強行突破はやっても問題ない時だけやりましょう(敵味方問わず)
今月2話目となります。
遂にバルバラッサ帝国の城に攻め込みます。
日本の猛烈な航空攻撃により大混乱に陥ったバルバラッサ帝国陸軍は、なんとか街中に防衛のための部隊を展開しようと、各所で伝令が走り回っていた。
だが、兵の宿舎はほとんどが破壊されており、一部の僅かな兵と、街中にある小さな詰所にいる衛兵くらいしかすぐに集められない状況であった。
フランシェスカ共和国ですらグランドラゴ王国の恩恵を受けていたためにモールス信号による通信網が確立されていたが、この国……いや、この世界(オーストラリア大陸)はこれまで長期間に亘って他の場所から隔絶していたこともあって、まだそのような技術は存在していない。
それでも駆け続けた伝令たちの功もあり、首都の各地に詰所という形で散らばっていた兵を集めれば1万人以上にはなる。
街の各所に敵の侵攻を妨害するため、家財道具や石などで各所にバリケードを築き上げ、槍や斧、弓や大型弩弓を用意して侵攻してくるであろう敵を待ち受けることにした。
また、先の戦場で目撃されたという『鉄のドラゴン』を迎え撃つべく、鉄板を張り付けた杭を乗せた荷車も多数脇道に準備されている。
いざとなれば、これで突っ込んで『鉄のドラゴン』の横っ腹をぶち抜いてやろうという算段だ。
「これで簡単にはやられない……そう思いたいがな」
「先ほどの空からの圧倒的な攻撃を考えると、その自信も無くなりますね」
兵たちは皆緊張しながら敵を待ち構えている。
すると、街の外から土煙を上げて疾駆する何かが見えた。
「来たぞーっ‼ 衛兵、弓構え―ッ‼」
――キリキリキリキリ……
その『なにか』は尋常ではない速度で走っており、瞬く間に輪郭が大きくなっていく。その姿はなんとも言えず、『鉄の荷車』とでも称したくなるような車輪を付けた移動物体だった。
「速いな……放てーッ‼」
――カカカカカカカカッカァンッ‼
敵との距離と相対速度から、すぐに射程に入るだろうと判断した隊長の指示を受けて放たれた矢は、風切り音を発しながら、しかし彼らの予想よりも遥かに速い移動物体に当たることなく、全てが地面に突き刺さった。
「くそ! 速すぎる‼」
元々攻められることを想定していないバルバラッサ帝国の首都は壁で覆われているわけではないので、門などは存在しない。そのため、侵入を防ぐには入り口に兵を集めることしかできない。
「長槍隊、防御陣形‼」
兵たちが等間隔に並んで、槍を突き出すことで槍衾を作り出す。いわゆる『ファランクス』と呼ばれる陣形である。
日本では戦国時代に織田信長が『短い槍では都合が悪い』と言って6m(普通は約4m)はある大きな長槍を作らせて、それを持たせた足軽隊を中心に長槍隊を作ったことは有名である。
長篠・設楽原の合戦に置いて火縄銃を大量に用いた鉄砲交換撃ちの戦法を取らせたのも、そういった信長流の合理的な戦いの工夫であった。
いわば、現代の誘導弾や長距離砲撃などを用いたアウトレンジ戦法に通じるものがある。
少し話はわき道にそれるが、そもそも信長がなぜそれほど兵器の工夫に力を注いだかと言えば、一説によると『温暖でいい土の平野に恵まれた環境』で弱兵と言われた尾張兵をなんとか戦いで使えるような存在にしたいと思って工夫を重ねたという話もある。
常備兵及び、それに伴う足軽たちの常態的な訓練などもそうであろう。
ちなみに対照的に強兵と言われたのは冬季の厳しい環境下において鍛えられた上杉家の越後兵、後はド根性の強さで知られる(もちろんそれだけではないが)徳川家康の三河兵だったりする。
同じ愛知県内と言っても、『尾張侍3人に三河侍1人』と言われるほどの差があったと言えばその能力差がわかりやすいだろう。
