超強敵ドラゴン討伐 目覚めるクラビの力
2023年12月9日改稿しました。
ギルドのミッションは、平原に出現し旅人を襲う一匹のミドルサイズのドラゴン退治という事だった。
ドラゴンはかなり強敵であるため、あまり他の冒険者は手を出さなかった。
女神はまたスキルを説明した。
「これからクラビが覚える勇者スキルよ。まだあるけど。分からない事があったら聞いてね」
・勇者レベル(補正)
・勇者用各種魔法(扇状光波動、無光衝 射出型光剣)
・攻撃打ち返し
・アンカー使いレベル
・拳攻撃
・戦闘中レベルアップ
・オートガード
・勇者の波動
・奇跡
「攻撃打ち返し?」
「そう、マリーディアのシールドブレスと同じ事が出来るようになるわ」
「『拳攻撃』は?」
「これは拳の威力が剣や斧並みに一時的に上がるの。武器を使えなくなった時に有効ね」
「オートガードは?」
「これは身体が危機に陥った時アンカーや肉体が自動的にダメージを最小に防ぐ為の防衛行動をするわ」
「射出型光剣って何?」
「これは非常に大きな威力を持つ技、記憶が戻らないと使えないかも」
「戦闘中レベルアップって何?」
「その名のとおり、戦闘後でなく戦闘中に経験値が算出されて戦闘中レベルアップする事があるわ」
「凄いな」
「まさに勇者じゃなきゃ使えない特殊スキルって感じだな」
「で最後に『奇跡』って何?」
「その名のとおり、これは凄いわ。人の病気を一瞬で治したり出来ちゃうわ」
「えーっ⁉ そんな事」
「勿論いつも出来る訳じゃないわ。だから奇跡なの」
ボジャックは言う。
「スキルだけでなく、装備も良い物に買い替えようぜ」
「でも今お金貯めてるから」
「だからって死んだら元も子もないだろ。ここは装備をきっちりしとく」
「私もその方がいいと思う」
「しかしこのドラゴンっていきなり現れたの?」
「山脈のふもとの荒れ地に陣取って、近づく人を襲うから誰も近寄れないって」
「何が目的なんだろうな」
「もしかしてアンドレイが送り込んだ配下?」
「ありうるな。十分気を付けよう」
そして一行は武器屋に移動した。
ボジャックは一段高級なロングソード、ヘルメット、鋼のバンデッドメイルを買った。
ゾゾは同じく剣、ラウンドシールド、プレストプレートを買った。
ジェイニーはレザーアーマー、シールドに魔法を節約する為のクロスボウを買った。
「クロスボウ使える様に練習しなきゃ」
そして山脈のふもとの荒れ地、もはや砂漠のような八百メートル四方、木も何もない地にドラゴンは陣取っているという。
あまり移動もしないらしい。それも不可解だ。
皆は四日かけ近くまでたどり着いた。
平原を抜けて荒れ地一体に着く。
「見えるぞ、ほら」
「本当に一か所で動かない、あれでどうやって獲物を狙うんだ?」
「悪人のボスが居座ってるみたい」
クラビだけは「はっ!」とドラゴンに異質な気配を感じ取った。
あいつドラゴンの生気じゃない。
正体不明な物を感じる。
何だこの感じ。
一行はゆっくり気づかれない様近づき、そして遂にドラゴンを攻撃できるまであと一歩の場所まで来た。
否応なしに不安がかきたてられる。
マリーディアはごくりと唾を飲んだ。
ちょっと怖いな。
ゾゾは言った。
「うわ、ミドルサイズでも結構デカい。六メートルはある」
「火炎放射の距離が分からないから慎重に」
「よし、行くか。まず牽制の遠距離攻撃から。魔法ならぎりぎり届くだろ」
まずジェイニーの火炎弾でかなり離れた距離からほんのあいさつで攻撃しようとした。
しかし攻撃したが硬い鱗には全く効かない。
「げ」
「あそこまで魔法が効かないって初めて聞いたぜ。反応そのものもない」
「魔法が駄目だとアンカーしか遠距離攻撃ないよな」
「いや、アンカーはやめる、経験が入らない」
「ロングボウは?」
「効かなそうだな」
「じゃあ突っ込むのか」
「俺とボジャック、ゾゾとマリーディアで囲む様に剣で突っ込むんだ。あいつも一度に複数方向に火炎は吐けない。いいか、時間差じゃなく前後左右十字に囲むんだ。そうすれば火は中々吐けない」
「危険だが!」
「よし!」
四人が走り近づくとドラゴンは本能で吠えた。
貫禄は並みの怪物とわけが違う
