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そして再戦

 ボジャックの回想が終わり皆は昼から近くの広場で特訓していた。

 ゾゾは言った。

「しかし、再戦が三日後って完全に馬鹿にしてますよね。三日でどれだけ伸びるんだっていう」


 マリーディアは言った。

「ただ、勝手な解釈だけどクラビやボジャックがすごく伸びが早いと思って高く評価してる意味ともとれるかも。ボジャックの事勧誘してたし」


 ゾゾは言った。

「俺としては『俺らが雇ってやるよ』って言うような皮肉や嫌味に少し聞こえましたね」


 ボジャックは言った。

「あいつ、あまり再戦を長引かせるとアンドレイや上官が許さないからかも知れない。早めに叩いておこうってのもあるかも。ゾゾの言う通り、俺もやっぱり皮肉に聞こえたな。評価してるとはあまり思わない」


 クラビは言う。

「高い飯おごってくれたけどね」

 

 ジェイニーは言う。

「それも『俺は金持ちなんだぞ』って言う皮肉にも聞こえるけどね。薬とかくれたけどさ」


 クラビは言った。

「あいつ、『お前らが生かすに値する人間かどうか話を聞く』って随分意味深な事言ってたね。何か他のサブラアイムとは違う気がする」


 ボジャックは言った。

「確かにあいつにあんなに戦う理由を聞かれるとは思わなかったな。ハッとして考えるいい機会になったけど」


 ジェイニーは言った。

「でも、私達じゃなくても『このために戦ってる!』って完璧に答えられる人ってそういないと思う。そういうものだと思う」


 ゾゾは言った。

「あいつは何の為に戦ってんすかね。アンドレイへの忠誠? それとも地位や名誉?」


 クラビは言った。

「アンドレイに共鳴してんのかな。あまり言いなりにされてる感じじゃなくそういう所も異質だったけど」


 ボジャックは言った。

「さて特訓再開だ。で言うの遅れたけど、再戦は俺とクラビだけでやらせてくれ」

「えっ⁉ 何でっすか!」


「五人で勝っても自慢にならないし、あいつだって『大勢いたから負けた』って言うかも知れないだろ。俺にもプライドある。ただ一人じゃ無理だからクラビもね。だからガンガン特訓してくれ」

 

 ゾゾは剣を持ちクラビに向かった。

「行きますよ。『毒海蛇の舞い!』


 クラビはこれを勇者の魂で受け止めようとする。

「これで勇者の魂のコントロール力を上げるんだ」


 そしてゾゾの技を防ごうとした。

 クラビの両手から勇者の魂が気体となって出る。


「はあああ」 

 それがゾゾの技の威力を中和した。

 だが防ぎきれない、軽減はしたが吹き飛ばされた。


「ぐわ!」

「大丈夫すか!」

 ゾゾは駆け寄った。


「大丈夫、後、剣の修行今からしてもあいつには勝てない。だから勇者の魂のコントロール特訓に絞るんだ。それと俺には『ダメージと経験値三十パーセントアップ』のスキルがある」


 マリーディアは心配した。

「相変わらず無茶な努力をする人ね」


「うん、でも、俺なぜか熱くなってるんだ。これまでアンドレイ打倒や孤児院を守るためにやったけど、あいつとは個人的に戦いたいんだ」


 マリーディアは言った。

「女の私にはあまり分からない。それにクラビが『勝ちたい勝ちたい』って言うの珍しいわね。少し変わったかな」


 女神は等身大化した。

「次は私が付き合うわ。私はある程度勇者の魂を抑えられる。思い切り来ていいわ!」


 一方、ボジャックは思った。

 あいつは俺の心を見透かす様に戦う理由を聞いてきた。

 

 何か悔しかった。

 でもおかげで考える機会になった。


 だからあいつとの戦いで自分の気持ちを証明したいんだ。

 たとえあいつに心臓コーティングがされてて勝てなくとも。

 自分に納得できる生き方をしたいんだ。


 一方、サブラアイム城。

 アンドレイはビスコに言った。


「心臓コーティングは外した」

「ありがとうございます」


「ただしこれが原因で負けた場合は責任を取ってもらうぞ。覚悟はいいな」

「はい」


 そして再戦当日。

 またこの前の場所に十五時頃一行は行った。


「よう」

 まるで友人に会うかの様にビスコは現れた。

「そろそろ始めようか。ところでお前らは負けたら何を賭けるんだ」


「え?」

「例えばサブラアイムに二度と逆らわないとかさ」


 クラビは答えた。

「死でいいよ。例え命があっても、お前らの言いなりにだけはなれない」

「俺もだ」


「ふん、じゃあ負けたら二人ともサブラアイムに入ってもらうぜ」

「そんな事!」


「後、ジェイニーをもらう」

「は⁉️」


「いい加減にしなさいよあんた! ひっぱたくわよ!」

「じゃあ、俺に勝てよ」


 制する様にボジャックは言った。

「よし、俺がまずは行く」


 静寂が流れる。

 そして切り裂く様に火をつけた。


「地剣爆斬!」

「ぬっ!」


 ビスコはこれをかろうじて避けた。

 少しひやひやしている。


 ボジャックは畳み込む。

「もう一発だ!」

「ぐっ!」


 ビスコは今度は地剣爆斬を正面から食った。

 あまり効いていないが、こう思っていた。


 威力はそんなでもないが、目つきと気迫が全然違う。

 三日で何があったって言うんだ。


 そしてクラビは言った。

「次は俺の番だ! 勇者の魂・火炎撃!」

「ぬっ!」


 三日前より距離も範囲も明らかに上がっていた。

「ぬっ! 明らかに前と違う!」


 ビスコは魔炎流で全身を覆うバリアを作った。

「ぬうう! 温度が上がっている。こいつ計り知れない。ここでやはり殺すべきなのか」


 クラビは火炎撃を止めた。

 そして腰を落とした。


「この前の続きだ! 『勇者の魂・怒りの鉄拳』!」

「迎え撃ってやる!」


 ビスコも魔炎流ブレーキングを繰り出した。

 一切避けることはなく真っ向からぶつかった。


「うおおお!」

「ぬうう!」


 こいつ、前とは比べ物にならない! どうなっているんだ!

 クラビがどんどん押していく。


 そして

「うおおおお!」

「ぐあ!」


 クラビは押し勝ちついにビスコをダウンさせた。

 しかし、クラビは力尽きダウンした。


 ところがビスコは立ち上がった。

 少し息を切らしてはいるが。


「ふふ、俺は魔炎流を先の事を考え少し抑えてたのよ。お前との競り合いには負けたが余力は俺の方がある。ここでとどめを刺してやる!」


 ビスコは剣を突き立てた。

 するとボジャックは突如乱入し剣をビスコの心臓に刺した。

「ぐ!」


 血が噴き出した。

「え? コーティングされてるんじゃなかったのか⁉」

 

 





 

 


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