閑話休題。
だが、接近してくる鉄の荷車のようなモノの上に人が顔を出したと思うと、上に装備されている黒い弩のようなモノに手を掛けた。
――ドドドドドドドドドドッ‼
弩のようなモノから光が発せられたと思うと、鎧に身を包み槍を構えていた兵たちを次々と吹き飛ばしていく。
「な、なんという連射速度! そして恐るべき威力だ‼ まるでドラゴンに食いちぎられたかのような攻撃だぞ‼」
ある者は腕を吹き飛ばされ、ある者は足を、ある者は頭が原形をとどめないほどぐちゃぐちゃにされて、あっという間に数十人が命を落とした。
そんな鉄の荷車は街へ入る前に大きく速度を落とした。
「しめた! 今のうちに陣形を立て直せ‼ 敵の侵入を許すな‼」
だが、その荷車の後ろからさらに大きな『なにか』が姿を現した。
背中に長大な角のようなモノを抱えたそれは、とてつもなく雄々しさを感じさせる姿をしていた。
兵たちは思わずすくみ上ってしまう。
「ううっ……あ、あんなものが……」
すると、近くにいた兵の1人が、顔を真っ青にしながら(蜥蜴人は元々青みのある肌をしているので分かりにくいが……)叫んだ。
「あいつだぁ‼ ドラゴンたちを一撃で葬る攻撃を見せた、鉄の竜だぁ‼」
暫定的に指揮官を務めていたコルイドンは、自分たちの切り札であるドラゴンを一撃で葬ったという鉄竜を目の当たりにして、一瞬だが立ちすくんでしまった。
いったいどのような攻撃方法を用いたのかは分からないが、あの鉄竜にはそれだけの力がある。それは間違いない。
「重装歩兵‼ 大盾を構えて前進せよ‼ 攻撃を防ぎつつあの鉄竜を長槍で討ち取るのだッ‼」
なんとか集結した僅かな重装歩兵が数十人ばかりで隊列を組み、大きな盾を構えると規則正しく歩き始める。ドラゴンを討ち取ったという攻撃を防げるかどうかは分からないが、それでもなにもしないわけにはいかない。
すると、鉄竜の角が重装歩兵の方を向いた。その角は、まるで死神の刃のようにすら見える。
「来るぞーっ‼」
重装歩兵たちは緊張の汗を流しながら、盾を持つ手に力を込める。
一方、最前線に出た『16式機動戦闘車』は、盾を構えて街への入り口を塞ぐ歩兵を排除する準備をしていた。
車長が目標を定め、砲手に指示を出している。
『目標、正面重装歩兵集団。弾種、多目的榴弾。撃てっ‼』
――ダンッ‼
鉄竜の角から閃光が走ったと思うと、歩兵で形成された陣形が一瞬にして粉々になった。
「な‼」
コルイドンが目をこすりながら前を見ると、盾を構えていたはずの兵は誰1人として五体満足なモノはおらず、命中したと思しき中央部分の者は上半身が完全に消失していた。
なんと表現していいか分からない。自分たちの基準では、あり得ない破壊力としか形容しようがなかった。
「くぅ……なんという威力だ‼こうなれば……散開して接近し、なんとしてでも討ち取れッ‼」
残り数少ない兵をまとめて討ち取られるよりはと考えた兵たちは散開し、一撃を与えるべく走り出す。
だが、無情にも敵の攻撃はさらに続く。
「敵が散開して突撃してきました」
「街の中に入るにはあいつらを蹴散らさないとな……仕方ない。機銃掃射だ。他の車両にも支援を要請しろ。流石にMCVだけじゃ手が足りない」
「了解」
首都防衛兵の1人、アルドロスはこの首都一番の鍛冶師が拵えた戦斧を手に持ちながらひた走る。
いかに凄まじい攻撃力を持つ鉄竜とて、無限に攻撃できるわけではないはず。ならば、散開して数で押し潰すというのは悪くない戦術である。
兵たちに出血を強いるという点を除けば。
すると、鉄竜の角の『脇』が連続して閃光を放ち始めた。
――ダダダダッ‼ ダダダダダダダッ‼ ダダダダッ‼
連続して放たれる光は、命中すると仲間が身に纏っている金属鎧すら貫通してしまうようで、既に多数の同胞が倒れている。
