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鬼神ドードリアス

2023年11月28日改稿しました。

ドードリアスの胸の鎧の表現を直しました。

 男は凄まじい、殺そうと襲いかかりそうな物騒な大剣を携えている。

 一メートル八十四はある上背。日焼けした肌。

 

 年は二十六歳前後。

 長くはないが紫に染めた髪。 

 褐色の肌と異様なコントラストだ。

 

 太くかつ瞬発力もありそうな、張力を感じさせる鍛えられた大剣を支える手足の筋肉。

 無駄がなく太っていない。

 

 肉体派でありながら打算や策略にも長けていそうであり、がんがん攻撃しそうな攻撃性も強い目付き。

 

 且つ力で相手を見下しそうな雰囲気、口元。

 そして挑発的な目で相手を誘い獲物を捕らえようという狙いさえ見える。

 

 特に胸元が強固そうながら騎士の全身がちがちの物と違う動きやすそうで鱗の装飾がある鎧。

「俺の名はドードリアス、アンドレイ閣下直属の司令官だ。この前はあまりにぼろぼろなので見逃してやったが、今回は本番だ。覚悟はいいか」


 ボジャックは警戒した。

「意地の悪い虎みたいな顔してんな」

「哺乳類に例えてくれてありがとう。俺も虎は好きだ。地上最強動物の一つだからね」


 ボジャックはそれ以上言い返さず思った。

 スタグラーは何考えてるかわからない奴だったけど、こいつは分かりやすい直ぐ悪人で攻撃的な奴だって分かるな。大体分かるよ?

 

 こいつもドラゴンになったりする人間ではない人種? それとももっと上位の種族なのか。


「偉大なるアンドレイ様に貴様らの首を献上してやる。サブラアイム軍の、そして俺の恐ろしさを思い知るんだな、バカな小僧ども」


 ボジャックはまた思った。

 こいつはスタグラーと違い忠実なアンドレイの手下か。

 

 処刑されるのを恐れて死ぬ気でかかって来そうだな。

 アンドレイは部下にも独裁だし。

 後へ引けないんだろう。


「くっ!」 

 かかってくる恐怖や威圧感を振り払うようにジェイニーは先制で火炎弾を撃った。 


「ふん」

 しかしなんとドードリアスは剣で受け、火を消滅させてしまった。

 しかも近くからの高速の火の玉を軽く見切っている。


 ジェイニーはたじろいだ。

「あの剣一体?」


 マリーディアは言った。

「コーティングがされてるのかも知れない、でもそれだけじゃない剣さばきもすごい」


 クラビは突然ふらっとし、ばたりと倒れた。

 しかし何とか起き上がった。

「大丈夫⁉️」


 皆は駆け寄った。

 クラビは意識を維持し、心配している皆を気遣った。


 反省の弁。

「すまない力を使い過ぎた」

「ドラゴンとの戦いの傷が癒えてないんだろ? 無理をするな後ろに回れ」 


「くっくっく、行くぞ!」

 ドードリアスはまずマリーディアに狙いを定めた。


 それを察知し目を合わせ真っ向から受けようとするマリーディア。

 決して逃げない。

 美しい目と獰猛な目がぶつかる。


 しかしマリーディアは眼力に押されにらみ合いで負けていた。

「はあ!」

 

 それを振り払う様にマリーディアはシールドブレスを前に出し、迫るドードリアスの大剣を受けた。

 

 激しい衝撃。

 重い圧。

 

 ガシインと大きな音が響く。

 支えるマリーディアの細腕。


 大男の振るう大剣をマリーディアの体力で受け止められるかと言うと観ている者も疑問だった。

 シールドブレスが光り攻撃を吸収しているサインが出た。


 ボジャックは驚いた。

「物理攻撃も吸収出来るのか!」


 マリーディアはブレスシールドで攻撃衝撃を吸収しようとしている。

「くくっ…」

 

 しかし、明らかにドードリアスの馬力も勢いも上だ。

 マリーディアは完全に押された。


 マリーディアは踏ん張ったが後ずさりする。

「ぐっぐぐ」


「ほう、特殊な防具とはそれか」

「ぐぐ」


 マリーディアは決死の覚悟だったが体中が震えている。

 それは威圧感から来る恐怖もある。

 

