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アジトの死闘

2023年10月18日サーベルタイガーの雰囲気や表現等

10月22日14時3分ボジャックの外見描写等

を改稿しました。

 クラビは銅の剣を装備していた。

「はっきり言って剣で実戦するのかなり久しぶりだ。通用するのか不安だ。というか明らかに完全に弱いんだけど」


《クラビステータス》


 レベル三 腕力七 体力七 素早さ八 頑丈七 魔力九 魔法耐性八

 武器:アンカー、銅の剣 防具:布の服


 はっきり言ってこの数値は、才能があるわけでない人が剣道を二か月位やった程度の数値だ。

 

 キーマは周囲の空気に怯え、クラビをツンツンつついた。

「お、おい何かいかにも魔物が出そうな場所じゃないか?」

 

 木のざわめきが不穏な雰囲気を作り出す。

 隠れている魔物の鳴き声が空耳か定かでないが聞こえる。


 クラビは言った。

「仕方ないよここまではずっと平原で目印がないし、森の入り口を集合場所にするしかなかったんだ」

 

 恐る恐る二人は森の中を探り覗き込んだ。

 するとかさかさと音が聞こえた。

 

 葉音の様だが生物が動く音にも聞こえる。

 音は二人に寒い予感を与えた。

 何者かが狙っているようだ。


 キーマは怖がって後退りし、聞いた。

「今グルルって音が聞こえなかったか」

「狂暴そうな声が」


 すると、木の影から予感通り獣が姿を現した。

 虎の怪物だ。

 キーマはぶるぶるがたがたした。


「げーっ! サーベルタイガー!」

 しかしサーベルタイガーはこちらに気づいていたが、すぐには襲ってこず睨んでいる。

 

 妙に動きはなめらかだった。

 そして置物の様に静止した。

 

 吠えたける前の静けさか。

 しかし眼が殺意と食欲に満ちている。

 

 サーベルタイガーの眼力を前にクラビはまだ落ちついていた。

 しかしキーマは帰りたいとばかりに怯えきっている。


 サーベルタイガーは襲うタイミングをうかがっているようだ。 

 獲物が射程距離内に入るのを待っているのかも知れない。

 本能と経験から測っているようだ。


 キーマは聞いた。

「やばいよこいつ凶暴だし! アンカーで何とかならないか?」

「これ使うの初めてなんですよ。戸惑っているうちに襲われたら」


 サーベルタイガーは隙を見つけ距離を縮めるため苛立っている。

 二人が一応武器を持っているため一定の警戒心があるようだ。


「ああ、寄って来た」

「こうなれば」


 クラビは背を向けた。

 そーっと後ろを向き


「逃げろーっ!」

 二人は一目散に逃げだした。


 これが逆にサーベルタイガーの獲物を狙う心に火を付け、目を覚ました様に叫び追って来た。

 置物状態から殺意を全開にしてきた。


「追って来る!」

「急いで!」

 

 しかし人間と虎のスピードは雲泥の差だ。

 追いつけと言われてる様なものだ。

「やばいもう駄目だ!」

 

 その瞬間、二人の前に人影が立ちふさがり、蹴りでサーベルタイガーを吹き飛ばした。

 倒れたサーベルタイガーをその人物は剣でけん制する。

「久しぶりだな。クラビ」

 

 サーベルタイガーを前にしても落ち着いて剣を肩にかけた力を抜いた姿勢で後ろ姿でその人物は挨拶した。


「狩りか……退屈な使用人生活の目覚ましにはちょうどいい」

 後ろ向きのまま答えている。

 キーマはその人物の異様な存在感と態度に怯えた。

  

 起き上がり怒り狂ったサーベルタイガーの突進をかわした少年は剣を構え切り込んだ。

 サーベルタイガーが肩から出血し動きが弱まった。

 キーマは怯えっぱなしだった。


「えっ誰?」

 少年は自己紹介した。

「クラビさんの第一子分、ボジャックさ!」


 そう言って彼は口元をにやりとさせた。

 固く鋭い髪型が激しさを感じさせる。

 

 彼の目つきは一見やる気なさげで醒めている。

 人生に疲れただるそうな、もっと言えばさびれた印象も受ける。

 それはクラビと似た孤児的な雰囲気かも知れない。


 しかしその一方、とても強い意思と激しさも併せ持っている印象を受ける。相反する雰囲気を併せ持つ。

 瞳の力は弧児独特と言っていい、色々な物を憎んできた殺気すら漂う感じだ。しかし透明感もある。

 

