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飛竜の葬送、兵士の断末魔

今月1話目となります。

ついに……ドンパチです。

またも将軍が暴れます。

――世界暦380年 11月19日 エルメリス王国国境付近 ファルドス村

 この場所は、オーストラリア大陸の中央より少しばかり東へ行ったところにある、国境を少し越えた所にある人口500人ばかりの小さな村であった。

 バルバラッサ帝国軍は、物資を徴発するべくそこに強襲をかけていた。

 だが……

「大将軍! 村には人っ子1人おりません‼」

「物資の類も、ほとんどが持ち去られております‼ 食料に関しては麦穂1つ残っておりません‼」

 陸将軍ゲルニアは兵たちの報告に首を傾げる。

「どうなっておる? 500人近い村人はもちろんだが、家畜まで含めていったいどこへ消えた?」

 これらも全ては、日本の仕業であった。

 日本が本土から持ってきた大型の家畜運搬用のトラックやバスなどで村人のみならず家畜、物資のほとんどを避難させたのだ。

 そして、日本の妨害はそれだけにとどまらなかった。

「報告します‼ 探索に出た兵の一部が、ハサミ罠にかかり負傷‼」

「こちらでは縄罠を引き飛来する矢に射抜かれた兵が3名‼ 行動不能です‼」

「村南部では家の側に掘られた落とし穴に落ちた兵が穴底に備え付けられていた木製の槍に貫かれて1名死亡‼ 2名が重傷です‼」

 日本は陸上自衛隊施設科の総力を結集し、動物を仕留める猟師の意見を取り入れて村の各地に罠を仕掛けていた。

 結果、竹槍を落とし穴の中に仕掛ける、トラバサミを備える、設置型ボーガン罠や、他にも悪ノリしたのか金ダライ(しかも敵兵を仕留めるために中にコンクリートを詰め込んだ)を上から落とすなどという罠まで仕掛けてあった。

 実際、本物の金ダライは命中するとただでは済まないという。昭和のギャグで使われていたのは、命中しても問題のない製品だったというのだ。

「おのれ……火を放て‼ 村を焼き尽くしてしまえ‼」

 村を探索するだけで様々な被害によって動けなくなる兵が数十人以上出るという事態に怒ったゲルニアは、村を完全に焼き払うことを決定した。

 火矢に加えて、ワイバーンの火炎放射や火炎弾で、村の木造家屋は次々と燃え上がっていく。

 そんな様子も、上空からは丸見えであった。

 上空では航空自衛隊の『RQ―1』がゆっくりと旋回しながら帝国軍の横暴を撮影していたからだ。

 まさか上空5千m以上から丸見えになっているとは、彼らの常識からすればまるで考えられないことなのである。



「ちょっと市ヶ谷の予想を上回りましたね。まさか焼き払うとは……」

「市ヶ谷は確か、『家屋を解体して燃料に用いるだろう』って言ってましたよねぇ」

 呆れているのは、偵察航空隊の毒島とその先輩であった。

 防衛省の予想では、敵軍は村人がいなくなっていて罠が仕掛けてあるならば、使える物だけでも回収しようとして家屋を解体して使用するだろうと考えていたのだ。

「まさかここまで粗暴だとは思わなかったですぅ……」

「スペルニーノ・イタリシア連合でも、木造家屋が使えると判断すればすぐ解体するだろうね……」

「えぇ……これ、市ヶ谷の予想プランを斜め上な形で修正する必要があるんじゃないんでしょうかぁ……?」

「……あぁ、直ちに報告した方がいいだろうな」

 2人は直ちに本土にこの件を報告すると、『物資に余裕が出なくなる可能性があるため、王都到達が早まる可能性が高い。警戒レベルを一段階上昇させるように』と現場には通達がもたらされ、陸海空自衛隊の警戒が一段と強まったのだった。



 そして、帝国軍が国境を越えてから5日後の朝、遂にその時が来た。

「来たぞ‼ 敵が七分、地面が三分!」

 王都メリエルダの西部10kmの地点に、帝国軍が陣を張り始めていた。その様子はメリエルダ外縁部に設置されていた監視所(自衛隊が設置したもの。簡易対空レーダーと対地レーダーを備える)からの報告であった。

 武藤2等陸曹も自身の所属する軽装甲機動車に乗り込み、MINIMIの引き金に手を掛ける。

 既にどの車両もエンジンをかけており、いつでも動き出せる状態だ。

 相手は戦闘可能な兵力というだけでも4万1千人を超える。そこに、現代基準ではあり得ない数の巨大な猛獣が加わっているため、機甲戦力に近い存在の数という点だけで言えば文明水準以上に脅威となっていた。

