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第85話 助手メアリ

「あ、あの……お隣の方はどなたでしょうか?」

進藤さんがメアリにちらちらと視線を飛ばしながら訊ねてくる。


「えっと、彼女は助手です」

「助手……ですか?」

「ええ。依頼内容によっては女性がいた方がいい場合もありますから」

とそれらしいことを言ってみる。


「そ、そうですか。でも今、devilさんのことをヤマトお兄ちゃんと呼んでいましたけれど……」

「あー、それはですね、単なるカモフラージュですよ。まさか兄妹で殺しを請け負っているなんて誰も思いませんからね」

「そ、そうだったんですか。すみません、変なことを訊いてしまって……」

「いえいえ、気にしないでください」


俺の返答に恐縮する進藤さん。とりあえず納得してくれたようだ。

これでメアリがいても特に不審がられることはないな。

と、そんな俺の心中など気にする様子もないメアリは、二皿目のサンドイッチにかぶりついていた。


俺はメアリをいないものとして進藤さんと話を進める。


「それで、娘さんが行動をともにしている連中の名前と血液型はわかりましたか?」

「す、すみません。娘にそれとなく訊いてみたのですが、そのどちらも教えてもらえませんでした」


今回の依頼は進藤さんの娘さんの遊び仲間三人を始末すること。

そこで進藤さんにはその連中の名前と血液型を探ってほしいとお願いしていたのだが、駄目だったらしい。

せっかくメアリの呪文で楽が出来ると思っていたのだが、期待が外れた。


「な、名前がわからないと引き受けてはいただけないのでしょうか?」

「いえ、大丈夫ですよ。安心してください」

俺が優しく答えると、

「そ、そうですか」

ほっと胸をなでおろす進藤さん。

よっぽど娘さんのことが心配なのだろう。


「で、ではこちら、約束の三百万円です」

言って進藤さんはテーブルの下から俺に札束の入った紙袋を渡してきた。

用心のため誰にも見られないようにと考えての行動のようだ。逆に怪しく見えるが。


「ありがとうございます。それでは一週間以内には結果を出したいと思います」

「よ、よろしくお願いいたしますっ」

深々と頭を下げる進藤さんを前に、俺は隣でグラスに入った氷をガリガリ食べているメアリに顔を向ける。


「メアリ、行くぞ」

「ん? もうええん?」

「ああ、話は終わったから」

「はぁ~い」


進藤さんの熱い視線を背中に感じつつ、レジで支払いを済ませる俺。

そんな中、メアリは俺を待つことなく喫茶店を早々に出ていくのだった。



◇ ◇ ◇



外に出ると店先で伸びをしていたメアリが振り返り、「ごちそうさまでしたぁ」と微笑みかけてくる。


「サンドイッチ、めっちゃ美味しかったわぁ」

「そりゃよかったな。でも俺たちは食事しに来たんじゃないからな」

「わかってるって。さっきの男の人の娘の友達を殺せばええんやろ?」

「ああ。とはいっても名前も血液型もわからない以上、お前の呪文は使えないけどな」


メアリの即死呪文の発動には殺したい相手の顔と名前と血液型を知っている必要があるのだった。

しかし今回わかっているのは外見的な特徴だけ。


「ほな、どないするん?」

「メアリ。お前、東京行ったことあるか?」

「?」

俺の問いに大きな目をぱちくりさせるメアリ。


実は進藤さんの娘さんの顔と名前はすでに教えてもらっていたので、俺は千里眼の呪文で娘さんの居場所を現在進行形で把握している。

なので娘さんが今東京にいることも、そこで進藤さんの言うガラの悪い連中と一緒にいることもすべて手に取るようにわかっていた。

ちなみに読心呪文も同時に発動させていたので、進藤さんが嘘をついていないことは確認済みだ。


「メアリ。今から東京に行こう」

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