 反面真面目さも何故か感じる。

 頑張り屋で一途そうにも見える。

 

 あまり無駄な事は喋らなそう。

 しかし言うべき事は言いそう。

 全身から漂う自信、圧。

 

 しかし、元々はやや影の薄かった人が後天的努力で変わった感じが漂う。

 努力していそうで自分で人生を切り開く意欲がある目付きと口許をした少年だ。


 おどおどしたクラビと印象が異なる。

 張った胸に自信や経験を感じる。

 身体や腕は細めだがそれは無駄な贅肉がないからで、絞られている。


 ゴネルの上にカラプイを着てタイツとゲートルを履いている

 ブラウン、グレーの服を着ている。


「子分⁉」

 子分と言った事にキーマはとても驚いた。

 

 クラビは言った。

「子分じゃないだろ仲間だろ」


 キーマはまだ驚きっぱなしであった。

「貴方クラビのお友達なんですか⁉ こんな強い仲間がいるなんて知らなかった」

「紹介するよ。元雇い主のキーマさん」


 微笑み会釈した。

「ボジャックです。宜しく」

「よ、宜しく」


 その時陰に隠れていたもう一匹のサーベルタイガーが襲い掛かって来た。

 そこにまたもや人影がかばう様に現れ、剣の一閃をサーベルタイガーに食らわせた。


「えっ? 今度は誰」

 そこへかなり細身の目が切れ長で長い髪で目を隠した少年が現れた。


「お久しぶりっす」

「ゾゾ!」

 

 寡黙で控えめそうである。

 切れ長の目を隠し気味のさらさらした長髪。顔は細い


 身長百七十五センチに対し体重五十五キロと軽い。

 繊細そうで非常に細身の体。タイツが細い足を際立てる。

 

 動きを妨げない軽装の服。

 影を表す紫と黒の色の組み合わせ。

 そして髪と細めの顔と体が繊細な全体のシルエットを作っている。


 少年はクラビに言った。

「ボス、大丈夫ですか? 只今到着しました」

 膝を突きかしこまった。


 またキーマは驚いた。

「えっ、ボスってクラビの事ですか? こんなにかしこまって、何がどうなって」


 ゾゾは自己紹介した。

「俺はお二人の後輩なんです。クラビさんをボスとしてとっても尊敬してます」

「ええ? 皆さん元孤児院のお仲間?」 


 ボジャックが説明する。

「正確に言うと『孤児院窃盗団』の仲間だな。勿論クラビも」

「窃盗団⁉ クラビが⁉ ま、まさか」


 クラビは照れた。

「一応本当なんだけどね」


 キーマは思った。

 だけどこの二人マジで強い。

 剣筋も体裁きも。


 クラビも同じかそれより強いのか? 

 てっきりぺこぺこしてばかりいる戦いなんて出来ない奴だと思ってた。


《ボジャックステータス》


 腕力十八 体力十九 素早さ二十二 頑丈二十 魔力八 魔法耐性七

 武器:鉄の剣 防具:旅人の服

 保持スキル「怪力」「超怪力」


《ゾゾステータス》


 腕力十七 体力十七 素早さ二十四 頑丈十九 魔力十 魔法耐性九

 武器:レイピア 防具:忍び装束

 保持スキル:「高速移動レベル一」「気配消去」

 

 二人共クラビより大分強い。

 キーマは恐る恐る確認した。

「ボジャックさんに、ゾゾさん」

「あ!」


 ゾゾは突如何かと思う程凄い声を出した。サーベルタイガー以上だ。

 寡黙な外見からのギャップが凄い。


「どうした?」

「クラビさんに対する悪意を感じるうわあああ‼」

「げっ!」


 ボジャックは説明した。

「こいつクラビの事になると予測不可で切れるんですよ」

「あああああ‼️」


「俺は何も!」

 キーマは確かにいじめていたが言いたくなかった。


「落ち着け」

 とボジャックは止めた。

 