 自衛隊側も訓練通りにやれば問題ないだろうとは考えているが、何分相手も数が多いので気は抜けない。

 余談だが、自衛隊は基本的に空堀の中から射撃・砲撃することを想定していたため、堀は石壁から数百m以上離れた位置に作られている。

 たった数ヶ月で東京都23区並みの広さを持つ街の、その外縁部にその街をぐるりと囲むように空堀を掘ったというあたりに、自衛隊の施設科の手際の良さが窺える。

 ちなみに、川が近くにあるにもかかわらず水堀にしなかったのは、巨体を持つ恐竜が泳いで来られたら逆に揺れる水の中で狙いがつけにくかったからである。

 『16式機動戦闘車』がそれぞれ配置について、主砲を旋回させる。『96式装輪装甲車』はM2ブローニング12.7mm重機関銃や40mm擲弾銃を構える。

 街の広場では『99式自走155mm榴弾砲』と『MLRS』が射撃指示を待ち、ヘリコプターもいつでも飛び立てるようにしていた。

 すると、敵野営陣の後方10kmから飛び立つ影が見えた。

「レーダーに感あり。ワイバーンです。総数100機」

「『FT―4』、全機緊急発進(スクランブル)。繰り返す。『FT―4』全機緊急発進」

 管制塔の指示を受け、戦闘練習機『FT―4』が滑走路を走り次々と青空へ飛び立っていく。

 超音速機とは異なるターボファンエンジンの軽快な音が、異国の空に鳴り響くのだった。

 彼らの上空では、今回の戦いのために駆け付けた新型AWACS・『EP―1』早期警戒管制機が飛行している。

 純国産の対潜哨戒機として開発された『P―1』哨戒機を改良し、対空装備以外のほとんどをオミットする代わりにエンジンの改良と内部スペースの増大によって多数の電子機器を搭載し、さらに日本が独自に開発した三次元レーダーによって、『E―767』とほぼ同等の索敵範囲を得ることに成功した、国産AWACSである。

 管制塔にも高性能なレーダーは搭載されているが、現場のことは現場にやらせるのが一番ということでこの機体は派遣されていた。



 飛び立った帝国飛竜隊100騎は勝利を確信しながら空を飛んでいた。

 飛竜隊総隊長のホルヴォンも、その1人であった。

「(この世界〈オーストラリア大陸〉において、飛竜隊に傷を付けられる者などいない。つまり、我らの戦果は約束されたも同然! 後は、いかに多くの手柄を上げるかだな……)」

 誰も、自分たちが負けるなどという可能性は微塵も考えていなかった。

 しかし、世の中そう甘くはない。

「隊長‼ 正体不明の飛行物体を視認‼」

「!?」

 隊長が目を凝らして見てみると、確かに何かが飛んでいる。

「(エルメリス王国にワイバーンはいないはずだが……まぁいい。数は我らが圧倒的に上だ。捻り潰してやる‼)……構うな‼ 揉み潰せ‼」

「「「ははっ‼」」」

 飛竜隊は更に速度を上げ、最高速度で敵に向かう。

 だが、その直後……敵が光を発したように感じた。

「? なんだ?」

その直後、自分の側を飛んでいた僚騎が爆発四散した。

「はっ!?」

 よく見ると、あちこちで仲間たちが爆発に巻き込まれている。

「なんだ! なんだあの爆発は‼」

「隊長‼なにかが……なにかが飛んできます‼」

「なに!?」

 隊長が再び目を凝らすと、細長い筒のようなモノが飛んでいるのが見えた。

「光の……矢!?」

「各騎散開、光の矢を回避せよ‼」

 飛竜隊は指示が伝達された順に散開していく。だが、光の矢は挙動を変え、まるで意思があるかのように追ってきたのだ。

「嘘だろう!?」

「来るな……来るなぁあがっ‼」

「やめろ……やめてくれぎふっ‼」

――ギャオオオオン‼

 ワイバーンも苦しげな断末魔の咆哮を上げ、次々と落ちていく。

「なぜだ……なぜ世界最強のワイバーンがなにもできずに墜とされるんだ‼ くそっ、化け物めええええええええええっ‼」

 ホルヴォンの目の前に迫ってくる光の矢は、さながら太陽から降り注いだ光線のように見えた。それが、彼の生涯で見た最後の光景となったのだった。



 『FT―4』の翼下ポッドから発射された『22式空対空誘導弾』は、そのほとんどが正確に狙ったワイバーンへと着弾し、その命を虚空に散らせた。

 だが、中には猛者もいる。なんと、ロール運動からの急減速でミサイルのカメラ及び赤外線照準から外れるという荒業をやってのけた者が、6名程いたのだ。

 これが本来の『AAM』シリーズ(つまり『AAM―3』~『AAM―5』などの主力戦闘機に装備される対空誘導弾)ならばこのようなことは起こらなかっただろう、と後にこの戦いに参加したパイロットたちは証言した。

