若き司令官
2023年9月16日追記しました。
最後が手違いで切れていたため直しました。
「次は俺が行きますよ」
ここサブラアイムの基地において。
サブラアイムの少年司令官、ビスコは実に堂々としていた。
彼は十七歳。
クラビ達と同じ年の少年だ。
他の年上のサブラアイムの戦士たちは当然反感を持ち警戒もする。
その空気の中ビスコは言った。
「次は俺が行きますよ。勇者達の力がどんなもんかみてやります。そして必ず倒します」
このセリフがかなり皆の心にひっかかった。
ドードリアスは言った。
「思いあがるな小僧。我々でも辛酸を嘗めている相手だぞ。恐らくお前では負ける」
「大丈夫です」
意外にビスコの言い方は軽くない印象がある。
「大丈夫です。必ず陛下と皆さんの期待に応えます」
スタグラーは少しだけ笑みを浮かべていたが何も言わなかった。
「後、僕には兵をつけなくていいです」
ドードリアス達は怒った。
「何⁉」
「相手を舐めているんじゃありません。ちょっと作戦があるんで」
とだけ言って彼は出発した。
軽いようで自信と威厳もあるような不思議な雰囲気だ。
「あいつ、アンドレイ陛下に特別扱いでもされてるのか?」
「戦いの結果を出してるからか。それともあの件か」
スタグラーは笑みを浮かべて言った。
「まあ、彼は生意気と呼ばれる一歩手前で礼儀を見せたり結果を出している。世渡り上手なものだ」
クラビ達は休憩の為町に立ち寄った。
そこへ声が聞こえた。
人が集まる中、そこにはビスコが倒れていた。
うずくまり苦しそうだ。
駆けよったクラビは抱えようとした。
「君! しっかりしろ!」
「い、いたい」
クラビは前に出てビスコをおぶった。
「病院へ行こう」
そしてクラビは背負い走り出した。
ボジャック達も走る。
ビスコはにやりとしていた。
走りながら病院に近づくとクラビは言った。
「もう少しだ!」
「くっくく、見ず知らずの相手を必死に救おうとするとは、君は勇者のうまれかわりだけあるね」
「!」
クラビは走りを止めた。
「君は一体⁉」
ビスコは背中から降りた。
「ふふん、俺はビスコ。一応サブラアイムの司令官さ」
「司令官⁉」
ビスコは続けた。
「ふん、なかなか勇者にふさわしい人格と器を持っているようだな。今度は力を試させてもらおう」
クラビは拒否した。
「ここだと町の人が巻き込まれる」
ビスコは答えた。
「街はずれでやろう」
ビスコは意外にも他人を巻き込まないように移動した。
皆はそれが不思議で違和感を感じた。
ビスコは余裕綽々だ。
「さてと、じゃあ戦おうか。本気でやろう」
皆は身構えた。
ビスコは言った。
「あ、そうそう、勇者以外いなくていいよ。意味ないから」
「何⁉」
これは皆を苛立たせた。
さらに言った。
「て言うかね。君らじゃ俺を殺せないんだ絶対に」
ボジャックは言った。
「舐められたな」
「言い方が悪かったか。じゃあ試しに剣で俺の心臓刺して見ろよ」
とビスコは言った。
ゾゾは言った。
「見え見えの罠振ってんな!」
ビスコはこいつらバカだと言う顔をしている。
「どう解釈してもいいけど俺の言いたい事を知りたければやれよ」
ボジャックは言った。
「……よし」
迷った後ボジャックは剣を持った。
そして走り出した。
ビスコは全く逃げない。
そのままボジャックは突進する。
そしてずがんと言う衝撃と共に本当に胸に剣が突き刺さった。
ところが血が出ていない。
ボジャックは危惧した。
「どういう事だ?」
「俺の心臓はアンドレイ様の魔力で特殊な『魔力コーティング』がされているんだ。これはあらゆる物理攻撃から心臓を守る。これを破るのは勇者の魂を流し込むしかないのさ。だから俺を倒せるのは勇者だけなんだ」
ボジャックは何も言えず剣を抜いた。
そしてクラビは前に出た。
「じゃあ、俺が相手するよ」
「そう来なくちゃな」
ビスコは乗ってきた。
二人は向き合った。
クラビはいきなり構え大技に言った。
「勇者の魂・火炎撃!」
火炎は放出されたが全く効いていない。
と言うか、体に届いていない。
「効いてないのか? それともバリアみたいなのがあるのか? よし!」
クラビは腰を落とした。
「うおおお」
「!」
「勇者の魂・怒りの鉄拳!」
クラビは拳を振り上げ殴りかかった。
「ふん!」
何とビスコは同じく拳で迎え撃とうとする。
「あいつ拳で受ける気か!」
そして二人の拳が正面からぶつかった。
まるで力比べだ。
「ぐうう!」
ボジャックは言った。
「あいつの手からも何か出てるぞ!」
ビスコは答えた。
「そうだ、これは勇者の魂の悪人版とでもいうかな? 魔炎流だ!」
「魔炎流⁉」
そして拳同士の押し合いはクラビが押され始め
た。
「ぐ、ぐうう!」
両者の拳から出る特殊エネルギーがぶつかったためまるで蒸気の様に湯気、気体が出ている。
クラビも執念で踏ん張る。
しかし気体がビスコの方が多いのがはためにも分かり伝わる。
女神は言った。
「そんな、クラビも大量の魂を持っているのに、彼の方が多い!」
魔炎流の拳がどんどん強くなりクラビは吹き飛ばされそうになる。ビスコは勝負ところと見て力を強く込めた。
クラビも感じた。
「すごいパワーだ!」
「悪魔の魂全開! 『魔炎流ブレーキング』!」
「ぐあ!」
ついにクラビは押し負けた。
しかも体に魔炎流を食ってしまった。
「クラビ!」
皆はダウンしたクラビに駆け寄った
ビスコは褒めた。
「なかなかだったが俺の方が上だったようだな。クラビは力を出し切ってもう動けまい」
ボジャックは言った。
「だったら俺達が相手だ」
「は? さっきいったろお前らじゃ無理だって」
「例えそうでも俺はあきらめない。俺達を甘く見るな」
ビスコは余裕を見せながらいきなり厳しく言った。
「……甘く見てる所はあったかもしれない。でもな、俺はそれ以上に自分の強さに自信持ってんだよ。いや覚悟をだ。絶対的にな!」