罠とクラビの成長
鉱山へ向かう途中カードを二枚拾った。
一つは石の下、もう一つは川の中にあった。
とても普通では見つからない場所にある。
風景と完全に一体化していて違和感がない為でもある。
分かりやすく宝箱に入っている等ではないのだ。
カードのありかが細かすぎて探すのに散々苦労を重ねた。
これまで手にいれた物には地下三メートル程掘った物もある。
女神はまたこれから覚えるスキル説明をした。
・冷気吸収&放出
・雷撃吸収&放出
「これは文字通り冷気や雷撃を吸収する」
そして半ばの町の宿で休みを取った。
クラビは武器屋に行き「銀の騎士の剣」を買い装備し、攻撃力が大幅に上がった。
そして鉱山に向かう。
少し休みながらも足が痛くなる程歩く事三時間半、遂に到着した。
昔、鋳物師は鉄物の需要が少ないため、その土地で満たしたら別の土地へ移った。
日用品や武具や大砲も作った。
石炭採掘は昔燃え石、焚き石と呼ばれ農業の片手間に行われた。
精銅を生産し薪と鉱石を交互に積み重ね鉱石を焙焼し木炭と硅石を加えて還元し銅に仕上げる。
銀を取り出す為南蛮吹も行われた。
月産五十トンはあった。
純度の高い銅を素銅、不純物を含むと山銅と言われた。
銅は金属製品や貨幣に使われ青、黄、白が鋳造された。
やがて銅山は鉱毒が問題となった。
警備兵が外にいるので近づいて訳を話した。
「あの、仕事で言いつけでここのガードをする事になりました」
「これはこれは、そうか宜しく頼むよ」
警備兵はとても愛想が良かった。
「あれ?」
ゾゾは何かを嗅ぎ付けた
「どうしたゾゾ?」
「変なにおいが」
皆が急いで洞窟に入ると、一転警備兵は怒り出した。
何か怪しい。
「あっまだ勝手に入っちゃ!」
ゾゾは大声を上げた。
行ってみると何とそこには兵の死体がある。
「えっ!」
突如警備兵はくっくっと笑い始めた。
ボジャックは問いただした。
「何だお前! 本当に警備兵か!」
「ばれたか、我々はアンドレイ閣下の部下、偽の警備兵よ」
同じくにやにやした別の兵が低い声で言う。
「もう包囲されてるぞ、覚悟しろ」
ボジャックはしまったと思った。
「くそ、もう回り込んでやがったのか」
そして奥からも入り口からもニ方向から兵が来た。
挟まれた格好だ。
「やるしかない!」
決意したゾゾ、マリーディア、ボジャックは奥の敵を、クラビ、ジェイニーは表の相手をする事になった。
クラビはジェイニーをかばった。
「ジェイニー、下がって。あいつらは俺が相手する」
「大丈夫なの?」
「大丈夫。俺のレベルは大きく上がってる」
表から来た兵士達はがなった。
クラビの自信が挑発に聞こえた様だ。
サブラアイム兵にとってクラビはアンカーがなければ大した事はないと言う情報と認識だった。
「何だ小僧、お前一人で相手をする気か」
しかしクラビは臆せず剣を構えた。
怯えていた前とは比べものにならない程自信に満ちている。
何かが彼の中で変わっていた。
兵が切りかかって来た。
しかし落ち着いて受け止め迎え撃つクラビ。
そして遅れをとることなく渡り合う。
その姿は見違えるようだった。
数日前と全く違う。
兵は少し感心した。
「ほう精鋭相手に」
まだ余裕がある証拠ではあるが。
そしてぶつかり合いの末、クラビは一人目の兵士を切った。
クラビはノーダメージだ。
「ぬおっ!」
クラビはさらに勢い良く言った。
「さあ、次はどいつだ」
その姿は自信に満ちている。
本当に変わった。
無理した感じも少しだけあるが。
「なめるなあ!」
勢いよく二人目が襲い掛かって来たがクラビは堂々としているだけでなく落ち着いてもいる。
受け身ではあるが敵の攻撃をかわし、いなしていく。
兵士は苛立った。
「くそ、いつの間にこんな動きを!」
「……」
クラビは一貫して落ち着いている。
そして隙を突き二人目も切り倒した。
「ぬお?」
「今度は俺が!」
と三人目の兵士が向かって行った。
しかし三人目もやがて倒された。
「すごい三人抜き! あんなクラビ見た事ない!」
一方のボジャック達は弓兵相手に苦戦した。
「盾があっても厳しいな」
「俺の高速移動レベル二でかわして見せます」
ゾゾがおとりになりかわし、何とか反撃のチャンスを伺う。
「遠距離攻撃出来るやつがいれば」
そこへジェイニーの火炎弾が来た。
「え?」
「クラビさんは一人で大丈夫だって。不安だけど」
ジェイニーの魔法で弓兵を弱らせ隙を伺った。
すると表から突如スタグラーが現れた。
「くっ!」
「やばいぞ! あいつと手下が相手じゃ!」
スタグラーは言った。
「ふふ、心配するな、私は一騎打ちしてやる。皆下がれ」
「一騎打ち?」
スタグラーは説明した。
「クラビは私と一騎打ちする。君達はせいぜい頑張り給え」
「何を企んでいるんだ」
「勇者の力を引き出してやろう」
クラビは疑った。
「何故そんな事を言うんだ。どうせ何か悪い事を考えているんだろ」
「どうかな?」
「よし、受けて立つ」
クラビは受けて立った。
二人の剣がぶつかる、しかしクラビは必死の表情なのにスタグラーは余裕綽々だ。
「ほう、随分変わったな。見違える程だ」
「……」
スタグラーは喜んだ。
「良いぞ! 力が上がって来る」
「何故喜ぶんだ?」
スタグラーは戦いながら説明する。
「私は君を真の勇者にしたいんだよ」
「だから何故?」
「君に勇者として統治者になって欲しいからだ」
「ええ?」
「もちろんこれは私だけの考えで軍の仲間には言っていない」
「勇者の統治?」
「そうだ。私の教わった宗教は勇者が降り立ち人を救い理想国家を作るとある」
「何で? あんたはアンドレイの部下だろ? 悪い事をしようとしてるんじゃないのか」
「私はアンドレイが統治者と思っていない。君に統治してほしい」
「言ってる事がさっぱり分からない」
ボジャックが言った。
「あんたクラビをだましてクーデターにでも使うつもりじゃないのか」
「そんな低次元な事ではない」
この人の言ってる事は……
クラビが押されながら戦いは続いた。
何度となくぶつかり合うがスタグラーは本気ではない。
そして突如スタグラーは剣を収めた。
「ふん、これ位で良いだろう。私は引く、選手交代だ」
すると表から新しい幹部ドードリアスが出て来た。
「この前のやつか」
ジェイニーはドードリアスに向け火炎弾を撃った。
しかしなんと剣で受けた。