 その1人である『FT―4』パイロットの鳴坂慧太准尉は思わず叫んでいた。

『嘘だろう!? いくら元が歩兵用の軽SAMでいじくるのも色々限界があるからって……誘導弾の概念はないはずなのにかわすか普通!?』

 実は、この回避方法は模擬空戦をワイバーン同士で行う際の回避行動として教え込まれていたものだった。

 要するに『相手の攻撃が見えたなら、相手の攻撃の射線から外れてその後ろを取るようにかわせ』という教えで、これがそれなりに理に適ったものなのである。

 本来航空戦力が自分たちしか存在しないのに厳しい空戦訓練を行なっていた理由としては、『古代技術を発掘されて、それによって航空戦力を敵が得た場合』に備えていたという話である。

 陸軍は見えるものを見て判断する精神論的な部分が多いが、空軍はその点論理的かつ未来志向の考え方をするというちぐはぐな面が見える。

 だが、そのちぐはぐさも元は古代技術の発掘と掘り起こされた知識を参考にしているせいである。

『ボヤかない、叫ばない。だったら追い込み漁の要領で追い込んで、最後は複数機のドッグファイトで仕留めるまでよ』

 鳴坂を窘めたのは、彼の上司であり妻である『鳴坂』愛実2等空尉。

 現在は彼とその幼馴染である幻野御影と共に生活しており、既にそれぞれ2人の子供を授かっている。

 だが、その勇猛ぶりと無茶ぶりは相変わらずで、夫となっても『色々な』意味で慧太にいうことを聞かせているのだった。

 本来の自衛隊の服務規程であれば、夫婦となった者を一緒の部隊にしておくわけにはいかないのだが、『あの鴨沼愛実だし……』だの、『一夫多妻事案の初例だったしな……』などと政府及び各省庁と世間が日和った(というか慧太に接する態度を見て『かかあ天下』の様子から、逆に一緒に居させた方がいいと判断された)こともあり、今でも一緒に空を飛んでいるのだ。

 そして、今回『FT―4』に習熟したパイロットであるということでこの戦いに招集されたのである。

『さぁ、行くわよッ‼』

 愛実は素早く機体をバンクさせ、残った6騎のワイバーンに素早く迫っていく。

 たとえ全速力でないとしても、そもそも出せる速度が段違いであるため、あっという間にワイバーンを射程に捉える。

『FOX3‼』



――ドドドドドドドドドッ‼



 現代の20mm機関砲と比較すると重く、そして遅い発射速度の12.7mm重機関銃だが、それでもこの文明水準では十分すぎる攻撃である。

 攻撃のタイミングから回避の瞬間を窺っていた敵騎は、みるみるうちに100m近くまで迫られたことで回避の暇もなく、あっさりと穴だらけになって落ちていったのだった。

『うわぁ……俺の嫁さん容赦ねぇ』

『嫁さんに負けてどうする、サーベル2.まだスコアは残ってるぞ』

 ちなみに、このTACネームは彼が飼っているサーベルタイガーから取られたものである。

 機体マークもサーベルタイガーの絵という、徹底されたものであった。

『了解‼』

 そして、そんな厳しい妻に公私共にしごかれまくっていた慧太は、これまたあっという間に敵機との距離を縮めた。

『FOX3‼』

 慧太の乗る『FT―4』から発射された弾丸は吸い込まれるように敵ワイバーンに着弾し、騎手共々穴だらけにして撃墜した。

『うわぁ……結構エグイ』

『しゃーねーさ。そもそも重機関銃は本来、至近距離で人に向けてぶっ放すもんじゃねぇっつうしな』

 要するに、遺体の損壊具合が酷いことになるのが原因である。

 20mm以上であれば当たった部位が蒸発する、30mm以上であればミンチになって原形をとどめなくなると言われているが、その点で言うと12.7mmは『中途半端』なのである。

