犬が狂暴な魔物の様に暴れだし人を襲ってるんだ。その事を調査しに来たデュプス城の兵士達が今対処してる」


 そして、凄い速さでそこへ牛が走り込んで来た。

「うわ来たっ!」


「あれ牛か本当に!」

 そのまま、ボジャックに体当たりしそうになった。


 するとスキル『超怪力レベル二』が発動した。

「うおおお」


 牛を受け止め投げ飛ばして見せた。

「凄い怪力!」


 ゾゾは驚いた。

 ボジャックは言う。

「咄嗟の行動で習得発動したんだ。クラビも幾つも危険な状況でスキルを会得してるし」


 その頃サブラアイム軍の三司令官が来ていた。

 僧正の様な男とスタグラー、そして先日会ったジルバシュタインだった。


 ジルバシュタインはニヤリとしながら手から発したエネルギーを町中におもむろに放った。

 弾が大爆発し建物は瓦解した。


「!」

 クラビは気づいた。

 スタグラーだけじゃない、あのとんでもない力を感じた大男も来てる!」


 一方ジルバシュタインは帰還の準備をしていた 

「よし、俺はアンドレイ様から命を受けているから行くが、後は任せたぞ。お前らがいれば勇者一行は倒せるだろうが」


 一方ボジャック達のいる場所。

 町の向こうからまた騒ぐ声が聞こえた。

「大変だ! 手首に見た事もない武器を付けた人がそこから火を出したりして暴れてる!」


 クラビは驚いた。

「何だって⁉」

 もしかして神の武具を使う人が?   



11月5日もう1話投稿します。

後書きにもう1話投稿しますと書きましたが、体調不良になり出来ませんでした。申し訳ありませんでした。

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