見れば、他の鉄車からも多数の閃光が走っており、それに当たった仲間が次々崩れ落ちていく。中には先ほど弓隊を吹き飛ばした閃光も混じっているようで、あっという間に擦り減っていく。
「おのれえええぇぇぇっっ‼」
――チュンッ‼
なにかが脇を掠めたと思った瞬間、不意に右腕の感触がなくなっていた。アルドロスが恐る恐る右腕を見ると、肩の付け根付近から先が喪失し、鮮血が勢いよく噴き出していた。
後ろを振り返ると、自分の少し後方に斧を持った自分の腕がゴロリと転がっている。
「そんな……」
やがてアルドロスは出血多量で気を失い、そのまま帰らぬ人となった。
自衛隊及びグランドラゴ連合部隊の機銃掃射は苛烈で、打って出た敵兵を瞬く間に壊滅状態に追い込んだ。
やがて敵兵は入り口の中へ引っ込んでいったので、『16式機動戦闘車』を先頭に進んでいく。
流石に街中では一般市民がいるのであまり速度を出せないので、精々時速20kmほどでしか走れなかったが、市民への犠牲を出すわけにいかないので当然のことである。
「前方にバリケード確認‼」
「装填、多目的榴弾‼」
「装填完了‼」
「吹き飛ばせ。撃てーッ‼」
「発射‼」
――ダンッ‼
16式機動戦闘車から発射された多目的榴弾は、バリケードもろとも防衛に当たっていた兵を吹き飛ばす。
元々第二世代MBT並みの主砲(しかも16式機動戦闘車の場合は使用する弾種が74式戦車と同等なので、最終的には初期の90式戦車と同等か、それ以上の威力の砲弾を撃てる)である105mmライフル砲から放たれた多目的榴弾は、この大陸の基準ならば破城槌を用いなければ突破できないであろうバリケードを一撃で粉砕する。
「よし、進め‼」
「はい‼」
16式機動戦闘車を先頭に陸自・グランドラゴ共同部隊は狭い街の中をさらに突き進む。
その中で、グランドラゴ派遣部隊の隊長であるガゼルは、自分たちと同じ竜人族が平和主義でなく覇権主義を掲げながら、負けに回るとあまりに無様で情けない姿を晒していることをとても残念に思っていた。
「まさか、我々の同胞がこの地ではこれほど情けなくなっていようとはな」
「隊長……」
「いや、そんなことはどうでもいい。我らは未来へ……日本と共に、もっと良き未来へ進まなければいけないのだな」
「そうですよ、ッと!」
機銃手は隊長に返答しつつ射撃して進路を確保する。
前方では杭を搭載した荷車を押す敵兵が突っ込んでこようとするが、速度の違いから飛び出した頃には目標の16式機動戦闘車には間に合っていない。
高機動車や軽装甲機動車ならば、とそのまま突っ込んでくるが、それでもゲリラ攻撃を警戒している自衛隊は、低速で走っていることを上手く利用して路地の中への射撃も忘れないため、ほとんど無力化されている。
後は、衛星で判明している敵の居城へ一直線である。
自衛隊側も、改めて想定されるルートを確認していた。
「敵の城内がどうなっているかは今のところ不明ですが、城の構造は基本的に円を基調とした構造になっていることから、中央部の一番高い所に敵首領がいるものと思われます」
「本当ならヘリボーンできれば一番早かったんだけどな……」
「仕方ありませんよ。敵の脅威度の低さから、新入隊員やグランドラゴ軍との連携訓練という意味合いもありましたから」
「全く、実戦の中で実戦訓練をやろうなんて質が悪いぞ」
要するに、舐めプに近いやり方である。
だが、相手がそれだけの脅威度しかなかったこともあって、グランドラゴ軍と連携訓練を行うのにはちょうど良かったのだ。
酷い言い方だが、事実その通りなのでそれ以上は言いようがない。
と、大きな木製の城門が見えてきた。
木でできた城門は既に閉まっている。