ゾゾとボジャックが前二方向、クラビとマリーディアが横二方向からにした。
迅速にやらないと命取りだ。
しかしドラゴンは頑丈だ。
ゾゾとボジャックは切り込んだ。
しかし手ごたえが浅い。
血も少ししかでない。
「硬い鱗だ」
マリーディアが間髪入れず攻撃したが同様で、クラビが右少し後方から切りかかった。
前方三人にドラゴンの気が行っている状態でクラビが渾身の一撃を浴びせようとした。
皆は渾身の力で剣を振り下ろすが全く効き目がない。
「何だこいつ! 普通のドラゴンじゃねえ! こんな硬いやつ知らねえぞ」
しかしドラゴンは驚くような速さで突如首を後ろに向け、クラビ目掛けて火を吹きそうになった。
「あぶない!」
これはフェイントかと思われた。
かろうじてかわしたがドラゴンの関心はクラビに行っている。
クラビは違和感を感じ取った。
何だこいつ、初めから俺を狙ってたみたいだ。
まるで四人の中で俺を最重要する様に。
生物が後ろの奴を本能で振り向いて襲うなんてあまり聞いた事がない。
「仕方ない!」
カードを入れ替えたクラビはアンカーを射出した。
そしてドラゴンの口に捲きつけ口が開かなくした。
「いいぞ!」
ところが、である。
ドラゴンは首の力だけでアンカーをクラビごと投げた。アンカーも口から外れた。
そしてダウンし体勢を直そうとするクラビに遂に火炎が放射された。
「あ!」
「きゃあああ!」
ボジャックとマリーディアが叫んだ。
クラビの体が火に包まれた。
「あのままじゃ!」
マリーディアは動いた。
ボジャックは止めた。
「よせ! 君まで巻き込まれる!」
あまりにも凄惨な光景だ。
人体が丸焼きにされている。
ジェイニーは助けるため雷撃を連続で放った。
しかしまるで効き目がない。
諦めず攻撃を続けるジェイニー。
ところが何とドラゴンは呪文の詠唱を始めた。
「なっ⁉️」
「ドラゴンが呪文だと‼️」
ジェイニーに巨大雷が炸裂し気を失ってしまった。
「ぐあああ!」
一方灼熱の熱さでクラビは悶えた。
およそ人間の耐えるべき温度ではない。
地獄、嫌煉獄である。
「し、死ぬ、炎で焼かれて死なない人間なんていない。精神力とかの問題じゃない。今度ばかりは」
「クラビさん‼!」
ゾゾも飛び出したがボジャックは止めた。
「あ、あああ」
マリーディアは絶望でがくがく全身で震えている。
その時だった。
クラビの脳裏にふいに孤児院の子供達の姿が浮かんだ。
「こんな所で! 俺は孤児院とマリーディアを救い、皆を守れる人間になるんだ! こんな所で!」
体も精神もとうに限界に来ていた。
しかし意識を取り戻し彼は少し前より強くなっていた。
「うおおお!」
クラビが叫ぶ。
しかし体は燃えるばかり。
「もう限界か、人間が火に対抗する力なんてないのか」
クラビは気を失いかけた。
皆の声が遠くなる。
「ここまでか」
するとこの危機に覚えたての急速冷却が発動した。
クラビの体は冷却されて行き、転がって距離を取った。
何とか手を突いて立とうとした。
「よ、よし!」
ボジャックは心配した。
「クラビ、立てるのか!」
クラビの体が光りだし、パワー、スピードとも大きく上がった。
すさまじいこれまで見た事もないエネルギーがクラビの体から出ている。
「う、うおお! 食らえ!」
「な、何だあいつ何をする気なんだ」
クラビは指先に凝縮された全エネルギーを集めた。
そして手を下から上に振り払うような仕草をした。
すると何とクラビの胸のあたりの空間そのものが割れた。
「え?」
そしてその空いた穴から巨大な剣型の光が突如射出された。
「射出型光剣‼️」
「なっ!」
とてつもない力を持った光の剣が指先から一直線に飛び、ドラゴンの鱗を初めて切り裂いた。
「あれはまだ覚えていないスキルなのにどうして⁉ はっ、勇者の記憶が戻った?」
ボジャックは呆然とした。
「射出型光剣……何てとんでもない力だ。あれが力を取り戻したクラビなのかよ」
「皆、今がチャンスだ!」
「おう!」
皆は大胆かつ繊細に攻めた。
クラビの復活からの一撃は相当効いたようで闘志が半減している。
しかし敵もさるもの。ダメージを受けて荒れた。
グアアアアオオオ!!
