第49話 桐原京子
「……というわけなのでやはり飛島亜香里は加害者ではなく被害者でした」
『そ、それでは、その桐原京子という女子生徒が真犯人だったんですね……』
「はい」
『っ……』
電話口から笹倉さんが歯を食いしばるような音が聞こえた気がした。
『……そ、それでこの後はどうしていただけるんでしょうか……? その、桐原京子を殺――』
「それは電話ではちょっと。別に笹倉さんを信用していないわけではありませんが内容が内容なので」
『は、はい……そ、そう、ですよね……』
「ですが期待していてください。あ、それと連絡を取るのはもうこれで最後です。この携帯番号は消去しておいてください」
俺は笹倉さんにそう伝えると電話を切って、俺自身も笹倉さんの番号を消した。
◇ ◇ ◇
翌朝。
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鬼束ヤマト:レベル15
HP:42/42
MP:36/36
ちから:40
まもり:35
すばやさ:29
呪文:クフイカ(2)
:クドゲ(1)
:チンカンニクア(3)
:シアビノシ(4)
:ンガリンセ(6)
:ンシクド(5)
:インテ(10)
:ヨキウヨシクオキ(25)
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一晩熟睡したことで俺のMPは全回復していた。
「ステータスクローズ」
目の前のステータスボードを閉じると、俺は桐原京子を殺すため桐原京子の居場所を千里眼の呪文で確認することにした。
千里眼を使うには名前と顔が一致している必要があるが、桐原京子はさすがクラスの一軍のリーダー格だけあって自己顕示欲が強いようだ。
ネットで桐原京子と検索したら自分でアップしたであろう画像が多数出てきた。
その中には柊麻衣が一緒に写っているものもいくつかあったのでまず本人で間違いない。
桐原京子は今現在どこにいるのだろう。
今日は日曜日なので自宅にいるかそれとも学校で部活でもしているか。
早速「ンガリンセ」と唱えると目を閉じて桐原京子の居場所を探る。
見えてきたのはとある一軒家だった。
どうやら前者だったようだ。
桐原京子は外出でもするのか自分の部屋でパジャマから派手な洋服に着替えている最中だった。
その様子をしばらく見ていると桐原京子がスマホを耳に当て何やら話し始めた。
千里眼では音声までは聞き取れないので話の内容はわからないものの、表情を見る限りかなり浮かれている感じだ。
朝ご飯を済ませた後桐原京子は家を出た。
俺も家を出て桐原京子のもとへと向かう。
◇ ◇ ◇
駅前で今風の男と会うとその男の腕に自分の腕を絡ませた。
おそらく彼氏なのだろう。
桐原京子はその足で彼氏とともに映画館へと足を運んだ。
二十分後、俺もその映画館に到着。中に入る。
後ろから二番目の席で流行りの恋愛映画を見ている二人の背後に腰を下ろした俺は桐原京子を殺すチャンスを待った。
するとそれは意外にも早くやってきた。
恋愛映画にさほど興味がないのか、桐原京子の彼氏がわかりやすく体をのけぞらせて眠りについたのだ。
軽くいびきなんぞをかいている。
俺は最終確認として小さく「チンカンニクア」とつぶやいた。
すると目の前の桐原京子の背中を見ただけで強烈なうすら寒さを覚えた。
ぞわぞわっと鳥肌が立つ。
間違いない。
俺はそっと桐原京子の首元に両手を伸ばすと次の瞬間――ガッと掴んだ。
喉を圧迫されて声が出せない桐原京子は暗い館内で、
「っ……!」
俺の手を振りほどこうともがく。
だがそれすら許さない俺は万力のように強い力で桐原京子の首をぎりぎりと締め上げていく。
桐原京子が必死に俺の手に爪を突き立てるも失神したのだろう、首を絞め始めてから五秒ほどすると急に全身から力が抜けた。
まだ血管が脈打っているのを指で感じたので俺はそこからしばらく首を絞め続けた。
ててててってってってーん!
『鬼束ヤマトは桐原京子を殺したことでレベルが1上がりました』
『最大HPが1、最大MPが0、ちからが0、まもりが0、すばやさが3上がりました』
機械音により桐原京子が息絶えたのを確認した俺は席を立ち、後ろの出入り口のドアに手をかける。
最後にそっと振り返ると館内に映画のクライマックスシーンのレクイエムが流れる中、桐原京子の死体がすぅーっと消えていくのが見えた。
第二章完結です。
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