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第92話 遠藤兄妹

コンビニに着いた俺とメアリは各自手軽に食べられそうな物を購入すると、コンビニを出てから二手にわかれた。

メアリには生活必需品を買い揃えて拠点となるホテルを探すよう言っておいたのでそうするはずだ。

一方の俺は買ったばかりのカレーパンにかじりつきながらアパートへと戻る。


今日は火曜日。平日の朝ということもあって高校生や会社員の姿が多く目に映る。

俺はそんな人の流れに逆らうように一人歩いていた。


そんな時、

ブウウゥゥーン……ブウウゥゥーン……。

マナーモードにしてある俺のスマホにメールが届いた。

スマホを手に取りメールを開くとそこには新たな依頼が書かれていた。

件名の欄には[依頼料二百万円出すので至急お願いします。]とあった。


俺は依頼文を声には出さず目を通していく。

するとどうやら依頼主もターゲットも北海道在住だということがわかった。


「あ~、残念だけど北海道は遠すぎるなぁ」


俺は関東圏の依頼しか引き受けてはいない。

というのも、千里眼の呪文を使えば相手が遠く離れた場所にいても悪人かどうか見極めることは可能ではあるものの、殺しを実行するためには結局その場所に行かないといけないからだ。

関東圏くらいならば移動もたやすいが、人一人殺すのに北海道まで行くのはさすがに骨が折れる。


「二百万円は惜しいけどな……」


だがここで、

「ん? って待てよ。俺にはメアリがいるじゃないかっ」

遠隔で人を殺すことが出来るメアリの存在を思い出す。


「そうだよ、メアリがいるんだからこれまで引き受けられなかった遠隔地の依頼も受けられるようになるぞ」

メアリの覚えている即死呪文ならターゲットの居場所など関係ない。

メアリが「シクソ」と唱えれば相手を瞬時に殺すことが出来るのだった。



◇ ◇ ◇



俺はアパートに帰ると早速これまで遠隔地の依頼だからと無視していた依頼を確認していった。

すると全部で八件あった。

俺はすぐさまこの八件の依頼主たちにターゲットの顔と名前と血液型がわかるかどうかを訊ねてみた。

直後、待ってましたとばかりに依頼主たちからのメールが次々と返ってくる。


結果、先ほどのメールにあった北海道の依頼と合わせて九件中四件がターゲットの顔、名前、血液型の情報を入手できることが判明。メアリの即死呪文が使える案件だということがわかった。



◇ ◇ ◇



昼ご飯を食べてしばらく横になっているとメアリから連絡が来た。

仮住まいのホテルを確保したことと適当な洋服を買い揃えたことを報告してくる。

俺はメアリに俺のアパートにすぐ来るように告げた。

もちろんメアリに即死呪文を使ってもらうためだ。


そして待つこと約十五分、メアリがみたびうちにやってきたのだった。



◇ ◇ ◇



「依頼主の名前は遠藤マミさん。北海道在住のウェディングプランナーだそうだ。出所したばかりの実の兄が、遠藤さんが働く結婚式場に毎日のようにお金の無心に来るから仕事に支障をきたしているらしい。職場の同僚にもちょっかいを出しているそうで早く殺してほしいっていう依頼だ」

「それはあかんなぁ。よっしゃ、うちが殺したるわっ!」

メアリが鼻息荒く宣言する。


「まあ、ちょっと待て。その前に俺がその兄貴って奴を千里眼で覗いてみるから。それで悪人っぽいと俺が判断したらその時はやってくれ」

「ええぇ~、そんなん必要あらへんよ。刑務所に入っとる時点で絶対悪人やんかぁ」

「まあ、そうかもしれないけど万が一ってこともあるだろ」

刑務所に入って改心したかもしれないし、もしかしたら依頼主の遠藤さんが嘘をついている可能性だってなくはない。

それも含めて千里眼で見極めないとな。


「むぅ~」

口をとがらせているメアリを尻目に俺は「ンガリンセ」と口にして目をつぶる。

すると、依頼主の遠藤マミさんとターゲットの遠藤カナタが結婚式場の裏手で言い争っている場面が見えた。

遠藤カナタは怖い顔をして遠藤マミさんの肩を強く揺らしている。

何事かを叫んでいるようだが、千里眼の呪文では音声までは聞き取れないので遠藤カナタが何を叫んでいるのかはわからない。


「どうなん?」

メアリが顔を寄せて訊いてきた。

とその時、遠藤カナタが遠藤マミさんの財布を強引に取り上げると財布の中からお札を数枚抜き取った。

そして空になった財布を放り捨てる。


「うん、悪人みたいだな」

「ほら、やっぱりそうやんかっ」

「ああ、悪かったな」

「じゃあ殺すで」

「あ、ちょっと待て。まだ遠藤マミさんが近くにいるから……よし、もういいぞ。誰も見てないからやってくれ」

千里眼で遠藤カナタの周りに人目がないことを確認した俺の言葉を受けて、メアリが「シクソ!」と声を発した。


次の瞬間、遠藤カナタが自分の車の中で胸を押さえ苦しみ出し、その数秒後誰にも気づかれることなくこの世から消えた。

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