暴れっぷりが一層凄くなる。
「近寄れない!」
「だが冷静じゃなくなってる。根気よく攻めよう!」
クラビは剣で首を切ろうとしたが鱗に阻まれた。
しかし空いている片方の手を口の中にねじ込んだ。
が、ガアア!!
火を吐けなくて苦しそうだった。
「どこか、体で弱い部分はないのか」
「多分腹は鱗に覆われていないと思います」
「じゃあひっくり返せば!」
クラビはアンカーをドラゴンの前足に絡みつけた。
力比べが始まる。
「うぐぐ!」
しかし不意にまた火炎を食った。
「クラビ!」
「大丈夫だ急速冷却がある」
「体が燃えてんぞ」
「あれじゃドラゴンの方が有利だ」
その一瞬だった。
ジェイニーが突然飛び出し、さっきクラビがやった様に手をドラゴンの口に突っ込み、さらに渾身の冷気を発して炎を吐けなくした。
「よし『超怪力スキル』で!」
剣を捨てたボジャックはクラビの手を掴み共にアンカーを支えた。
「うおおおお‼!」
ついにドラゴンをひっくり返した。
「チャンスだ!」
一行は突撃し一斉にドラゴンの腹に剣を刺した。
今しかチャンスはないと渾身の力でえぐる様に刺し抜いた。
「ガ、ガウウ」
叫び声を上げドラゴンは死んだ。
と思いきや何とドラゴンはほとんど死んでいるが人間の姿になった。
「何⁉️」
ドラゴン、嫌謎の人間体はは絞り出す様に言った。
「ふはははは……お前達の想像通り俺はドラゴンではない、アンドレイ様の配下の悪魔だ。ドラゴンに姿を買えていただけだ。お前達の行動を調べここに陣取っていたのだ。我々を甘く見るな。既に二の手三の手は打ってある。お前達は次こそ死ぬ、ぐふっ」
と言って男は息を引きとった。
「ふっふっふ」
「誰だ」
振り向くとそこにはスタグラーがいた。
「スタグラー!」
「大分お疲れの様だね。様子を見ていたよ。初めてだなこの種族と戦うのは」
「こいつドラゴンが化けた人間なのかそれとも逆か?」
「どちらでもない」
「そんな種族地上にいないぞ」
「でも、アンドレイ様が魔界から連れて来たとしたら?」
「う」
そしてもう一人幹部らしき大剣を持った長身の男が現れた。
男は大剣を携えている。
一メートル八十四はある上背。日焼けした肌。
太くかつ瞬発力もありそうな張力を感じさせる、無駄のない鍛えられた大剣を支える手足の筋肉。
無駄がなく太っていない。
意地悪そうで攻撃性の強い目。
自信に満ちた口元。
「あんたも幹部か」
「その通り、俺の名はドードリアス。今日の所は引いてやるが、近いうちに戦うのを楽しみにしているよ」
クラビは感じた。
こいつ強いぞ。あんな大剣を軽々と持ち無駄な動きもない、筋肉もまるで鋼鉄だ。
「じゃあな、諸君」
スタグラーとドードリアスは背を向け隙だらけで去ろうとする。
しかし、いきなりクラビが聞いた。
「スタグラー! あんたは勇者の力が感知出来るって言ったな。まさかあんたは天の国の人?」
スタグラーは「想像力が足りないな」とでも言いたげな表情をした。
「違う、私は人間だ、殺された母の怨念が私に感知能力を与えたのだ。それだけだ」
呆然とする一行。
「怪物でもあり人間でもある、そんな奴らがごろごろいるのか」
「もう一人いるぞ」
と言い、さらに角カブトを被った二メートルはある超巨漢の男が現れた。
バイキングの様なカブト。凄まじい筋肉とあまりに太い腕と足。
強いと見るだけでわかるひげを多く生やした三五歳近くの大男だ。
スタグラーとドードリアスはさっとかしこまった。
ゾゾは言った。
「誰だあいつ」
男は言った。
「くっくっく、二人の態度を見てわかるかな」
「はっ、ジルバシュタイン様」
クラビと女神は言った。
「この男凄まじい圧だ」
「びりびりするわ」
ジルバシュタインと呼ばれた男は言った。
「よく分かったなお前ら。そうだな俺はキハエルⅡ世の奴と並ぶサブラアイムの双璧よ」
「何だと⁉」
スタグラーは言った。
「私はともかく、この方には逆らわない方が良いよ」
ジルバシュタインは大きな口を開け大声で笑った。
「お前らの相手はいつでも出来る。今日はスタグラー達と一緒に去ってやる。死ぬなよはっはっは!」
そう言ってエネルギー弾を遠くに放り投げると町が一つ滅びそうな大爆発が起きた。
三人は意気揚々と去った。