 しかしドードリアスは余裕綽々だ。

「ふふ」


 そしてついにこらえきれず跳ね飛ばされてしまった。

「きゃあ!」

 マリーディアは弾かれたが、すかさずゾゾとボジャックに吸収したエネルギーを分け与えた。


「よし、力がアップしたぞ」

 勇んで切りかかる二人、スピードも力も増し、二人がかりで激しい剣を浴びせかける。

 

 これにはドードリアスも少したじろき、一時的に防御一方になった。

 しかし、一見良い勝負をしてるように見えるがドードリアスは大剣を使っているのに剣さばきもスピードもすごい。


 二人がかりでもまだ攻めきれない為ボジャックは活を入れた。

「もっとだ、ゾゾ!」


 二人は気合を入れて攻めた。

 しかしそれでもやや押されている。


「何て野郎だ」

 そして二人共反撃で胸元を切られてしまった。

「ぐあ!」


 しかし倒れたクラビのアンカーが突如動き向かって行った。

 ドードリアスはかろうじて防いだが、剣にアンカーのロープが巻き付いた。


 女神は言った。

「持ち主や仲間の危機に自動反応した」

 

 クラビは立ち上がった。

 そしてドードリアスをギンと睨みつけた。


 ドードリアスはアンカーを笑った。

「ふん、そんな物で俺の攻撃を防げるか」


「ぐぐ」

 しかしクラビはアンカーをしっかり掴んで牽制している。緊張が走る。


 そして二人はロープで結びつき、がっちり力比べとなった。

 意地と意地がぶつかる

 いつの間にか同レベルで。


 クラビは持ち上げようとする。

「引っこ抜いてやる!」

「舐めるな!」


 クラビには特訓に耐えた自信があった。

 しかし、駄目だった。

 遂にアンカーごとクラビが放り投げられてしまった。


「ああああ!」

 地面に叩きつけられダウンするクラビ。


 悔しい。

 地面が彼の屈辱を誘う。

 クラビは激しく悔しがった。

 

 これまでの苦しみを思いだし。

「俺の力も大分上がっていると思ってたのに」


 押し勝ったドードリアスは完全にクラビを格下に見た。

「思いあがるな、少しぐらい強くなったからと言って俺と対等になった気にでもなったか? 雑魚だ、雑魚だ、貴様は雑魚だ」

 相手にならん、十年早いと言わんばかりに。

 

 一方、クラビ。

 あれだけ必死の特訓をしたのに……

 うなだれてしまった。

 

 ボジャックは言った。

「こいつスタグラーより大分強いぞ」


 またドードリアスはボジャックの所見を見下し嘲笑した。

「はーっはっは! スタグラーが本気で戦っていたと思ったのか。お前達を殺さず捕らえようと、力を見ようとしていただけなのがわからなかったか?」


「何だと⁉」

「愚かな奴らだな、くっくっく」


 クラビは力が抜けた。

 落胆した。

 俺だって死に物狂いで特訓したのに、それでも全然及んでなかったというのか。


「俺もな」

 と不意に言い、ドードリアスは紫の髪をつかみ外した。

「かつら?」


 そしてその下から恐竜の骨で出来たような角の付いた兜が出てきた。

「何だこいつ? かつらの下に兜隠してたのか?」


「ふふん、これは兜じゃない、俺の頭部と角だよ」

「何だって?」


「そして……」

 何と上着を脱ぐと胸の前に胸骨の型の防具が付いているが、よく見ると肉体と一体化している。


 ボジャックは言う

「胸骨型の胸当てじゃないのかあれ」


 女神は言う。

「違う、あれは肉体よ。胸の筋肉の前に筋肉を守るもう一つの胸骨が外に出てるのよ」

「ば、化け物……」


「そうだ、俺は人間じゃない、アンドレイ様に魔界から連れてこられた『二重角骨族(かっこつぞく)』だ。この角、頭骨は外側にも頭を守る骨がある種族なんだよ。さらに外側の骨は自由に外に出したり肉体にしまったり出来るのよ」

「そんな種族初めて聞いた……」


 女神は言う。

「そんな、かっこつぞく? 勝てないかも」

 

 ボジャックは聞いた。

「女神さん、そんなにあいつ強いのか?」


「くそ!」

 クラビはアンカーを射出したがかわされてしまった。

 

