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閑話  マークレイの手紙と誓い ミッシェル再登場

2023年11月8日

終盤を多く追記しました。

 孤児院でクラビ達が十歳の頃、クラビではないある少年が二人組の少年におもちゃを取り上げられた。

「返せ!」

「やーだね」


 しかしその取られた少年がいない時に、二人組の前にマークレイが現れた。

「面白そうだな。ちょっと俺に貸してくれよ」

「げっマークレイ」


 怖がった二人組はマークレイに渡した。

 マークレイはその二人からおもちゃを取り上げた。


 そして取られた少年に返してあげた。

「ほれ、あいつら飽きたから返すって」

「ありがとう、マークレイ」

 

 クラビはその様子を陰で見ていた。

 回想を終わる。 


 クラビは旅立つ前にサブラアイムの農場で暮らしているマークレイに手紙を書いた。


「手紙ありがとう。元気で何より。でも無理して元気ぶってない? そんな時は遠慮なく頼ってくれ。といっても俺も辛い時ボジャック達に何も相談しなかったんだけど。旅に出て改めて仲間の大事さが分かった。でこれから女神の頼みでアンドレイの暴政を叩く為の旅に出るから合流して力を貸して欲しい。君は頼りになる、何と言っても君は子供の頃から何でも出来て行動力のあるカリスマだった。いつもいじめられてる人がいたら助け、サッカーが下手な人に教え、お祝いの時は盛り上げる、俺から見たら英雄の様な人だった。サッカーもいつもエースだったしチームワークを大事にしてた。君が合流すれば百人力だ」


「クラビ……」

 マークレイは農奴をしながら休日に狩りをしてレベルを上げ力を蓄えていた。

 剣を磨き手紙を読んだ。


「もう旅立つんなら手紙を書いても届かない。でも書くよ。大人しかったお前が女神から命を受けて勇者になるなんて思わなかった。無理するなよ。でもお前はいつも皆と違う何かがあった。いつも皆を正しい方向に導こうと光を出していた。マリーディアもそうだな。お前は決して流されず「悪い事は悪い」と訴えていた。腕っぷしは俺の方が強かったけどでもお前は勇者に選ばれる何かがあるのかも知れない、だから俺も仲間に相応しくなるよう鍛える。昔恐喝なんかさせてごめん。会ったら気のすむまで殴ってくれ。こっちは炭鉱の仕事はあまりにきつすぎて悔しいけどやめた。きついだけじゃなく休みの日動けなくて狩りが出来ないんだ。農奴もきついけどな。それだけじゃない。今年貢はとても重いし逆らえば連れて行かれ拷問にかけられる。俺は力を溜めていつか反逆してやろうと思った。今もそう思ってる。でももう俺は社会人だし、暴れる柄じゃない。だから必死に自制して暴力でなく国を変える。アンドレイを倒す手はないか模索しているんだ。休日には皆で会って狩りだ。大分レベルは上がった」



 マークレイステータス


 力四十四 体四十八 頑丈さ四十五 素早さ四十一 魔力三十 魔法耐性三十五 


 武器鋼の剣

 スキル 「戦いの天才」「切れる」「怪力」「相殺」


 ボジャックより大分強い。 

 今日も鷹やイノシシを狩った所だ。

 

 そして狂暴な熊が来た。

 しかし目をそらさず一歩も引かない。


 熊が猛り狂い爪を振り上げる

 しかし「相殺」で剣で落ちついて爪を受け止める。

 驚く熊、そして「怪力」スキル。


 蹴りとパンチだけで熊にダメージを与える。

 熊は痛さだけでなく、ずっと小さな人間に翻弄されているのが信じられない。


 熊語が聞こえて来そうだ。

 そして何と柔道の一本背負いで投げた。

 巨体が地面に崩れる。


 さらにのしかかって殴り降参気味の所で剣でとどめをさした。

 熊に一人で勝った。

 「戦いの天才」のスキルで経験値が多く入った。


「孤児院にいた頃はいつからか優しさを失い暴れ、生き方に正解が見いだせなかった。どす黒い感情と戦い時にはなすがままにして暴れた。俺は弱い人間だ。『時代が悪い』『社会が悪い』『大人が悪い』『政治が悪い』そればかりだった。でも真面目に働いて何かが見えて来た、後親父が時々仕送り送るんだけど、親心とは言え貴族だって事思い出すのやなんだよな。俺を虐げて来た奴らなんだからだから使用人だけは断った偏見だけど。真面目に働いて力を上げ、暴力ではない道を模索する。サブラアイムはクーデター起きる寸前だがな。だが俺は必ず正しい何かを掴んで見せる。不良行為してた頃には戻らない。教会で洗礼を受けて禊ぎをして罪を切り、お前やボジャックがいてくれたからだよ」