 ただし、『至近距離』であればその限りではない。

 他のパイロットも次々とワイバーンを追い詰めていき、機銃掃射で撃ち落とす。結果、ものの10分ほどで残存ワイバーンは全滅した。

 その光景を、地上から陸将軍ゲルニアはガタガタと震えながら見ていた。

「我々は……いったいなにと戦っているというのだ……?」

 だが、既に王都の間近まで迫っている以上、このままおめおめと退くことはできない。いや、許されない。

皇帝の大願であった世界統一のために、エルメリス王国は滅ぼし、他種族たちを圧倒的な力で従えなければならないからである。

「進め、者ども‼こうなれば陸戦力から攻撃を受ける前に、なんとしてでも王都に侵入するのだっ‼」

「「「オオォォォォォォォォォォォォッ‼」」」

 兵たちも空の覇者・ワイバーンが墜とされる光景に恐怖したものの、自分たち蜥蜴人と竜人族が世界の覇者であるという自負から、装甲恐竜を前面に押し立てて進んでいく。

 そんな様子を、制空権が確保されたことで飛行を始めた観測ヘリコプター・『OH―1』が見ていた。

『敵陸上戦力は時速5km程度ながら進軍を開始。少なくとも、航空優勢を失ってなお退く気はないようです』

『了解。これより近接航空支援を実施する。デーモン1はそのまま観測を続けられたし』

『了解』

 兵士たちに守られながら、トリケラトプスやアンキロサウルスがのっしのっしと歩み続ける。

 ワイバーンが敗れてしまったのは想定外だったが、世界最強を誇る軍勢であれば、多少苦戦したとしてもなんとか勝てるだろう、という楽観的な考え方……あるいは、ただの現実逃避を起こしながらではあるが、彼らは歩みを止めなかった。

 だが、そこへ『ブーン……‼』という聞き慣れない音が耳に響いてきた。

「こ、今度はなんだ?」

 兵の1人が空を見上げると、先ほどワイバーンを攻撃したモノとはまるで比較にならないほどに大きな空を飛ぶ『なにか』が、こちらへと2つ、向かってきていた。

「で、デカいぞ‼」

「さっきの灰色の竜よりはるかにデカい‼」

 『FT―4』はこれまでの戦闘機同様に灰色に塗られていたため、『戦闘機』という概念の無い彼らからすると、『灰色の竜』と呼ばざるを得ない存在に認識されていたのである。

「くそ! 上に弓を放て‼ 奴を射落とすのだ‼」

 指示を受けた弓兵隊が、上空に向かって大量の矢を放った。

 だが、高度500m以上で旋回を繰り返す化け物には、全く届かない。

「だ、ダメです! 見た目より高い所にいるようです‼」

「あんな高い所にいられたんじゃ、手が出せねぇ‼」

 すると、2つの『なにか』はそれぞれ左腹を見せた。

「なにをする気だ?」

 直後、化け物の横腹が光ったと思うと光の雨が降り注ぎ、瞬く間に兵が崩れ落ちていく。

 さらに同じ左腹から時折『ドン‼ ドン‼』と何かが弾けるような音がしたと思うと、恐竜諸共、兵たちが爆発によって地面から吹き飛ばされていった。

「な、なんという威力の攻撃だ‼」

 瞬く間に兵は数百人以上が死傷し、爆発に巻き込まれた者は五体満足な者すら少ない。

「く、くそっ‼ 退けっ‼ 退けーっ! 一度態勢を立て直すのだっ‼」

 兵たちは我先にと撤退しようとするが、今度は前方から『パタパタパタ』と空気を叩くような音がする。

 加えて、音楽のような者も聞こえてきた。帝国の軍楽や音楽とは異なる趣だが、かなり勇ましさを感じる曲調である。

「ま、まだ来るのか‼」

 ゲルニアが目を凝らすと、山の向こうから上を飛んでいる化け物よりは小さいが、空を飛ぶ『なにか』が、音を立てながらこちらへ向かってきていた。

「くっ……逃げろ‼ 今はなんとしても逃げるのだ‼」

 言われずとも、兵たちは駆け足で逃げようとするが、その飛行物体からも、光の筋が飛んできたと思うと、仲間が次々と穴だらけになって死んでいく。

「そ、そんな! あんな小さな飛竜でも、あれほどの投射力を持つというのか!? そんな技術、聞いたことがないぞっ‼」

 ゲルニアが呆然としている間にも、瞬く間に兵や恐竜が減っていく。

 すると、飛行物体の動きが変わった。それまで集団を取り囲むように攻撃していたのが、前方に集中して攻撃してくるようになったのだ。

 まるで、撤退されては困ると言わんばかりである。

「くそっ……進むも退くも地獄か‼」

 ゲルニアは、なんとか考えをまとめようとする。だが、そう言っている間にも大きな竜と小型の竜は交互に絶え間なく攻撃を仕掛けてくる。

 全く逃げる隙が見えない。

「どうする……ここから敵ならばどうする……空からの攻撃だけでは陸軍は滅せない。地上軍の投入が必要……ならば、友軍を誤って殺さないように、攻撃を止める瞬間があるはずだ。その隙をついて、逃げのびるしかない」

