クラビ苦戦 スタグラーの脳波攻撃
「行くぞスタグラー!」
クラビはいつになく躍起になっていた。
いつもの温和な彼と違う。
激しい闘志と怒りを前面に出している。
ホジャックはクラビの様子が変な事に気づいた。
「何か様子がおかしくないか?」
しかしクラビはさらに息巻いた。
大声で叫んだ。
「スタグラー、俺と勝負しろ! 一対一だ!」
しかしボジャックはさすがにこれを止めた。
「ちょっと待て! お前一人で勝てる相手じゃない、先に兵達を倒してから皆でかかるんだ」
「いやだっ!」
静止も聞かずクラビはいきなり飛び出した。
しかし、剣を繰り出したが軽くスタグラーに防がれてしまった。
ゾゾは心配した。
「どうしたんすか!」
女神は言った。
「クラビはスタグラーの能力で脳に攻撃を受けていつもより冷静さがなくなっているのよ。それにスタグラーの戦う心、思念に引きよせられているんだわ!」
女神の等身大化制限時間が切れ、元の瓶に戻った。
「止めないとダメか」
「おっと君達の相手は私達がしよう」
コンコルンと兵達がボジャック達の行く手を阻んだ。
一方スタグラーは軽々とクラビの攻撃をかわしていた。
「少しは腕を上げたつもりだったのか? 君の腕等、兵達や君の仲間にも劣るんだよ? 勇者とは名ばかりだな」
「くっ、俺はその程度しかないのか」
クラビは現実を突きつけられた気持ちになった。
「今度は私の番だ」
「うっ……」
スタグラーは構えた。
クラビはごくりと唾を飲む。
「ヘドロクライム!」
スタグラーの剣から強力な波動が飛びクラビは吹き飛ばされた。
「ぐう……」
「ふっ、少し的を外してやったよ」
「なんの!」
クラビは立ち上がった。
そしてエネルギーを溜めた。
「行くぞ! 『勇者の魂・怒りの鉄拳』!」
クラビは技を繰り出した。
ところが前のようなパワーと切れがない。
「あ!」
あっさりスタグラーにかわされてしまった。
「随分動きが遅いな。それに当たってもその威力じゃ私を倒せんぞ」
「そうか! さっき六発も繰り出したからエネルギーが残ってないんだ。でもここで諦めるわけには! よしぶっつけ本番『勇者の魂・火炎撃!』」
火炎撃は一応成功し、両手から火は放出された。
しかし射程は短く威力も弱い。
「ふん!」
スタグラーは剣の一閃で火炎を切り裂いた。
「もう一度行くぞ! ヘドロクライム!」
「ぐああ!」
クラビは再度ダウンした。
それをコンコルンは見ていた。
「良し! 私は勇者の小僧をやる! お前達はこ奴らの相手をしろ!」
と言いコンコルンはスタグラーの方へ向かった。
「スタグラー様! やりましょう!」
二人はクラビを挟み込む様に三メートル距離を取った。
ボジャックは懸念した。
「あいつら何を!」
コンコルンとスタグラーは手を前に出し、クラビを双方から挟むように光線を発射した。
それは頭部に浴びせられた。
「はっはっは! 私も脳波攻撃を使えるのだよ! これで勇者も終わりだ!」
「うわああ!」
光線は浴びせられ続けた。
そしてクラビはどっさりと倒れた。
「クラビ!」
スタグラーは言った。
「ふふ、勇者は倒れたぞ。今度は君達の番だ」
ゾゾとホジャックは言った。
「くそ!」
「俺達が倒してやる!」
ゾゾはかえる跳び翔斬と違う、人間相手のスピード重視の技を出した。
「毒海蛇の舞い!」
その名の通りウミヘビが揺らぎ泳ぐような軌道の剣を放った。
しかし何とかスタグラーは防いだ。
「くっ!」
スタグラーは褒めた。
「なかなかだぞ小僧」
しかしゾゾは悔しがった。
「余裕があるから上から言ってる。俺は初めて戦って軽くあしらわれた屈辱は忘れないぞ」
「いい気持ちだ。それがあれば強者になるだろう」
これにさらにゾゾは悔しがった。
「偉そうに!」
「待てゾゾ! 今度は俺が行く! 地剣爆斬波動射出型!」
それは先程穴の蓋に向けて撃った型だった。
「ヘドロクライム!」
これもスタグラーは技を出し防いだ。
「くそ!」
「まあいい、今日のところは様子見だ。そろそろ帰るか」
「引き揚げましょう」
「な、何」
「俺達を見逃すのか何で!」
「理由等ない。それよりクラビの様子を見てやったらどうだ」
二人と兵は背を向けて去った。
「クラビは気を失ってる。病院に連れて行こう」
一方コンコルンは耳打ちした。
「これから面白くなるのにあの小僧ども我々が見逃したと思っているようですな」
一行は近くの町の病院に行った。
クラビは安静にしていた。
しかし、体力を回復すると突如クラビは大声を上げ暴れ始めた。