「城門を打ち破るぞ‼ 弾種、多目的榴弾‼」
「了解‼」
――ガコンッ、ガシャンッ‼
多目的榴弾ばかり使っているのは、コストがそれなりに安いからということと、多目的榴弾でぶち抜ける程度の目標ばかりだから、という理由である。
使用する弾を限定できれば、後で補充する時に一元化できるので、その方が低コストかつ便利なのである。
いくら軍事予算が爆増したといっても、相も変わらず自衛隊そのものは貧乏軍隊なので節約できるところは節約しないといけないという、あまりに寂しいお財布事情なのだ。
「装填完了‼」
「撃てっ‼」
――ダンッ‼ バゴンッ‼
城門に命中した砲弾は炸裂し、城門を派手に吹き飛ばした。
「突入っ‼」
車両は突入すると、群がってくる衛兵を機銃掃射と小銃で排除しつつ、脱出経路を確保しながら陣形を調える。
「アルファ班は右方向から、ベータ班は左方向から進め。上へ進む階段を見つけ次第報告せよ」
「アルファ班了解」
「ベータ班了解」
日本・グランドラゴ共に2つの班に分かれて1チームとして動く。連携訓練が目的な部分もあるので、敢えてまだ未成熟なグランドラゴ軍も一緒に動くのだ。
「行くぞ‼」
『22式小銃』と『89式自動小銃』(グランドラゴ王国は日本から輸出された物)を構えた一同は、素早く走りだす。
城の外には16式機動戦闘車2輛と、『軽機関銃MINIMI』を装備した軽装甲機動車が待機していた。
彼らが城の外から迫ってくる敵兵の相手をしなくてはならない。
武藤2等陸曹も、車上でMINIMIの引き金に手を掛けながら防衛に当たる。
「全く……いくらグランドラゴとの連携を大事にしたいからって、市ヶ谷も無茶言うよなぁ……」
『ボヤくな武藤、これもお役目という奴だ』
「はぁ……早く任務終わらせてデリティーさんをデートに誘いたいのになぁ……」
『あのなぁ……そんなラノベみたいにホイホイ惚れられると思うなよ?』
「そりゃ分かってますけど……夢見るくらいはいいじゃないですか」
呑気に会話しているが、その間も武藤はもちろんのこと、機動戦闘車の車長たちも周囲の警戒を続けている。
一方で、城内に突入した部隊のうち、アルファ班は順調に進んでいた。ほとんど衛兵と遭遇することもなく、どんどんと上の階へ上がっていく。
「どうなってるんですかね? この状況」
「罠、でしょうか? あまりにも抵抗がありませんし、逆に気味が悪いですよ」
日本側の小隊長、桜木健司1等陸尉と、グランドラゴ王国側の小隊長、ゼブラが進みながら会話しているが、その間も周囲の警戒は怠っていない。
「元々あまり人がいない場所なのかもしれませんね」
「確かに……先ほどから出くわした人間と言えば、我々の姿を見て逃げ出した竜人族のメイドが2人だけでしたし」
ちなみに、そのメイド2名は素早く捕まえて拘束してある。下手に報告されてこちらに敵兵が来ても困るからである。
それだけに、彼らはベータ班の心配をしていた。
「あちらは貧乏くじを引いたんじゃなかろうな……」
果たして、桜木の想像は正しかった。
ベータ班は多数の敵兵との戦闘によって、5階層はある城の3階で足止めを食らっていた。
――ダダダッ‼ ダダダッ‼ ダダダッ‼
閃光と共に89式自動小銃から銃弾が放たれる度に敵兵が次々と斃れていくが、その数は中々減らない。
なにせ、敵は柱や壁を盾代わりにして銃弾を防いでいる。かと言ってあまり近付けば今度は彼らの持つ刃物や鈍器の餌食になりかねないので、無闇に近付くこともできないのだ。
そのため、20分以上も膠着状態が続いていた。
「くそっ‼ 逃げる奴は敵だ‼ 逃げない奴はよく訓練された敵だ‼ 全く、敵の本拠地って奴は地獄だぜ‼」