「ふん!」

 その間にドードリアスは剣の間合いに飛び込んできた。


「まずい!」

 クラビは咄嗟に剣で対処した。


「そら! そら!」 

 ドードリアスはからかい遊んでいるようだ。


 攻めのきつさと屈辱がクラビを襲う。

「ぐっ」


「どうした? 腕を上げたんじゃなかったのか?」

「くそ!」


 クラビはそれこそ必死に全ての力を込め対処した。

 それでも勢いは全くドードリアスの方が上で反撃すら出来ない。


「どうした? 勇者じゃなかったのか⁉」

「う、うおお‼」


 クラビは渾身の力で反撃して行った。

 必死だった。

 

 屈辱を振り払う様に。

 進歩してないなんて認めたくない。


 だがドードリアスは嘲笑っていた。

 そしてついに

 

 キイン‼️

 クラビの剣が弾かれた。


 ‼

「止めだ」


「うおお‼️」  

 まさに咄嗟だった。

 クラビは来た剣を白刃取りの様に防いだ。


 ドードリアスは本当に面食らった。

「正気か!」

 

 女神は興奮し叫んだ。

「スキル・オートガードが作動したんだわ! でも持ちこたえられるか!」 


「こんなやつに!」と言う苛立ちから鬼気迫る表情でドードリアスが迫る。

 見下していた相手のクラビが思いの他粘り力を出す。


「いい加減諦めて切られろ!」  

「ぐ、ぐおお!」

 いつの間にか同じ温度になった二人。


 そしてついに。

「うおおお」

 

 何と素手のクラビが押し返し始めた。

「何だこの力は!」

「超怪力も作動した」

 

 ドードリアスも必死だ。

 面目を潰さないため。


「おっ、折ってやる!」

「この剣が素手で折れるか!」

「うおお!」

 

 また意地と意地

 まるで同い年のライバルだ。


 ジェイニーが火炎弾、ボジャックは覚えたての火炎を発して援護しドードリアスの体勢が崩れた。

「ぐあ!」


 遂にクラビは剣を押し返し、もう片方の手で「素手挌闘」を発動させドードリアスを殴り飛ばした。


「ぐあ!」

「今しかチャンスはない」


 この時クラビの勇者の記憶が一部先日同様戻り、半無意識に構えた。

「あれは!」


 雷撃の力が集まる。 

「射出型光剣‼」

「ぐああ!」


 まともに食らったドードリアスは鎧を焼かれた。

 貫通しそうだった。

 肉体も焼けこげたように見えたがしぶとく立ち上がって来た。


「勇者の小僧、こんな秘策があるとは」

「あれを喰らっても駄目なのか!」


 しかしクラビはマリーディアにテレパシーの様にコンタクトした。


「あいつはこれでも倒せなかった。でも君の反射鏡でパワーを増幅して打ち返せば勝てるかもしれない。協力を頼む」

「分かった」


 クラビは即座に力を溜め、マリーディアのブレスシールド目掛け射出型光剣を撃った。

 これが増幅反射しドードリアスを直撃した。

「ぐあああ‼!」


 これは相当に効いた。戦意を喪失させるに十分だ。

 ボジャックは言った。


「よし、五人でここでかかれば倒せるぞ!」

「ドードリアス様!」


 何と援軍が来た。

「俺は体勢を立て直す。お前達は時間を稼げ」


「くそ、もう一歩で!」

 奮闘虚しくドードリアスは取り逃がしてしまった。 

     

 そして何とか一行は洞窟の外に出た。

 ところが、


「よう!」

 その声の主はジェイニー以外の全員が見覚えのある凶悪な顔だった。


「久しぶりだなあ」

 と巨漢の筋肉質の一メートル八十センチ超えのいかつい男は一瞬でクラビ達の憎しみを集めた。


「久しぶりだなマリーディア、ここで会ったのも何かの縁かな?」

「ゼネイル! つけて来たか調べたんだろてめえ!」


「だ、誰?」

 ジェイニーが聞くとボジャックは答えた。


「孤児院時代よく孤児院にきてマリーディアにつきまとってストーカーしてたやつだよ」

「ええ⁉」

「軍に入っていたのか?」

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