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狩りと腕試し アンカーの力を試そう

念のためですが、動物の画像を削除しました。

 どこまでも続く平原と大地、旅人用に作られた長い長い道、美しい木々が繋がる。

 場面は現代に戻りボジャックは言う。

「よし、旅の始まりだ! 吉と出るか凶と出るかだけど、全部受け止めて踏み越えてやる!」


 クラビはあまり元気がない。

「あまり自信ないからリーダー任すよ」

「お前がリーダーだろ! もっと胸を張って歩け!」


 ゾゾも言う。

「背筋を伸ばしてリーダーとして頑張ってください!」

「はあ」

 クラビは溜息をついた。


 ボジャックは言った。

「でもさ昔のクラビってどう見ても窃盗団って顔じゃなかったよな。マークレイが無理やり入れたようなもんだけど」


 クラビは謙遜した。 

「やりたくなかったよ本当。罪の意識で一杯だった。本当に断りたかったさ。 でも俺は弱いし、マークレイ達の方がはるかに強かったし」


 ボジャックは言う。

「マークレイ怖いよな。十二歳位までは皆に好かれる良いリーダーだったけど荒れはじめて暴れたり窃盗団立ち上げたし。何であんなに変わったのかな」


 ゾゾは言った。

「やはり、死んだと思ってた親が見つかったからじゃないですかね。何で俺を捨てたんだと。愛されてる自信がなくなったとか」


「成程、あいつはある意味孤児で親が見つかる前の方が心が強かったんだ。でも愛してるのか分からない親の出現で自信とかがぐらついた、とかなのか」

「窃盗サブリーダーになっちゃった」


 ボジャックは言う。

「俺は窃盗団で獲物を見つける先導役だったけど。あっ獲物っていえばさ狩りしないかモンスターを」

「いいすね」


 ボジャックは気づいた。

「そのアンカーを使えばお宝を持った強いモンスターとも戦えそうだ」


 クラビは言った。

「あっでも、あまり私利私欲の為使うとまずいそうなんだ」


「そうなの? 女神さん」

「うん、でもまあ少し位はいいわ、貴方達とっても苦労したから」


 ボジャックは思いついた。

「じゃあやろうぜ。クラビも上手い物食ったりしないとまたケーキ事件みたいなの起こすかも知れないぞ。それにアンカーの威力がどれくらいか把握しておきたいから」


 こうして三人は道なりに進みながらも少し外れ、狩りを始めた。

「最初は肩慣らしに弱いモンスターから」


 そして野犬を見つけた。

 ミニチュア・ピンシャーの様で体のほとんどが黒いが足の下部は茶色の少しドーベルマンに似た手足が長い細身の犬だ。

「あいつがちょうど良い」


(※ミニチュア・ピンシャー:重さ四~五キロ。ドイツに住む。現代の国際畜犬連盟(FCI)では第二の番犬、救助犬グループに分けられる)


 しかし予想に反して犬は向かってこず逃げた。 

一見凶暴そうだったが、自分一匹では勝てないと悟り仲間を呼びに行ったのか。


 動物ながら中々賢く見える。

 飛んで火にいる夏の虫と言う程無計画ではなさそうだ。


 仲間がいる事を警戒しながら三人が犬を追っていくと同じ犬でなく仲間らしい大ウサギとボスらしいサイがいた。


「ウサギとサイが仲間なのか。なんでサイが犬と組むんだ? 成り行きがわからん。意思の疎通できるのか」

「アンドレイの力が関係しているのかも」


 そして犬は二匹と合流するとすかさずクラビ達に向き直り吠え戦闘態勢に入った。

 犬と大ウサギ、サイの怪物のグループと戦う事になった。


 サイは黄褐色のシロサイ。

 肩高が一メートル五十~一メートル九十、二本の角の内前が長く一メートル六十メートルある。



 ウサギはモリウサギの様だ。

(※モリウサギ:通常は大きさ二十五~四十センチ、耳は四~五センチ、メキシコ東部から南アメリカに住む)


 (ミニチュア・ピンシャー)は勿論、飼い慣らされた物より狂暴さが上で、吠えたり舌を出しながら首を上下移動させる。

 がるがるはふはふ言う回数からも育ちの悪さが見て取れる。


 闘争心全開で早く噛みつきたいと言わんばかりだ。

 いや噛みつくどころか今にも人間を食べそうな雰囲気すらある。

「はっはっはっ」と言うのがまるで人間が性欲を表現している様だ。


 大モリウサギは全長一メートルを超えている。

 ふわりとした体と毛に覆われている。

 

 暴れたり吠えてはいないがそこには静止した姿勢で一点獲物を狙う目付きがある。

 

