ミッシェルとマークレイ
2024年1月13日二どめの改稿しました。
シャープで凛とした怖そうな顔ながら、それに反する飄飄とした十七歳の男は突如マークレイの前に現れた。
それは孤児院のリーダー・ミッシェルだった。
少し広めの額、短めに切ってあるが一本一本が太くかつ流れる様に整っている髪、あごは少し長いが頬のラインと合わせ見事にシャープな顔を作っている。
鋭い眼光とツヤのある髪はリンクしているかのようだ。
少し老けていて十八から二十位にも見える。
彼は気さくに笑顔で言った。
「よっ、久しぶり」
農業をしていたマークレイは驚いて反射的に直立不動の挨拶をした。
マークレイから見れば気さくでも何でもない、すさまじい畏怖だった。
彼は恐怖でかちかちに固まって答えた。
「み、ミッシェルさん、お久しぶりです!」
「久しぶりー」
まるで酔っぱらった中年の様な態度のミッシェルと、いつもと違い怯えているマークレイの姿が印象的だ。
マークレイは恐る恐る聞いた。
「き、今日はどのような」
「やだなあ、恐縮しないでよ。同じ年なんだから『君』で良いよ」
「く、君、やっぱりおこがましい!」
ミッシェルはマークレイの肩に手をかける。
緊張がより一層増した。
「僕達の仲じゃん。今日はきちんと仕事してるか見に来たんだ」
「し、しています、はい!」
肩がこわばった。
「嘘、窃盗の誘いに来たんだ」
「えっ⁉」
ミッシェルは少し真面目になった。
「それも嘘、忍者の修行が終わったから伝えに来たんだ」
「終わったんですか」
「それと、クラビ達を助けにね」
またミッシェルは少し真面目になった。
緩んでいたシャープな顔が少し引き締まる。
「クラビ達は今旅に出ていて」
「うん、その内僕達の力が必要になるよね」
またミッシェルは真面目でマークレイも少し緊張が解けた。
「はい。俺も力を溜めていて、後シヴァを行かせました。今頃合流できるかと」
「そっかあ、でも本当に農家って空気が良いね。覆面とっちゃおう」
と言い何とミッシェルは顔の皮をはぐように変装用の皮をはぎ取った。
するとやる気なさそうな老けた顔の下には驚くような美少年の顔があった。
「ひえー、やっぱり美少年と言うか男前ですね」
「孤児院では舐められるのがやで覆面で変装してたんだ。童顔でなよなよじゃん。僕は育ての親いるけど修行の為孤児院に送られた身だからね」
「でも強さがあるから舐められないですよ」
そこへ物音がした。
「ん、来客みたい」
「え?」
「来たな」
ミッシェルは余裕がありながら真顔になった。
そこへ隠れていたサブラアイム兵が現れた。
「ミッシェルさんは気づいてた…… 俺は気づかなかったのに」
兵達は言った。
「クラビ達の仲間だな。御同行願おうか」
ミッシェルは前に出た。
「べー!」
「なっ」
「なんだこいつはやっちまえ!」
と言う次の瞬間兵の一人は倒れた。
「えっ?」
「な、何をしたんだ⁉」
「仲間の事は売らない!」
童顔美少年のミッシェルの顔が少しきつくなり触るだけの様なパンチを浴びせた。
するともう一人の兵は倒れた。
「え?」
「おのれ!」
と後ろに隠れていた十人程の兵達が現れた。
しかし爆発が起き吹っ飛んだ。
「爆弾しかけといた」
と平然とミッシェルは言う。
生き残った兵達が襲い掛かって来たが、まるで流れるような動きでささっとかわしまわりこみあっと言う間に三人気絶させた。
マークレイはぞぞーとした。
「こ、これが、この人の、忍者の強さ」
「よーし終わったよ、じゃあクラビ達を助けに行ってアンドレイを倒そうか」
彼はこともなげに言った。
マークレイは弱気を顔に出し力なく言った。
「あの……」
「何だ?」
「俺、ぐれて一杯クラビ達に迷惑かけたじゃないですか。謝って住むほどじゃない程、そんな俺がクラビ達とどんな顔して合流すればいいのか。俺なんかもしかしていない方が」
パン!
ミッシェルは非常に軽くミッシェルの頬を叩いた。
「痛い、痛い!」
「あ、あれ? そんなに効いた? 十分の一位の力で叩いたんだけど」
「ミッシェルさんは元々の力が強いから」
「ご、ごめん。だけどちょっと言いたいところがある」
「?」
「気持ちは分かるけど、もう過ぎた事を気にしてくよくよしてたって仕方ないじゃないか。クラビ達もそんな態度を見せられたらどんな対応していいか分からなくなる。まあ気にしなさすぎも反感買うだろうけど。でも大事なのは悩んでばかりでそんな顔を見せるより全部忘れたかのように過去を払しょくして償いの為にこれからを精一杯生きる事じゃないか? それでこそクラビ達はお前を受け入れてくれるよ」
「そ、そうですか」
「ああ」
「もう忘れたみたいに過去を払しょくし前向きさを見せる」
「そう振舞うだけでもいいからさ。難しいかもしれないけど」
「分かりましたやってみます!」
「それでこそマークレイちゃんだ。君がこんなにナイーブだとは知らんかったけど」
「失礼っすね」
二人は笑った。
そこへ土の中から人間台の光る玉が現れた。
「なっ!」
そして球体はクラビの前に現れた女神の様に少女の姿になった。
「初めまして。私は女神ミハルよ。あなたがミッシェルさんの助言を得てより強く吹っ切れた心を得た為、貴方が使うに相応しい新しい強い力を与えるわ」
「新しい力」
「はあ!」
女神は光をマークレイに浴びせた。
最初は熱かったがやがてすごい力が溢れた。
「これは!」
「貴方の力を二倍以上にし、成長効率もそれに近くなった。スキル『戦いの超天才』よ」
「『超天才』」
「ええ、このまま修行を続ければサブラアイム軍の司令官クラスにも勝てるようになるわ」
「本当⁉️」
「ええ、必ずクラビ達の力になれるわ。じゃあ私は別の用があるからこれで、頑張ってね」
「す、すごい力が満ち溢れている! これならクラビ達の力になれるかも! よしやるぞ、待っていてくれ!」