 ゾゾはまた低い落ち着いた声に戻った。

「取り乱してすみませんでした。俺はクラビさんを攻撃する奴を見ると切れてしまうんです」


 キーマはクラビに耳打ちした。

「いじめた事黙っててくれ、謝る」 


 ボジャックはリードするように言う。

「じゃあ、早い所森を抜けて洞窟に行こうぜ」


 そして四人は走りながら洞窟へ向かった。

 ゾゾはキーマにいった。

「俺が何故あんなにクラビさんを慕う様になったか後で話しますよ」


 ボジャックはうきうきしている。

「しかし俺は嫌な使用人生活を抜けてドンパチできるようになった。危険があっても体が熱くなってくるぜ」 

 

 キーマは思った。

 この二人クラビと違って怖いなあ……


 同時に敵がいないよう祈りながら。

 敵とも遭遇したが蹴散らした。

 そして四百メートル先の洞窟の前に来た。

 

 ごつごつした岩でできた、天然の洞窟で入り口は高さ二メートル五十位でそこを掘り進めて先に進める様にしたらしい。石灰岩が浸食した様だ。

 

 天然な部分と人口の部分がある。

 気を付けないと頭をぶつけそうだ。


 キーマは様子を伺う。

「見張りはいないみたいだな」


 キーマは続ける。

「この情報自体相当厳重だからな。知ってる人は少ないだろう」


 ボジャックは答えた。

「でも罠があるかもしれない。気を付けて入ろう」


 四人はゆっくり石橋を叩いて渡る様に慎重に歩を進めた。どこかに兵が隠れていないか。

 

 そして七メートル程進むと足に何かが引っかかった。

 途端に音がなった。


 罠のブザーだったのだ。

 即座に奥から六、七名の敵兵が来た。


「貴様ら誰だ! 何をしている! 何故ここが分かった!」

「やるしかないのか」

 と言い、ボジャックとゾゾは戦いなれしていて動じず構えた。


「ガキだからって舐めるな、甘く見んじゃねえぞヤロウ‼」 

 とゾゾは言葉使いが変わった。


 ボジャックは自信ありに言う

「師範に習った剣術を見せてやる」


 大人の兵相手にも引かない。

 しかしクラビも剣を構えたが、逆にボジャックと違い怖く腰が引けた。


 クラビは、はっきり戦う事と状況に震えていた。

 彼はしばらく剣術の実戦はしていない。


「訓練された兵が相手じゃ、俺の力じゃ勝てそうにない。たしなみていどの剣術しかないんだ」

 

 さらにつぶやいた。

「女の子に負けた俺なんかじゃ……それが辞めた理由だし」


 恐れと置かれた状況に心臓が高鳴る。

 臨戦態勢の雰囲気に付いて行けてない。

 これは殺し合いだ。


 クラビはまた呟いた。

「あの二人は強くなったけど、俺は孤児院で修行したけど強くなれなかった。だから好きな女の子からも身を引いたんだ。今まではぺこぺこ頭を下げてればよかったけど」


 その時弓兵がそんな気も知らず、冷淡に正確にクラビ目掛け弓を引いた。

「あっ!」

 

 クラビが叫ぶのもつかの間、鋭く矢は発射された。

 矢が飛んでくる。

 チャリーン!


 ところが、飛んできた矢に反応するように突如、クラビの右腕からアンカーが飛び出し、盾のように矢を振り払った。


 一瞬だった。

「えっ?」

 クラビは何だか分からなかった。

 

 勿論ボジャック達もだ。

 高速で飛んでくる矢に即反応したのだ。


「な、何だあれは!」

 と見たこともない、しかも異様な動きをするアンカーに弓兵達はどよめき驚いた。

 まるで生物のようで、機械の様な正確さもある。


 そして今度はクラビの意志とは関係なく、自動的に鉛の重い鐵具が弓兵の元に拳銃の弾丸のごとき勢いで飛んだ。


 鎖はまるで剣の様に鋭く伸びる。

 スピードは百五十キロはあるだろう。


 あっけに取られる間もなかった。

 兵士はがんと金具で高速で重く抉るように殴られ吹き飛ばされ岩壁に激突した。


「え?」

 あまりの威力に兵は驚いてひるんだ。

 

 クラビも戸惑いっぱなしだった。

 まだ受け止めきれていない。


 キーマは喜んだ。

「すごい! それが新しい武器なんだな!」

「いや俺は何も」


 女神は言った。

「貴方が動かしたんじゃなく持ち主の危機に自動的に動いたのよ」


 ボジャックは指示する。

「よし! 剣兵は俺達が何とかする。クラビは弓兵四人を頼む」

「えっ!」


 ちょっと無茶なお願いっぽかった。

 別の弓兵はクラビを危険視し狙った。


 しかし本人はまだ準備が出来ていない。

 弓が引かれ二本の矢が高速でクラビめがけ飛ぶ。


 ガキン!