 獲物を捉える為の集中力を感じる。

 瞬発力のある足で飛びかかるためタイミングを狙っている感じだ。


「うさぎって草食動物だろ、何故襲いかかって来るんだ。この国の生態系でもおかしくなっているのか」

 女神は言った。

「アンドレイ達の魔力で国の動物達が狂暴化してるのよ」


 ゾゾは言う。

「異種動物のパワーファイターと小型の奴が混じってる、人間のパーティーみたい」

「あのサイが注意だな。デカいし突進とか」


 普段はのんびりしているはずの巨大なサイはいきり立ち、ふうふう言いながら突進準備で地面を前足で蹴っている。


 蹄ががりがり音を立てる。

 踏まれた地面がへこむ、ドルドル音を立てる。


 鼻の角を前に出し威嚇する。

 目は眠そうで顔のしわも人間の老人の様に丸くなった印象を与える。

 しかし、呑気そうな雰囲気に反してまるで興奮剤を撃たれた様に怒っている。


「去勢が必要な位すごいな」

 完全にその気になり戦闘態勢だ。

 闘牛の様だ。

 

 クラビ達が構えるとサイは挑発に乗るかの如くそれに呼応する。

 突進の時が近づく。

 体当たりすれば馬車くらいはひっくり返せそうだ。


 そこでまずクラビはアンカーの火炎で威嚇しひるませ、サイを突進しようと誘いさらにむきにさせようとした。

 

 ボジャックは言う。

「カウンターアタックの威力を上げるためにあいつの突進スピードをさらに上げるんだ。その為に興奮させるんだ」


 クラビは火のカードを入れた。

 するとアンカーの先端が変化し火を放った。


 広範囲型で射程は短く当たらなかった。

 しかし威嚇に十分の効果を発揮した。


 そして狙い通り、サイは興奮した。

 ウオオと猛り狂い、突っ込もうと勢いを付ける。

 牛が赤い物を見た時の反応の様だ。


 ボジャックはタイミングを見計らい、突進して来た所をカウンターで狙った。

 強い勢いを利用し剣で重い一撃を浴びせた。

 まず勢いを殺す為、腹と前足の間を刺した。


 苦しんでいる時動けなくする為足を刺した。

 さらに頭部を刺すとサイは絶叫した。

 さらに胴体を何ヵ所か刺して切るとサイはずずんと巨体を横たえた。 

 

 ウサギと犬はゾソが相手をした。

 少し動きは早いがウサギは距離が近くなって飛びかかった所をゾゾがついて倒し犬も続いて倒した。

 

 ボジャックは死体を見て思った。

「サイって皮膚と角が高く売れるらしいぜ」

 

 女神は釘を刺した。

「あまりお金儲けに走らないでね」


「こういう時抑えてくれたのがクラビなんですよ」

 ボジャックはクラビに感謝し褒めた。


「お前は盗んだ物返しに行ってたんだろ」

「ん」


 さらに褒めた。

「だから尊敬されるんだよ」

「クラビさんてじわじわいい所が伝わる人すよね」


 しばらくして今度は三メートルはある巨大な魔物トロールに遭遇した。

「こんなやつが道端を!」

「こいつは強そうだぞ、大丈夫か」

 

 巨人、巨体と言うにふさわしい。

 屈強な人間をも遥かに上回る腕の太さ。

 こん棒を軽々持ち上げそうだ。


 少し贅肉はあっても凄まじく盛り上がった胸の筋肉。

 贅肉は多いがパワーを感じさせる胴回り。

 

 それを支える短いが太く屈強そうな足。

 本来冒険したての冒険者がかなう相手ではない。


「『重』と『投げ』のカードを!」

 女神が指示し、素早くクラビはインストールする。


 対峙しているトロールは怪力に任せて岩を投げた。

「木を引っこ抜いた時と同じ要領で!」


 クラビはアンカーを飛んで来る岩に吸い付け動きを止めた。

 そして落ちた岩を持ち上げ振り回した。


 クラビは自分の体が自分で無い様だった。

「すげえ!」


 そして岩を投げ返した。惜しくも命中せず避けられてしまったがトロールを動揺させるに十分だった。

「高速移動」をゾゾが使い、華麗な動きでトロールをかく乱する。


 そして隙をついてボジャックが切り込む。

 胸を切り、足を切り血しぶきが飛ぶ。

 ゾソも腕と腹を刺した。


 悲鳴を上げ腕を押さえるトロールの顔面に今度はクラビが「重」のカードを入れ攻撃を重くしたアンカーを当てると流石に倒れた。


「よし、やったぞ!」

 そして皆で倒れた所を刺して絶命させた。


「次の魔物に行こう。経験と金を集め、俺達のコンビネーションもアップさせないと」


 そして探索していくと今度は大きな熊が出現した。

 よく大きな魔物に出会う。 

 