 無事に帰れたとしても、自分は敗戦の責を負わされて死罪だろうが、兵の命には代えられない。

「とにかくこの辺りを走り回れ! 物影があれば、その陰に隠れるのだ‼ あの光に当たれば、体に穴が開くぞ‼」

 ゲルニアの指示は伝言ゲームのように伝わり、兵士たちは次々と周囲を走り始めた。

 少しでも、上空から降り注ぐ理不尽を回避するために。



 制空権を確保した航空自衛隊は一度戦闘機を下がらせると、今度は『A―1』近接支援航空機の製造に伴って新設された『近接支援科』の所属として製造されたガンシップ・『AC―3』彗星を飛来させ、全火力の一斉投射を行わせた。

 20mm機関砲2門、40mm機関砲2門、そして105mmライフル砲の砲撃により、瞬く間に敵地上軍は混乱に陥った。

 混乱に陥って敵を一叩きした後、敵は元来た道を引き返そうとしたため、今度は陸上自衛隊の『UH―2』を中心としたヘリコプター部隊が出動し、江戸幕府8代目将軍の殺陣のテーマを流しながらハイドラロケット弾を次々と発射、さらにドアガンとして設置されている7.62mm機関銃で地上部隊をハチの巣へと変えていく。

 そんな中、ヘリ部隊の指揮を執っている江原1等陸佐は本部からの指示を受ける。

『こちら本部よりオレンジ1へ。間もなく、特科の攻撃準備が終わる。観測ヘリを残して、敵進路を塞ぐように展開せよ』

『こちらオレンジ1、了解。残存害獣は?』

『怪獣……すまない。害獣はMCVを突っ込ませて攪乱しながら砲撃で大型種を仕留めた後、車両部隊を投入して機銃掃射で中型以下を片付ける』

 素で言い間違えたらしいが、ツッコみを入れる間も惜しい。

『こちらオレンジ1、了解した』

 ヘリは攻撃を続けながら、敵を逃がさないように位置を変え続ける。

『こちら特科より航空科へ。準備が完了した。間もなく発射する。退避せよ。繰り返す、準備が整った。間もなく発射する。退避せよ』

『総員、攻撃しながら退避せよ‼』

 ヘリ部隊は機銃掃射を続けながらその場を離れていく。

 それを見たゲルニアは『しめたっ‼』と叫んでいた。

「奴ら、あれほどの暴虐もついに尽きたらしい! 今すぐ逃げるのだっ‼ 残存兵だけでも態勢を立て直す‼」

 兵たちは再び我先にと元来た道を戻ろうとする。だが、王都に至る直前にある細い崖の道に差し掛かった時、彼らの前になにかが飛来してきた。

「ま、また空飛ぶ竜か⁉」

 それは、陸上自衛隊の『やんま』型対戦車ヘリコプターであった。

 『やんま』は崖の両脇に『ASGM』を発射する。すると、戦車すら破壊する対戦車ミサイルが爆発し、崖を大きく崩してしまった。

 蜥蜴人と竜人族ならばともかく、恐竜たちはこれでは引き返せない。

「た、退路を断たれたぞっ‼」

 その時、『ヒュルルルルルルルルル』という音が響いてきた。

「な、なんだ?」

「笛、か?」



『6,5,4,3、弾着、今‼』

 


 直後、蜥蜴人たちが立っている所は大爆発を起こした。アロサウルスやギガノトサウルスのような大型肉食恐竜も次々と爆発に巻き込まれて死んでいく。

 99式自走155mm榴弾砲の砲弾の雨が降り注いだそこに、『MLRS』のクラスター弾が飛来し、兵を粉々に吹き飛ばしていくのだった。


本来なら『FT-4』は舐めプに近い部分もあるのですが、『燃費』、『攻撃力』、『機動力』などの総合的な面から選ばれた……ということにしてあります。

そして一言。

つい最近調べて知ったことですが、鳴坂君のモデルにした声優さんと鴨沼さんのモデルにした声優さん……結婚していました。

2019年に。

ここまで言えば、そして名前の雰囲気から、モデルになった声優さんとキャラクターがなんとなく想像つく方もいらっしゃるかもしれません。

もし分かった方はぜひ感想欄まで……

次回は21日か22日に投稿しようと思います。

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