 しかしまたもアンカーが生き物の様に飛び出し自動で動き防いだ。すさまじい反応速度だ。

 〇、一秒単位で動いている。


 女神は言った。

「今度は攻撃! 新しいカードを使う時よ! 『速』と『鞭』を。一気に薙ぎはらうわ!」

 

 クラビは言われるままにカードをセットした。

「よし! 行けっ!」


 するとアンカーは並んでいる弓兵に向かってごうごうとうなりを上げ向かって行った。


 ブアアアッ‼️

 重く低い音を立てながら、しなってまるでゴムや革の鞭のごとく左に曲がって弾力を溜め込む。

 

 そして鞭のカードのとおり、アンカーは巨大な鞭の様な軌道を描き、真横に並ぶ兵達を一列一気に凄まじい力で張り倒す様に薙ぎ払った。

 

「ぐあああ!」

 殴られた兵は醜く顔面が変形し首が変に曲がった。

 風圧もすごく衝撃波が起きた。


 巨人が巨大な手を振るい、あおいで風を呼びそのまま張り倒した様な感じだ。

「すごい!」

 クラビはようやく威力を自覚出来た。


 一方ボジャックとゾゾは戦っていた。

「こいつらガキの癖に!」

 と兵達はてこずった。


「俺は騎士階級じゃないけど少なくとも孤児院じゃ誰にも剣と強さへの気持ちは負けない」

「てめえらよ、バラバラに肉を切り裂いて殺してやっからよお」

 ゾゾの声が一段低くなった。


 ボジャックは言う。

「おっ、普段は従順なゾゾが戦いで人格変わったな」

「俺には人殺しても悲しむ親はいないからな」


 ゾゾは戦いになると時折人格が変わる。

 敬語も忘れる程だ。


 凄まじい目つきで敵兵を切り裂くゾゾ。

 その時、奥から魔術師の様な五十代の男が現れた。

 凶悪な顔と派手な髪型だ。

「何だ貴様らは」


「あ、あんたらこそ何をここでしているんだ」

 キーマは震えた。


「私の名はアンドレイ様の忠実な司令官ザーゴン。我々は侵略の下ごしらえとして魔法性爆弾をここに設置しているんだ」


 キーマは言った。

「やはり侵略の噂は本当だったか」


 ザーゴンはクラビを見た。

「小僧、お前はおかしな道具を持っているな。それを渡してもらおう。何なら小僧ごと連れて行って調べてやる。他の三人は殺すが」


「行けっ!」

クラビはアンカーを発したが、ザーゴンは即座に同じ位の強さの光の魔法で迎え撃ち相殺した。


 ザーゴンは感心した。

「確かに見た事のない不思議な武器だ。だが私の魔法は破れまい」

 ザーゴンは詠唱し、手からすさまじい炎を出した。


 ごうごうと周囲が火に包まれる。

 かなりの大きさだ。

 

 キーマが叫ぶ。

「すげえ火! 近寄れない!」

 

 女神が助言した。

「今度は氷のカードを入れて!」

 

