シロクマの猛威
しかし、まだギルドの討伐仕事は続く。
壁に「シロクマ退治」とある。
「シロクマですか?」
マリーディアは言った。
ボジャックは言った。
「シロクマ……ドラゴンよりだいぶ弱そうだね。でも賞金も低そう」
しかし、受付の女性が答える。
「それが、八十万になります」
「えっ⁉」
女性は続けた。
「受ける場合気を付けて下さい。何人かの冒険者が帰らぬ人となってますから」
「シロクマに?」
ゾゾは言った。
「もしかして、突然変異の種とかかもしれません。いや、もしかしてアンドレイに強化された?」
ジェイニーは言った。
「何がそんなに強いのか分からなくて何か不気味。行くのが不安」
しかしクラビは意を決し言った。
「皆、頼む、大物を倒さなければ賞金は多くもらえない」
ボジャックは言った。
「よし、行こう」
そして一行は現地に向かった。
ゾゾは言った。
「ここ全然寒冷地帯じゃなくて、ドラゴンと同じ平原ですね」
「やっぱり普通のシロクマと訳が違いそうね」
その時悲鳴が聞こえた。
「あっちだ!」
クラビ達が悲鳴の方に駆けつけると、冒険者たちが無残に殺されていた。
「ああ!」
シロクマは早くもクラビ達に気付き闘争本能全開だ。
何と口から吹雪を激しく吐いてきた。
「うわ!」
凄まじい勢いで触れただけで凍結しかねない程の勢いだった。
一旦吹雪を吐き終えたのを見計らいボジャックは言った。
「これは明らかにアンドレイに変えられてそうだな」
ジェイニーは言った。
「でも、寒冷動物なら暑さに弱いはず」
そう言ったジェイニーは大きな火炎魔法を放った。
ところが、食らっているのに効きが悪い。
まるで火炎に強い皮膚をしているようだ。
そして何とシロクマは火を吐いた。
「えっ⁉」
クラビ達は伏せた。
ごうごうと火炎放射は続く。
ボジャックは言った。
「こいつは明らかにアンドレイに品種改良でもされているんだ!」
ジェイニーは言った。
「弱点が分からない」
ゾゾは言った。
「じゃあ、接近戦に持ち込みますか」
その時死にかけていた冒険者が叫んだ。
「駄目だ! こいつは接近戦もすさまじく強い! パワーも爪も!」
「よし、なら」
クラビは昨日と同じ構えに入った。
「えっ! あれを出すのか?」
クラビが胸のあたりを払う様な構えをすると空間に穴が空いた。
「行け! 射出型光剣!」
射出型光剣はすさまじいパワーを漲らせかつ速いスピードでシロクマに向かって行った。
がああ!
何とシロクマはさっきよりも強い吹雪で射出型光剣を迎え撃った。
「えっ!」
激しい吹雪を浴びせられ剣は凍ってしまった。
「射出型光剣が凍った!」
何とシロクマは呪文の詠唱を始めた。
「えっ!」
シロクマは唱える。
「大火炎」
激しい炎がクラビ達を襲った。
ジェイニーがバリアで防いだ。
「接近戦は危険だから魔法で行きましょう」
ジェイニーは大きな稲妻を放った。
ところが何とシロクマは同様にマジックバリアで防いだ。
「何でクマが呪文使うんだ」
シロクマはしゃべりだした。
「俺はお前らがこの前戦ったドラゴンと同じく人間でも魔物でもない種族なのよ。そして今はアンドレイ様にさらに力を与えてもらった」
しかし、冒険者の一人が倒れながら叫んだ。
「そいつは恐らく、限られた時間しか動物の姿になってられないのです!」
「え?」
「うるさい奴だ。うっ!」
シロクマは人間の魔法使いの姿に戻った。
「うっ!」
ボジャックは言った。
「しめた! 魔法使いは力も弱いし防御も遅い。地剣爆斬だ!」
「ぐああ!」
クラビは言った。
「とどめだっ!」
「えっどうやって?」
何と凍った射出型光剣が動き始めた。
「え?」
「射出型光剣は勇者の魂の力で操れるんだ!」
凍って止まっていた射出型光剣は一直線に魔法使いに向かって行き貫いた。
「やった!」
「しかしこないだのドラゴンと言い、色々な種族がいるんだな。人間でもあり動物でもあるみたいな」