リーダーをやりたくない理由
三年前の孤児院時代の回想に入る。
クラビは思った。
たまには積極的にリーダーやらなきゃ。
そして自分を変えるんだ。
学級会。
職員が司会する。
「二週間後、隣町のガットロン孤児院と親善野球大会をやる事になりました。それで、リーダーを選出したいのですが、誰かいませんか」
皆各々口にした。
「マークレイがいいんじゃないか?」
「ミッシェルさんがいいかも」
「マークレイやってくれよ」
マークレイは答えた。
「そうだな。面白そうだし。異論は俺にはない」
そこへミッシェルは割り込んだ
「マークレイは全部一人でかっこつけていい所を持っていきそうだから、俺が抑え役のお目付け役やるか」
「抑え役ってなんすか!」
皆笑った。
ところが
「はーーーーい‼」
突如大声が響き渡った。
「僕リーダーやります!」
それはクラビだった。
「ええ……」
意外な立候補に皆驚いた。
どよめく。
マリーディアは笑顔で応援した。
「頑張ってクラビ!」
「マークレイの方が良くないか?」
と声が聞こえる。
マークレイは答えた。
「いや、やっぱやる気が一番大事でしょ。クラビ頼むぜ珍しいけど!」
「了解!」
どよめきの中、クラビがリーダーとなった。
そして練習し当日。
何とピッチャーはクラビに。
マークレイは言った。
「やってくれ頼む」
「任せとけ!」
クラビはノリノリだった。
これを機会に僕は自分を変える。
消極的でなく、皆を引っ張るんだ。
リーダー伝説の始まりだ。
そしてプレイボール。
「暴投!」
クラビはいきなり暴投した。
さらに山なりの球を投げる。
「あーあ!」
クラビはフォアボールを連発した。
くっ、リーダーってしんどい。
ようやく一回表が終わりフォワボール連発で六点取られた。
ベンチでマークレイは励ました。
「クラビ、あきらめるな、立候補したからには最後までやり遂げるんだ」
「二番ピッチャークラビ!」
空振り三振だった。
ざわめきだした。
「おいおいあいついいとこないじゃないかよ」
「なんで立候補したんだよ」
これらの噂話はクラビに聞こえていた。
「俺はリーダーを務めるんだ! 最後までやるんだ!」
しかしクラビは渾身の力で投球するがコントロールが悪い。
「フォワボール」
口の悪い相手チーム応援席の少年が言った。
「やーいへたくそ!」
これを聞いたマリーディアは相手観客席に怒った。
「やめて!」
しかし睨まれた。
「何だ女」
それに怖がったマリーディアは黙ってしまった。
そして迎えた七回裏。
クラビ軍のバッターの打った打球が相手ピッチャーの肩を直撃した。
「あっ!」
これが大騒ぎとなった。
「痛い! もう投げられない!」
「投げられなくするためわざと肩を狙ったろ!」
「そんな卑怯な事するわけないだろ!」
両陣営は一触即発で乱闘でも起きそうになった。
クラビは本当に怖くなった。
どうすればいいんだこんな時リーダーとして
皆をなだめよう!
「あー皆さん落ち着いてください! 僕がルポガ軍リーダーです責任は取ります! 喧嘩だけはやめましょう!」
しかし皆あまり聞いてない。
クラビは場数の少なさから本当にどうしていいか分からなくなった。
リーダーって何て難しいんだ。
自分を変えようと立候補したけど。
どうしていいかわからない!
乱闘寸前の中、ミッシェルとマークレイが出てきた。
「ミッシェルさん」
相手チームは怯えた。
「あ、あのミッシェルとかいうやつすげえ強いって噂だぞ何する気なんだ!」
ミッシェルはつかつかと相手チームに向け歩いた。
緊張が走る。
そして何と、いきなり土下座した。
「ええ!」
ミッシェルは土下座したまま言った。
「頼む。ここはノーサイドにしてくれ」
マークレイも土下座した。
「俺からもお願いします。また日を改めて再戦してくれ」
場がシーンとなった。
相手チームキャプテンは手を伸ばし握手を求めた。
「土下座なんてしないでください」
これで何とか落ち着きまた後日試合になった。
皆拍手した。
「すげー! さすがミッシェルさんとマークレイ! リーダーの器だぜ!」
クラビはどうしていいかわからず右往左往していた。
そして思った。
あまりリーダーは今後やりたくない。
向いてないかも。
マリーディアは試合が終わり観客席から降りてきた。
「クラビ、ドンマイ!」
それをマークレイは見ていた。
マリーディア、いつもクラビを励ますな……
クラビは励まされたものの恥ずかしくて去った。
リーダーってこんなに大変なんだ。
僕には難しいな。
やりたくねー。
これ以後立候補は減ってしまった。