 ヒグマの様だ。

(※ヒグマ:ネコ目クマ科。大きさ一メートル八十~三メートル、爪の長さ六~十センチ、ユーラシア大陸から北アメリカまで広い範囲に住む。様々な亜種がいる。草や果実、肉を食べる)



 

 トロール程でないが巨体が立ちはだかる。

 のろいトロールとは違う。熊は大きくても速い。


 ヒグマは大きく低い声を上げ殺意のこもった目で睨む。目はあまり良くないが音とにおいにびんかんだ。

 牙と爪で今にも切り裂かんと獰猛さをアピールするかの様だ。


 全身で殺人態勢を表している。

 黒で丸っこい目付きが獲物を覗き込む。

 

 殺人者が刃物をペロリとして殺人衝動を確認するかの様だ。

 瞬発力を支える足。


「こ、今度は狂暴そうだぞ特に爪に気を付けろ!」

「良し」


 クラビは火のカードを入れアンカーを振り回す。

 さっきまで狂暴で隙一つ見せなかったが、火に怯え立ち尽くすヒグマ。


 防御ががら空きだ。

 そこから奇襲的に火炎放射を浴びせると見事に利き腕に命中した。


 ヒグマは悲鳴を上げ痛がり、手を振って火を消そうとしたが駄目だった。手全体が焼け焦げていく。

 

 この為熊の得意な爪攻撃は使えなくなった。

「よし行ける!」


 勿論細心の注意で攻撃を食らわないように気を付け、「怪力」のスキルをかけ攻撃力をあげるボジャックはすかさず切り込みヒグマの厚い肉を切る。


 ズバリと音がして手応えがありこれが致命打になった。

 ボジャックは言う。


「アンカーの威力はやっぱすげえよ。今のレベルじゃ勝ちにくい魔物でも勝てる。経験が多く入るぞ」


「よし近くに魔物の気配が無くなったしここで一旦特訓しよう」

「アンカーで俺達を攻撃してくれ!」


 急に特訓大会になった。

 言われたクラビはまず「高速」の状態にしスピードに自信のあるゾゾを攻撃した。


 素早い動きで伸縮するアンカーをかわすゾゾ、何発かかわして見せたが、汗が出始めた。


「速い……」

 剣で上手く防ごうとしたが弾かれてしまった。 

「しかも硬い……」


 ボジャックは行った。

「よし次は俺だ。『怪力』のスキルをかけた状態でアンカーを正面から受け止める」


「大丈夫か?」

「重くきついものを持ち上げて耐える程レベルアップが早くなるんだ」


 頼み通りクラビはボジャックめがけアンカーを放った。

「いくぞ! 上手く受け止めろ!」

「おう!」

 

 鉛の固まりが射出され空気を切り、ごうごうと音を立てボジャックめがけ高速で飛び向かった。


 緊張が走る。

 対するボジャックはまるでドッジボールの体勢である。


「ぐぐ!」

 重いアンカーを受けるのは不可能に見える中ボジャックは真っ正面から受け止めた。

 

 全身に凄まじい衝撃が走る。

 後退りした。


「うおお」

 両者が踏ん張る、そして、何とかボジャックがはじいた。


 短い時間で疲労困憊だった。

「はあ、はあ、弾いたのはいいけどもう力がない。そう言えばお前の努力とかでアンカーの威力上がるのか?」


「ええ、努力、鍛錬によって勇者の力を引き出す事によりアンカーの力が上乗せされるわ」

「じゃあ剣の特訓をしよう」


 ボジャックは疲れた。

「はあ、疲れた。そろそろ食事だからお金を持ってそうなモンスターを狙おうぜ」

「それがね、あまりお金儲けに使うと駄目になったりするのよ」

 女神は言った。


 しかしボジャックはお金を持っている有名なモンスターゴールドシェパードを狙った。

 迫って来たゴールドシェパードを切り逃げたのを追いかけて倒した。


「やった! こいつの皮は高く売れるんだ。これで儲かるぞ」

「あっアンカーの光が消えちゃった」


 女神は説明した。

「アンカーを欲望で使うとしばらく機能停止したりするの」


「すこーし贅沢したかっただけなんだけどなあ」

「しかし、アンカーが使えないんじゃ強力な魔物が出るとまずいすよ。早めに宿に行きましょう」


 そして一行は森の中に入り進んで行った。

「案の定アンカーも調子がおかしくなってきた」

「ん?」

 ゾゾは何かを感じた。


「何だ?」

「悪い気配が」

使用した画像は無料の物です。

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