 するとアンカーが冷却され氷の属性となった。

 変形し発射口が出来そこから激しい冷気を発して炎とぶつかり相殺した。


「な、何?」

 ザーゴンは動揺した。


「何だその武器は⁉ こうなれば持ち帰って報告せねばならん。意地でもいただくぞ」

 と今度は氷の魔法を放って来た。


 女神はとっさにしかし落ち着いて叫んだ。

「今度は火よ!」


 火の文字が書かれたカードを入れると今度は発射口から激しい火が出て敵の氷を防いだ。


 ザーゴンは段々焦って来た。

「おのれ! ならこれでどうだ!」

 と暗黒の闘気を放って来た。


「ああ、あれに対抗できるカードは今はないわ!」

「ぐわ!」


 その時クラビの目が光り、光の闘気を発した。

「何⁉」


 光と圧がザーゴンを襲う。

 目もくらむばかりに。

「今のもアンカーの力?」


 女神も驚いた。

「違うわ。これは勇者にしか出せない光の闘気。これがまさか勇者の力の片鱗?」 


「ぐあ!」

 光の闘気がトゲや刃物の様に射出され遂にローブを傷つけ貫く。

 これにザーゴンは怒った


「お、おのれかくなる上は!」

 と地面と岩壁に重力魔法を放ち、地割れと落石を引き起こした。


 これにはパニックになり慌てる一行。

 キーマは半径五十センチ近くの割れ目にはまり上半身だけ地上に出る状態で下半身がすっぽりはまり動けなくなった。


「くっ!」

 ザーゴンは嘲笑った。


「馬鹿貴族がはまったか! 大して偉くもないのにデカい顔をする貴様に相応しい死に方をさせてやる!」


 キーマの真上に直径二メートルはある巨大な岩が落ちた。

「わああっ!」


 しかし何とそれを下からクラビが受け止めた。

「クラビ!」


 ボジャックは驚いた。

「あいつ、あいつにいじめられてたんじゃないのか?」


 キーマも驚いた。

「な、なんで、散々意地悪したのに」


 クラビは答えず支え続ける。

 クラビの体が光る。


「勇者の力……」

 女神はつぶやいた。


 クラビは声を絞り出した。

 手が負荷で震えている。


「は、はやく逃げろ」

 しかしザーゴンはまた嘲笑した。


「父親も大して偉くもないがこのバカ息子はそれ以下だ! 一人じゃ何もできやしない! はまったまま無様に死ね!」


 クラビは歯を食いしばる。

 ボジャックは言う。


「クラビ、止めろ、お前が死ぬぞ」

「うおお!」


 クラビは岩を投げ捨てた。

「はあはあ」


「くっ、あのバカ息子を殺せ」

 ザーゴンが命ずると生き残りの弓兵が起き上がり、キーマを撃った。


 矢は心臓に命中した。

「‼」


 キーマはばったりと息を引き取った。

「はーっははっは! 下半身が埋まったまま無様に死におった。バカ息子にふさわしい死に方だ!」


 クラビの中で何かがはじけた。

「くそ野郎……人を殺しやがって」

「何? 言葉遣いが変わったな二重人格か?」


 クラビは爆発した。

「人が死んで何も感じない、キレない人間がどこにいるんだこのクソヤロー‼️」

「なっ!」


 そして手から闘気をだすとザーゴンを直撃した。

「うおおお」


 クラビはまさしく無敵状態になり火炎もはじき返した。

「馬鹿な!」


 クラビのアンカーがザーゴンに重く食い込んだ。

「あぐ!」


 さらにクラビは大岩をアンカーで吸い付け、振り回した。

「ああ!」

「死んじまえ!」


 その時キーマの意識が戻った。

 い、生きてる、急所を外したんだ。

 

 それにしてもクラビ、俺の、俺なんかの為に怒ってくれてるのか。俺は、俺は馬鹿だ。俺は何て馬鹿でひどい奴だ。


 岩はザーゴンに激突し砕けた。

「おのれ、この借りは返す。秘密を知った上我々を敵に回して生き残れると思うな」

 

 とザーゴンは足早に逃げ、手下が道を塞ぎクラビ達が追えないようにした。

 

 そして待機していた転移魔法が使える魔法使いの魔法でサブラアイム城へテレポートした。


 皆はキーマに駆けよった。

「はあはあ、キーマ! 生きてたのか!」

「何とか」


「良かった」

「これ緊急傷薬だ。すぐ病院に運ぼう」

「すまない、クラビ」


 一旦皆クレゴス家に帰った。

 クレゴスは非礼を詫びた。


「申し訳ない、何て謝っていいかわからない」

 キーマも頭を下げっぱなしだった。


「約束通り冒険に帯同してくれたお礼だ」

 キーマが宝袋を渡した。


「じゃあ俺達はこれで」

 キーマは叫んだ。

「クラビ、家に戻ってくれ! 待遇は全部変える」


「いや、俺達旅に出なきゃいけなくなったから」

「いつでも我々を頼ってくれ」

 クレゴスは頭を下げた。


「すまなかった、すまなかった!」

 キーマは涙を流した。


「いいよ」

 クラビ達の冒険はここから本格的に始まる。

 一方その頃、傷ついたザーゴンが王宮に入った。

 上司であるアンドレイ=魔王にクラビ達の事を報告する為だ。

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