ベータ班隊長の梅田恭一1等陸尉は、やたらとイキイキした表情で、『HAHAHA‼』と笑いながら小銃を撃っていた。
「隊長、なんだかおかしくなってないか?」
「昨日寝る前に洋画見てたらしいぞ。あんな感じの」
「米国面かよ……」
ミリタリーマニアならよく知っているだろうが、要するにアメリカ軍にはこんな感じのネタが多いのだ。
「隊長、後方からグレネード来ました‼」
「おらどうしたお前ら‼ 擲弾ぶっ放せ‼」
「りょ、了解……」
――ドンッ! バァンッ‼
やたらとノリノリな隊長にドン引きしながらも歩兵制圧用に配備されたグレネードランチャーを発射し、その爆発で敵を吹き飛ばす。
「わぁっ!?」
「お、おのれぇっ……」
兵たちはズタボロになりながら起き上がるが、そこへ小銃弾が次々と襲い掛かり、一瞬でこと切れる。
「よし、進むぞっ‼」
梅田に続き、隊員たちも走り出すが、その中でグランドラゴのベータ班隊長であるトムソンはこっそり副隊長に聞いていた。
「いつもあんな感じで?」
「いや、いつもはもっと冷静な人なんですけどね……」
その10分後、ベータ班が最上階に辿り着いた時には既に最上階に1つしかない扉が開いていた。
中へ飛び込んでみると、アルファ班が中にいた数名の竜人族を取り押さえているところだった。
「桜木1尉!」
「梅田1尉、お疲れ様です。そちらは時間がかかっていたようですが……敵がなにか卑怯な手でも使ってきましたか?」
梅田は苦笑いして返す。
「ヒキョウもラッキョウもあるものか。奴ら、僅かな時間で銃に対抗するには遮蔽物を上手く用いればいいと学んでいたようだ。グレネードが来るまで20分以上膠着したぞ」
「それはお疲れ様でした。あとは……外交官の仕事ですかね?」
「そうだな。エルメリス王国とも交渉しなければならないだろうし、外務省も大変だな」
「さぁ、我々は撤退しましょう」
「よし、手伝おう」
部屋の中にいた敵の王族たちを捕縛する。そして急いで下へ戻ると、車に放り込んで『あ~ばよ~、とっつあん』と言わんばかりに撤退するのだった。
その姿は正に脱兎の如し、である。
その後、帝国民と帝国兵がポカンと見ている中、自衛隊とグランドラゴ王国車両は街の中でも広い大通りを突っ走る。
幸い先ほどからの戦闘で外出しているような一般人はいないので、ここからは速度を出して撤退できる。
そんな自衛隊の車両の中で、バルバラッサ21世は縛られたまま呻いているが、当然動けないので芋虫のように蠢くだけである。
武藤2曹も、車上でMINIMIに手を掛けつつも、ホッとした表情を見せながら先輩の早坂と会話していた。
「皇帝一族さえ捕まえれば、後は烏合の衆になりそうですね」
『そうだな。あとはどうやって帝国と王国を和解させられるかというところだが……まぁ、そこは我が国が介入する、という形で外務省がなんとかするだろうな』
「これでやっとこの大陸の調査ができそうですよ……」
『あぁ』
そう、元々彼らはあくまでオーストラリア大陸を調査する学者たちの護衛のために派遣されていたのであって、本格戦闘が目的ではなかった。
『とは言っても、俺はできれば一度日本に帰りたいけどな』
「えぇ~……俺は……デリティーさんと……」
『ま、頑張れよ』
早坂はからかうように言うと、そのまま通信を切るのだった。
「……諦めないからな、絶対」
武藤としても、美人と縁ができたからにはそれを無駄にしたくないという切実な思いがあった。
日本国内で女性があぶれつつあると言われても、モテるかモテないかはやはり男次第という、非情な現実が待っているのである。
皇帝を捕縛するシーンはもっと何かあってもよかったのかなとは思いますが……あまりグダグダ続けてもアレなので日本人の会話だけにしました。
次回は11月の6日か7日に投稿しようと思います。