 当時は集団収用され、自分たちの無力さを思いしった。うちひしがれ大人にはかなわないちっぽけな存在だと知った。


 それ以外にも甘える相手はいない、食事が与えられない、こき使われ心を殺す、親戚にいじめられた子、皆辛かったやつばかりだ。

 

 親の死が悲しすぎて涙がでない子、血が怖くトマトを食べられない子、貴族は何も苦労しない。


 孤児は、死ぬまで孤児だ。

 その後教会に保護され「罪を清めなさい」と牧師に言われ、何て自分は今までバカだったのかと涙を流した。 


 罪と咎を洗い流すように。

 確かめるように十字架のネックレスを触った。


「マークレイって正義の人だね」 

 と孤児院時代友人達に言われた頃を思いだし初心に帰った。


 そうだ、正義の人はむやみに暴れたりしちゃいけない。人を言いなりにしちゃいけない。

 

 罪ひとつひとつを噛み締め悔いた。

 物を斜めから見てもいけない。


 皆が言ってくれた様に友人を守らなきゃいけないんだ。

「国の差別やアンドレイの暴挙に怒りながらもブチ切れたりせず真面目に力を重ねてお前が来るのを待ちながら動いて行くよ。野菜って泥まみれでも綺麗に見えるよな。ベルスは貴族の父親の後を継ぐらしい。お前達と冒険出来たら厳しい事があっても楽しくなりそうだな。永遠の親友へ。俺の英雄へ」

 と言ってしめくくり太陽を見上げて一呼吸つき汗をぬぐった。


「もう悪い事はしない。孤児だから生きる為に仕方なかったのもあるけど、だからと言って暴れたり感情をぶつけたりはしない。ガキじゃないんだから。俺は弱かった」

 と手紙には書かなかったがクラビに伝わる事を祈り、自身を戒めた。


 そして最後に

「シヴァをお前達の救援に送る。まだ時間はかかるが到着まで待っていてくれ」  


 一方、夜の街を少年は逃げながら走っていた。

「はあ、はあ」

 それは孤児院リーダー・ミッシェルだった。


 少し広めの額、短めに切ってあるが一本一本が太くかつ流れる様に整っている髪、あごは少し長いが頬のラインと合わせ見事にシャープな顔を作っている。


 鋭い眼光とツヤのある髪はリンクしているかのようだ。

 彼は夜の闇を逃げた。


 そして裏路地に逃げ込んだ。

「追い詰めたぞ」

「!」


 現れたのはサブラアイムの兵が三人。

 ミッシェルは言った。


「何故居場所が分かったんだ」

「ふふ」


 後ろから見覚えのある警察官の格好の大男が現れた。

 体だけでなく顔も大きく毛もかなり深い。


「あんたは」

 彼は以前からクラビ達を追い立てようとしていた悪辣な警官・ワイトであった。

「私が居場所を調べて教えたのだよ」


 ミッシェルは必死で答えた。

 警官と戦おうとはしない。

「俺達はもう窃盗なんかしていない」


 ワイトはにやにやしていた。

 正義感でなく楽しみのようだ。

 本性丸出しであった。


「貴様らはどうせ再犯する。金もない孤児はそうやって生きるしかないくずばかりだ。だからサブラアイム軍と組んで貴様らを捕獲、いや殺そうと思ったのよ」


 ミッシェルは情けなかった。怒るよりも。

「あんたそんな事しかやる事ないのかよ」

「何とでも言え、今死ね!」


 とワイトは言い試作型の銃を撃ったがミッシェルは凄まじいスピードでかわした。

「馬鹿な! 銃をかわしただと⁉」


 着地したミッシェルは息を切らし言った。

「あんたにやり返せば捕まるからな」

「分かってるじゃないか」


 ワイトが再度銃を構えるとミッシェルは指から手裏剣型エネルギーを数枚発した。

影手裏剣シャドウ・スライサー!」


 手裏剣がワイトの銃に当たりはたき落とした。

「しまった」


「この隙に逃げるぜ」

「捕まえろ!」


 ミッシェルは術を放った。

「傀儡術・卍締め!」


 ミッシェルが念を放つと兵達は動けなくなった。

「今度こそ逃げさせてもらう。俺はやり返さないぜ」


 今度こそ猛スピードで逃げた。

「クラビ達に合流しなければ!」

 そして夜が明け舞台は再びクラビ達のいる孤児院に戻る。

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